2021/10/28

未来論議@国際公共経済学会

 ■未来論議@国際公共経済学会

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2014/5/31(土) 8:30ー


 ベルギーに本部を置く国際学会。その日本支部の理事を務めていて、大会の実行委員長を仰せつかったので、慶應義塾大学日吉キャンパスで開催しました。

 テーマは「2025年のICT」。普段は遠くに眺めているアカデミズムの場を自ら設置することにしたのは2つ理由があります。まず、今、ということ。この20年に一度のデジタルの変革期に公共経済学として注目する価値はあるだろうということ。もう一つは、未来展望。それが欠けているだろうという問題提起です。

 かつて、未来の情報社会像に関する空想がたくさんありました。高度情報社会、ニューメディア構想、マルチメディア、ギガビット社会・・妄想がありました。そして、その多くは実現し、むしろ現実が空想を超えてしまいました。

 そのせいか、このところ、未来を展望する気力が失われています。メディアが改めて激動期に入ったところ、未来を再度描くのもアカデミズムの役割ではないでしょうか。

 でも、アカデミズムだけではムリ。技術、ビジネス、政策といった多角的な観点から描こうとすると、それら最前線の方々の知恵をいただく必要があります。そこで、アカデミズムの枠を超えた有識者のかたがたにお越しいただいてセッションを企画しました。アカデミズムがプラットフォームになり、場を提供する。これをやりたかったのです。

 セッションとしては、ビジネス、教育、電子書籍、インフラ、社会といったパネル討論を用意しました。特に私が注目したのは、「2025年のICT社会」です。 

 東洋大学松原聡教授の司会で、武雄市の樋渡啓祐市長、DeNA南場智子さん、参議院議員片山さつきさんらが議論しました。

 南場智子さんは「ウェアラブルとAR」「オープンソースコミュニティへの参加貢献」の2点を重要な方向として指摘しました。10年以上も前に技術として期待されたものが現実のものになってきたということでしょう。

 同時に南場さんは、国よりもアップルやグーグルのレギュレーションが問題と指摘。そう、ぼくも国家とグローバル企業とのガバナンスは最大問題に発展すると考えます。

 片山議員は、2025年を展望することに関して、政府のイマジネーション不足を指摘しました。発言を求められたぼくも、今こそ空想する意味と必要性を申し上げました。

 それに樋渡市長が反論、「空想は不要であり、目の前の課題を解決すべし」と断言しました。うむ、樋渡さんは図書館改革やiPad反転授業を報告していました。いずれも難事業です。目の前に横たわる大きな岩盤を打ち砕き前進しています。

 その目からみれば、空想する呑気さは許されません。ぼくは空想し、樋渡さんは実現する。役割分担、かもしれません。


2021/10/27

デジタルのこれから

 ■デジタルのこれから

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2014/5/24(土) 8:30ー


 IP2.0プロジェクトでのぼくのプレゼン、前回の続きです。

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 MITネグロポンテ教授が唱道したアトムからビットへの転換、リアルからバーチャルへのシフトは完成します。それを超えた次元で起きることが重要です。そう遠くなく実現することがたくさんありそうです。

 一例を挙げましょう。15年前のMITメディアラボでは、ウェアラブルコンピュータで暮らす研究員が何人もいました。技術はできていました。しかし、グーグルグラスは今になってようやく商品化します。新しい技術が登場して普及するまで、それくらい時間がかかるものだとも言えるのです。

 当時見えていたデジタルでオンラインの世界は、15年で普及しました。その次、15年前にメディアラボが目指していたような世界がようやく来るのかもしれません。

 インテリジェント、ウェアラブル、ユビキタスといった方向性です。言い換えると、「かしこくて、いつも、なんでも」。

1 インテリジェント : かしこい

 メディアが私の代わりに自動的にどんどんコンテンツを生んでいきます。世界中のコンテンツを処理・消化していきます。自分のエージェントが自律的にネットの世界を生きて、表現・発信していきます。

2 ウェアラブル : いつも

 モバイルは「いつでも」でしたが、ウェアラブルはスイッチをオフしません。24時間「いつも」つながっていて、常に見聞きした情報コンテンツを発信しつづけます。触覚情報もニオイもコンテンツとなります。自分の脈拍や脳波もコンテンツとなって発信されます。

3 ユビキタス : なんでも

 ビットが全てのアトムに入ります。町自体がメディアになり、コンテンツを発信します。モノが発信する情報もコンテンツたり得ます。ロボットを遠隔地から操縦して動かすドラマもコンテンツになります。

 さて、そうすると、これまでにない課題も発生してきます。たとえば、自分とバーチャルの権利をどう扱うか。エージェントが自分をどこまで代理できるのか。代理エージェントがしでかした発言や契約にどこまで責任を負うのか。

 ウェアラブルで常時見られ、映され、蓄積される社会のプライバシーはどこまで保護されるのか。自分の情報をどこまでコントロールできるのか。ユビキタスにあふれる情報の洪水を遮断する権利はどうか。

 また、モノの権利と責任をどう扱うか。モノが発生する情報に著作権はあるのか。モノが虚偽を唱えたらどうするのか。ネットで指令されたロボットが施した善行の権利や、しでかした悪行の責任はどうか。

 もっともっといろんなことが起きそうであり、これまでにない政策イシューが発生してくるでしょう。それを空想して、つぶしていくという作業が大事です。


2021/10/26

コンテンツのこれまで

 ■コンテンツのこれまで

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2014/5/17(土) 8:30ー


 「IP2.0」という知的財産の新政策を考える会合に呼ばれ、コンテンツのこれまで、というお題をいただいたので、軽いプレゼンをしてきました。

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 人類最初の楽器はスロベニアで発見された43000年前のアナグマの大腿骨。まずは音楽から始まりました。アルタミラは18,500年前、ラスコーは15,000年前。当時、人類は映像で考え、映像で表現していたのでしょう。文字の発明は紀元前7千年ごろ。コンテンツは音、映像、文字の順に作られたが、ライブだったり壁面だったりして、その時その場限りのものでした。

 最初に大衆化されたのは、文字表現。1455年、グーテンベルク活版印刷。写真は1826年、ニエプス。音は1877年、エジソンのフォノグラフ。文字、映像、音というコンテンツ登場の逆順。動画は1895年、リュミエール兄弟。

 20世紀はテレコミュニケーションの時代。電話やテレビの普及で、コンテンツやコミュニケーションが場所と時間の制約から開放されました。

 次の変革期は今から30年前。任天堂ファミコンが映像で遊ぶことを可能としました。83-85年、メディアの多様化が進みました。ニューメディアブームと呼ばれ、電話・テレビ以外のメディアの多様化が進められました。アナログの多様化でした。同じく84年、マッキントッシュをジョブスが発表。コンピュータのパーソナル化が始まりました。デスクトップで誰もがコンテンツを作る時代の幕開けです。

 10年後、90年代に入ると、別の運動が起きます。マルチメディアブームです。デバイスとしてPCとケータイが大衆化、インターネットが普及し、デジタルネットワークの上に流れる情報、映画や書籍やテレビ番組や音楽やゲーム、それらをひとまとまりにする「コンテンツ」という概念が登場しました。

 ただ、コンテンツは成長産業と言われながら、期待には反しています。デジタル化が進んだ95年からの10年間に市場規模は5.8%成長でGDPとほぼ同じで、成長産業ではありません。最近むしろ縮小しています。一方、その間、生産された情報量は21倍。爆発的に拡大しています。

 そしてこの数年、メディアは20年ぶりの激動のさなかにあります。1)デバイスはTV、PC、ケータイからスマホ、タブレット、サイネージ、スマートTVなどマルチスクリーンへ。2)ブロードバンドと地デジの全国整備が完成、通信放送の総デジタル化という20年来の目標が達成、クラウド列島が誕生。3)サービスとしてはコンテンツが伸び悩み、ソーシャルメディアが中心に定着。

 メディアを構成する3つが世界一斉に塗り変わっているのです。その中で、知財・コンテンツがどうなるかが目下の課題となっているのですね。  (つづく)


2021/10/25

浜野保樹さんとマルチメディア

 ■浜野保樹さんとマルチメディア

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2014/5/10(土) 8:30ー


 2014年1月3日、浜野保樹東大名誉教授が亡くなりました。享年62歳、若すぎます。

 初めて浜野さんにお目にかかった92年、私は郵政省でコンテンツ政策を立ち上げる画策をしていました。80年代のニューメディアブームが過ぎ、アナログからデジタルへの移行が話題となっていたころです。映画、テレビ、書籍、音楽、ゲーム、いろんな情報がデジタルに転換し、コンピュータや通信・放送メディアで利用されるようになる。その政策を立ち上げたいと浜野さんに相談しました。

 それが「メディア・ソフト研究会」。コンテンツという言葉がまだなく、造語でした。全家庭が高速回線で結ばれるコンテンツ像を描こうとするものでした。高速といっても当時はせいぜい1.5Mbps専用線。インターネットも登場していません。

 浜野さんは、そのマルチメディア委員長。テレビや電話やワープロに代わり、1台で全てを処理するマルチメディア=PCに集約され、アナログの通信・放送網も1本のデジタル網に統合される。その委員会の報告は、世界初のデジタル(CD-ROM)でした。すると海外からたくさん問い合わせが入って、役所は大騒ぎになりました。予算措置をせず、ぼくらがゲリラでやってたからです。

 浜野さんはインターネット推進や通信・放送融合の急先鋒で、商用化前のブロードバンドを田舎の有線放送電話で仕掛けようとしたり、タブーとされていた地デジの構想をぶちあげてみたり、それらをぼくと政策として仕掛けてはバレて、物議をかもすことも多数でした。浜野さんは師匠であり、戦友です。

 すんなり政策が進んだわけではありません。通信・放送融合は省内でも反対は強くタブー視されていました。ところが研究会の報告をもとに、関西学研都市で光ファイバーを用いた実験予算30億円が認められ、反対していた放送行政局が了解、融合論議ができるようになったのです。

 

 ブロードバンドの推進、デジタル放送の推進にも骨を折られました。時間がたちました。浜野さんが展望したマルチメディアは完成しました。コンピュータもインターネットもデジタル放送も普及しました。そして時代はその次、マルチスクリーンでクラウドでソーシャルへと移行しました。しかし、これからどうなるのか、どうするのかの展望は描けていません。夢多きおじさんは少なくなり、明日のビジネスに汲々としている。

 このあたりで、次の展望を描く挑戦を、若い方々にしていただきたく、その場を作ろうと思います。浜野さんには遠くからそれを見守っていただければ幸いです。


2021/10/24

知財本部の新ラウンド開始

■知財本部の新ラウンド開始

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2014/5/3(土) 8:30ー


 知財本部「検証・評価・企画委員会」が設置されました。それまでの「コンテンツ強化専門調査会」の改組で、引き続きぼくが座長を務めます。知財本部も設立10年を経て、検証・評価に重きを置くということです。

 メンバーは、KADOKAWA角川歴彦さん、吉本興業大崎洋さん、ドワンゴ川上量生さん、久夛良木健さん、トーセ斎藤茂さん、一橋大学井上由里子さん、弁護士野口祐子さんら引き続き参加される委員に加え、日本レコード協会斉藤正明さん、NHK木田幸紀さん、松竹迫本淳一さん、ニッポン放送重村一さん、竹宮恵子さんといった面々。

 政府全体に動きが出てきました。文化庁はクラウドサービスに関するワーキング設置、著作権の裁定制度の見直しへと動いています。IT本部はビッグデータ利用の制度見直し方針を策定しています。いずれも個別の戦術vs全体の戦略という構図の議論となります。全体戦略が求められているのです。

 例えば著作権裁定制度は、その制度の使い勝手に止まる問題ではありません。孤児著作物、ひいては過去のあらゆる知的資産を国としてどう活用するか、根本的な哲学が問われるものであり、既に欧州や米国とGoogle等のグローバル企業とのせめぎ合いが表面化している問題です。

 クラウドサービスも根本問題。著作権保護を十全にすることにより、日本ではサービスが不自由となり、結局はアメリカのプラットフォーム事業者にビジネスを根こそぎ持って行かれるという状況、つまり局地の解決によって全土が崩壊する状況を改めるグランドデザインの問題です。

 ビッグデータも同様。個人情報保護という部分最適とビッグデータ活用という公共の便益との折り合いをどうつけるかの問題。俯瞰して戦略的にとらえることが大事です。

 一方、コンテンツの海外展開はようやく勢いがついてきました。放送番組も音楽も権利処理の円滑化や正規版ネット配信などに力が入れられています。しかし、映画の輸出実績が2012年には前年比8%減少となるなど、コンテンツ全体でみると、一筋縄ではいかないのです。

 知財本部の資料によれば、コンテンツ市場11.2兆円に対し、コンテンツ関連産業は22.2兆円(ネット関連13.4兆円、広告1.9兆円、メディアハード5.0兆円、キャラクター商品1.9兆円)。倍の規模があります。さらに、これを日本の輸出総額64兆円にいかに波及させるか。コンテンツだけでなく、他の産業も含むヨコ展開が不可欠になっています。この問題も、よりマクロに戦略を立てる必要があります。

 ひとまずこの会議は政府の施策を検証・評価することが任務ですが、まずは失敗も含めて検証し、次のプランを立てる必要があります。同時に、コンテンツに閉じず、分野横断、省庁横断の幅広い戦略を論じなければなりません。ま、戦略の前に、成果を上げないといけないのですが。


2021/10/23

ソーシャルゲーム協会の発足

 ■ソーシャルゲーム協会の発足

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/4/13(土) 8:15ー


 2012年11月、「一般社団法人ソーシャルゲーム協会」を設立しました。Japan Social Game Association、略称:JASGA。ジャスガと読みます。

 ソーシャルゲームの市場は急速に拡大しています。しかし、コンプガチャ問題など、不安や社会的な問題が呈される状況も招きました。そこで、GREE、DeNA、mixi、NHN、サイバーエージェント、ドワンゴのプラットフォーム6社が中心となり、自主規制で健全化をすることにしたのです。

 協会の理事には6社とコンピュータエンターテインメント協会(CESA)、日本オンラインゲーム協会(JOGA)の代表が就き、代表理事・共同会長には、グリーの田中良和社長とDeNAの守安功社長が就任。さらに、ソーシャルゲーム提供会社や通信会社など現在69社の会員が参加しています。ぼくが事務局長を務めます。

 1.ソーシャルゲームに対する自主規制、2.青少年等に対する啓発活動、3.カスタマーサポート(CS)品質の向上のための活動、の3点に重点を置いて活動します。

 ぼくはそれまでこの動きと強いつながりはなかったのですが、コンプガチャを巡る業界の対応にも、政府の動きにも、危惧を抱いていました。確かに業界は危機に対応して、連携する動きを見せていました。しかし、踏み込みが甘く、遅くはないか。かつて成長産業に政府が介入してきた歴史からみて、のろのろしていると、成長産業の芽を摘むような仕打ちが来てもおかしくない。

 案の定、消費者庁は2012年5月、規制に動きました。これに対し、消費者庁と、経産省、総務省らのスタンスの違いも見えました。健全化への要請と、成長産業への期待との対立です。この問題に関心を持つ国会議員からも意見が聞こえてきました。

 私も政府関係者と話をすることになりました。政官界と業界の双方に、産業界は自主規制に力を入れ、政府の介入は最小限にすべきことを訴えました。

 業界として団体を作る議論が始まり、行きがかり上、私も参加することになりました。さまざまな調整を経て、業界団体としての社団法人を形成し、その中に第三者機関的な評議委員会を作ることに落ち着きました。業界の代表が責任を持って問題に当たることを前面に出すと同時に、中立的な対策を取る組織とするわけです。

 熾烈なライバル関係にある関係企業が一つのテーブルにつく構図を構成できるかどうかが課題でした。それは何とかなった。残る課題は「中立性」。業界の内輪によるお手盛りの対応にしてはいけません。

 そのため、堀部政男先生をヘッドに、パワフルで独立した評議機関を置くことにしました。問題は事務局機構で、当初は理事会社からの出向で発足するとしても、中立性を保つクサビが必要。とうとう、私が引き受けざるを得なくなった次第です。

 リスクが高い仕事です。ソーシャルゲームに対する世間の怒りや不安を浴びる先頭ですから。ただ、ここで間違うと、ソーシャルゲームという、ひょっとすると今後の日本を引っ張ってくれる産業をしぼませることにもなりかねない。政策屋としては、割に合わないが取らなければならないリスクと判断しました。

 課題は多い。うまくいく保証はありません。でも、まずはこぎ出すことが大事。そして、大きく成長するための運動に乗り出したい。80~90年代、任天堂もセガも、ゲームが子どもの未来を拓く国際研究に巨費を投じるなどして、産業と社会の折り合いを求めてきました。ソーシャルゲームも最早そうした責任を負っています。

 ソーシャルゲームはコミュニケーション力を高める。ソーシャルゲームは豊かなコミュニティを育む。そんな新しい文化、新しい産業を形成してくれることを願いつつ、この新組織の業務をスタートさせたところです。


2021/10/22

オープンデータのご報告

 ■オープンデータのご報告

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/10/19(土) 4:57ー


 オープンデータ流通推進コンソーシアム。117社の企業会員とともに、政府・自治体その他さまざまな情報のオープン化を進めています。いわゆるビッグデータをビッガーにほじくり出し、共有し、活用して、価値を生んでいく運動です。ぼくは理事・普及委員長として関わっています。

 まずは総務省が推進した実証実験が成果をあげています。いくつか紹介しましょう。

 交通分野では、鉄道やバスの運行情報、駅や停留所の施設情報を共通のデータ規格でオープン化し、都市部の交通状況を可視化。JR東日本、東京都交通局、東京地下鉄と横須賀リサーチパークが連携。電車やバスの位置・遅延情報を地図上で可視化し、都営バスの到着予想時間と列車運行情報を音声通知。

 また、地盤情報に関し、国や自治体が持つボーリングの地盤データを活用して、防災に資する精緻なハザードマップを提供。

 災害情報についても、ITSジャパン、NTTらが連携。東日本大震災時に、トヨタ、ホンダらのカーナビ情報を活用して通行情報をGoogle Mapsで配信。

 さらに、被災地の自治体が持つ通行止め情報を国土地理院でデータ統合、それらも可視化。

 ぼくは普及啓発を担当していますが、コンソーシアムには、技術委員会とデータガバナンス委員会の2委員会が置かれています。技術委員会はオープンデータを流通させるための技術仕様を検討しています。データガバナンス委員会では、公共データの知財問題に取り組んでいます。

 国の保有するデータを活用しやすくするためには、著作権の利用の自由度を高める必要があります。国が保有する公共データには著作権が発生しないよう著作権法を改正する、国がその権利を自ら放棄する、クリエイティブコモンズなど二次利用促進のためのライセンスを採用する、などのアプローチが考えられます。

 これに対し、一部省庁も前向きです。しかし、全省庁・全国の自治体に拡げるには相当な大仕事となります。IT本部や知財本部でも問題提起していきたいと思います。もし道が開かれれば、大変な成果となります。

 さて、オープンデータの運動は、公共データをオープンにさせる、カナテコで開くことが当初の眼目だったのですが、やり始めたとたん、そんなことは些末なことだということが明らかになってきました。それよりも、個々人や企業のもつ超大量のデータを公共データとともに共有すること。「みんなのデータ」が公共性を持つことがハッキリしてきました。

 頭が下がります。オープンデータは直接の見返りがない運動であるにもかかわらず、政府も自治体も企業も個人もみな、嬉々として参加し、前のめりに動いてるんですよね。

 こういうのは、ホメるしかない。そこで、この春には優れた取り組みを見せる関係者をコンソーシアムとして勝手に表彰するという無謀なイベントをやってみました。

 最優秀賞は福井県鯖江市「データシティ鯖江」。様々なデータをXML等の形式で公開しています。優秀賞にはOpen Knowledge Foundation、株式会社カーリル、税金はどこへ行った?チーム、気象庁、青森県、LODチャレンジ実行委員会、CKAN日本語化コミュニティが連なりました。

 ノミネート活動を眺めて、さまざまな活動が展開されていることに、心を打たれました。新しい活動は、お金がもうかるか、やれという命令があってやるか、が相場です。ところがオープンデータは、みなさんの純粋な公共心と熱意でスタートしていることに感動する次第です。

 さらに、より心強く感じたのは、受賞されたかたがたの多様性。中央官庁もあれば、首都圏の大都市もある。地方の県もあれば、市も町もある。企業も、非営利団体も。国立の研究所も、学生もある。地方も中央も、大組織も個人も、同じく熱意を持って取り組む主役がいる。大きな可能性を感じます。


2021/10/21

ウェアラブルに慣れるのは、まだこれから

 ■ウェアラブルに慣れるのは、まだこれから

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/12/14(土) 9:54ー

  



これは十数年前の写真です。ぼくがMIT メディアラボにいたころのものです。いま話題のグーグルグラスではありません。当時、24時間ウェアラブル・コンピュータを着用している研究員が何人もいました。

 だけど、人が慣れるのには時間がかかります。この研究員も、ネットでアクセスされると肩に装着した超小型サーバが温まってくるのが一番の快感というヘンな人だったのです。いくら奇人集団メディアラボといえど、ヘンなひと扱いだったのです。全ての人がそうなるには時間がかかります。

 ただ、ここに来てようやくグーグルグラスが注目されるのをみると、えっ、まだだったの?という感じ。確かに、まだですよね。ここにぼくが99年4月に書いた文章があります。ニューメディア誌に連載していたコラム「ウェアラブルをブームにする気?」の巻から抜粋します。

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 ウェアラブルというのは文字どおり、身につけることができるということで、服、帽子、靴、メガネ、アクセサリ、といったものをコンピュータにしましょうという動きです。ずいぶん小型になったモバイルコンピュータをさらに分解して、ディスプレイや入力装置を衣服や肉体にくっつけてしまうという感じですね。

 これは私のいるMITメディアラボあたりが中心になって、2年ほど前からにぎやかなテーマになってきたんですが、日本でも98年、日本IBMや東芝などが試作品を発表したり、新聞社がシンポジウムを開催したりして、実用化段階に突入と いうことでやおら注目を集めるようになりました。サイバーパンク上陸というわけです。

 ウェアラブル・コンピュータを身につけた人を観察してみましょう。メガネ型のディスプレイやヘッドホンが表示装置になっています。かつてバーチャル・リアリティで話題になったゴーグル型のヘッドマウント・ディスプレイをつけている人もいます。入力装置には、音声入力、手のひらにあるボタン式装置、衣服に縫い込んだキーパッド、といったものがあります。

 使い方も、普通のパソコンとは違います。パソコンは、使う時、さあ使うぞとエリを ただして正面に座り、スイッチをオンして、OSがぐもぐもと立ち上がるのをかしこまってお待ちするわけです。が、ウェアラブルのスイッチはいつもオン。歩きながら、作業しながら、考えながら、その時々の活動や思考を補助するという使い方だからです。パソコンを使う時はそれが活動の全てであり、「ながら族」になるのはむつかしい。だけどウェアラブルは、「ながら」のために生まれてきたわけですね。

 当面は特殊用途のためのものになるでしょう。工場や倉庫での作業だとか、高齢者の 健康管理だとか。ただアプリケーションはいくらでも広がります。技術的には。難しいのは、コンピュータがこっちに溶け込んでくるという大変な事態に、人はいつごろ慣れるのかということでしょう。メディアラボにはもう何年も身 につけているというサイバーパンクな兄ちゃんがいますけど、みんながそれをヘンなヤツと思わなくなるまでにはかなり学習期間が要ります。

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 どうですか、全く今の状況のまんまで、進歩していませんよね。やっとブロードバンド、といってもADSLが解禁となり、iModeが登場したころです。デスクトップからようやくラップトップに転換されはじめたころ。ぼくがMITにVAIOを持って行ったらスゲーって人だかりができた、ニッポン最後のいい時代。

 それから、モバイルが「いつでも」デジタルを実現しました。デバイスは小型化し、スマホが現れました。ブロードバンドが普及して、クラウドが現れ、オンラインで全ての仕事がこなせるようになりました。

 15年たって、今度やっと24時間「いつも」デジタルが始まります。しかし、慣れる、つまりそんなぼくらがぼくらの姿をヘンだと思わなくなるのはまだこれから。まだ時間がかかりますよね。カッコいいウェアラブル。15年たっても、それがポイントです。




2021/10/20

クールジャパンで日本を売り込め!

 ■クールジャパンで日本を売り込め!

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2014/1/4(土) 8:30ー


 NHKラジオで、クールジャパンについて答えろ!という番組がありました。ぼくが回答役。こんな感じでした。

Q:政府は「クールジャパン」の推進に力を入れ始めた。実際のビジネスの現状は?

 コンテンツ産業は13兆円。世界160兆円の1/10で、2位を占めます。マンガ・アニメ・ゲームなどのコンテンツ産業がもともとの中心ですが、実は日本の市場は縮小傾向にあります。

 日本のコンテンツの輸出比率は約5%で、アメリカの17%に比べずいぶん小さい。輸出力あるのはアニメ、ゲームですが、海外に出る潜在力はもっとあると思います。

 ただ、コンテンツ産業はもともとGDPの3%程度で、国の経済の支柱になるほどではない。コンテンツ産業自体を大きくしていくのではなく、コンテンツ産業を通して、周辺産業を拡大しながら海外に展開していくことが大事です。アニメでPRして、ファッションやクルマや和食を売る、ということ。

Q:「クールジャパン戦略」に、政府が力を入れるのはなぜ?

 日本の経済停滞の中で、ポップカルチャーが台頭して、世界に進出したのですが、実はこの流れは海外から入ったものです。

 「クール・ジャパン」という言葉は、10年前にアメリカのジャーナリスト、ダグラス・マッグレイ氏が書いた論文「Japan’s Gross National Cool(国民総クール)」がきっかけでした。外交における「ソフトパワー」論を提唱したハーバード大学のジョゼフ・ナイ教授も日本はポップカルチャーを活かすべきと 提言しました。それで日本での議論が盛り上がった。つまり、日本自らプロデュースしたものではなくて、海外から発見されて入ってきたブームなのです。

 政府としては、日本経済や産業構造の変化、少子高齢化で自動車や家電などの基幹産業が苦しい中で、新しい産業として日本独自の文化を世界に展開していくことに力を入れています。

 コンテンツ政策は20年ほど前から始まったのですが、今回の安倍政権ではかつてない高まりを見せています。経済政策として、コンテンツ産業をブランド力やイメージを高める触媒として、家電や食品、観光など産業全体を成長させるのが狙いです。

Q:世界での日本文化の発信力の現状をどうみる?

  マンガ・アニメ・ゲームは、すっかり日本の顔です。ピカチュウ、ワンピース、ナルトを知らない子はいません。確実に世界に広がっています。日本文化を総合 的に紹介するパリのジャパンエキスポは、特にマンガ、アニメが人気で、2000年に3000人の来場者で始まったものが、2012年は4日で20万人規模 になりました。

 欧米の本は横書きで左とじですが、右手で開く右とじの日本のマンガが浸透しています。西洋文化始まって以来、逆にとじられた本が書店に並んでいる。アジアでもアニメ、マンガ、音楽を通した日本イメージが定着しています。

Q:K-POPや韓流ドラマのヒットなど、韓国は成功例として挙げられるが?

 韓国では、1998年の金大中政権からコンテンツ予算を拡大しています。特徴は3点あります。

 まず「集中」。映画、音楽などポップカルチャーにジャンルを集中して海外展開しています。

 次に「連携」。家電、クルマなどの産業とタイアップして、ソフト+ハードのセットで売り込んでいます。

 そして「政府」。本気で後押ししています。

 これに対し、日本の海外進出は、集中ではなく多ジャンル総花的。連携ではなく業種タテ割り。そして政府の後押し少なかった。韓国のコンテンツ予算はこの10年で倍増しているんですが、日本は減少しています。

 で、今回、政府は韓国を意識したスタンスで、ポップカルチャーに、食やファッションなどを総合的にプロデュースして海外展開を進める政策に本腰を入れるようになった、というわけです。


2021/10/19

V-Lowマルチメディア放送、始まるのね!?

 ■V-Lowマルチメディア放送、始まるのね!?

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2014/3/1(土) 8:30ー


 「本当に始まるのね?V-Lowマルチメディア放送開始!!」という意味ありげなパンフがCEATEC2013の場で配られていました。

 V-Lowマルチメディア放送というのは、地デジが整備されてテレビ局が引っ越したアナログ周波数の跡地のうち、1-3チャンネルで使っていた90MHz~108MHzの電波、つまりVHFの低い(Low)ほうを使って新しい放送サービスを展開するものです。

 同じアナログ跡地でも、既にV-High(207.5MHz~222MHz)はNOTTVがスマホ向けに有料テレビ放送をスタートしています。フジテレ ビなどテレビ局各社とNTTドコモのジョイントです。通信会社とテレビ局とが組んで、スマホ向けエンタテイメントを提供しています。

 これに対し、V-Lowの方は、方針がハッキリしませんでした。ラジオのデジタル化に活用する、地域の新しい防災メディアとする、さまざまな議論と調整が重ねられました。結果、FMラジオ局を中心に、これまでにないメディアを創り出す方向に舵が切られ、制度作りが進められることになったというのです。「本当に始まるのね?」というのは、業界の自虐ネタです。

 政府の計画によれば、地方ブロックを7つに分け、マルチメディア放送を行わせる。マルチメディア放送というのは、テレビやワンセグケータイだけでなく、スマホ、タブレット、カーナビ、デジタルサイネージなどにも、いや、どちらかというとそういう新しいマルチスクリーンを主軸にしたサービス。広告つき無料 サービスも、課金型の有料サービスもOK。

 参入見込みの事業者は、ぼくが団体の代表を務める「IPDC」を採用します。放送の電波にIP(インターネットプロトコル)という通信技術を重畳し、通信も放送も横断してマルチスクリーンに情報を流す手法です。テレビやラジオというより、ネットです。放送チャネルというより、アプリです。

 これまでIPDCフォーラムでは、放送の電波を使って街角やバスのサイネージに情報を伝えたり、新聞や雑誌の紙面をテレビやタブレットに送ったりする実験を繰り返してきました。放送局が通信業を行うための規制緩和も求め、ユビキタス特区や通信・放送融合法制の提言などもしてきました。制度的にも技術的にもそれらはケリがつき、地デジも整備されて電波の都合もつき、ようやく動き始めたのです。

 

 CEATEC会場でシンポジウムが開催され、総務省南俊行官房審議官、FM東京藤勝之取締役らによるトークの司会をしました。全国7ブロック を6社で請け負い、それぞれ9セグメントの放送を行う。電波を発射するハード事業と、コンテンツを編成するソフト事業とを分離するハード・ソフト分離型。

 中心的な役割を担う予定のFM東京は、ネットワーク整備のため400億円を調達。総務省は急ピッチで制度を整え、早ければ2014年夏にはサービスインの見込み、ということが明らかになりました。

 制度やネットワークのことはわかりました。問題は、端末じゃないですか?対応する受信機が少ないと立ち上がりが大変ですよね。これに対し、FM東京藤さんから衝撃的な話がありました。wifiチューナーを5年で100万台、無償配布するというのです。100万台!30億円になります。「社長にも黙って言っちゃった。」ってことで、会場にいた東京FM社の役員陣ものけぞっていましたが、言っちゃったものはしょうがない。

 チューナー+wifiルータの機能があれば、その周囲はV-Low放送をwifi受信できる環境になります。スマホでもサイネージでも、チューナーなしでV-Lowが見られる。さらに対応デジタルサイネージも2万4千台を全国配備するそうです。

 総務省南さんも呼応し、全国2万4千の郵便局を活用する案を提示しました。東京五輪に向け、4K8Kでのパブリックビューイングを津々浦々に整備していく。そこにV-Lowも乗せ、安全・安心サイネージの機能を持たせる。おお、総務省が郵便局にかけあってくれるなら、サイネージ業界としても歓迎です。

 V-Low周波数帯の利用には、wifiなど通信利用に開放する提案もあり、紆余曲折を経た結果、現在のプランに落ち着きつつあります。この結論でよかったのかどうか。それは、いよいよスタートする新サービスがまずは答えを示すことになります。


リアリズムの田中角栄

 ■リアリズムの田中角栄 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/9/7(土) 11:30ー  早野透著「田中角栄」を読んで、改めて田中政治って何だったのかなと考えています。  毀誉褒貶のチャンピオン。金権政治、官僚操縦、数々の議員立法を通した政策マン。評価はさ...