2021/11/23

リアリズムの田中角栄

 ■リアリズムの田中角栄

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/9/7(土) 11:30ー


 早野透著「田中角栄」を読んで、改めて田中政治って何だったのかなと考えています。

 毀誉褒貶のチャンピオン。金権政治、官僚操縦、数々の議員立法を通した政策マン。評価はさまざまですが、一つの型というか、システムを作られました。

 それは、イデオロギーよりもリアリズム、理念より実利を求める政治の型であり、その手段としての集金・分配と数のメカニズムであり、それを代表する「党人」という立場だった、と思います。

 イデオロギーや理念先行型の政治は、官僚出身者に多かった。吉田(外務)、岸(農商務)、池田(大蔵)、佐藤(運輸)、福田(大蔵)、大平(大蔵)、中曽根(内務)、宮沢(大蔵)。官僚出身の総理は、やりたいことが先にぷんぷん漂っていました。

 これに対し、田中は、日本列島改造論や日中国交正常化など、総理になるころに打ち出した政策は理念的に見えますが、基本は、ドブ板の選挙と集金・分配を通じて、地域が求めるものをゴリゴリと実行していった政治家だと思います。理念的にやりたいことよりも、民衆から求められることをやった。

 議員立法を重ねたことから、理知的な法律家という評価もありますが、基本はその党人的な手腕と魅力で官僚システムをこき使い、民衆から求められる制度や予算をしつらえていったのが実態ではないかと見ます。

 ぼくは、これが自民党政治の幹であり、迫力の源だったと思います。イデオロギーよりも民衆のリアリズムに立脚し、ひたすらそれを実現する。足腰と耳の政治です。

 72年、田中は毛沢東国家主席、周恩来首相と談判し、日中国交正常化にこぎつけます。同年の沖縄返還に次いで、戦後処理を仕上げました。オイルショック後はエネルギー政策も転換しました。それがアメリカの不興を買い、後の失脚につながったとする説もあります。これらも確固とした理念というより、リアリズムに従った政治だったのだとぼくは思います。

 その後、国運をかけた政治判断はありませんよね。湾岸にしろイラクにしろ、戦争参加の判断とはいえ、よそごとでしたし、バブル処理も国鉄電電郵政民営化も国運をかけたわけじゃありませんしね。TPPの判断に手間取ったのもしかたありませんわね。

 ぼくが田中角栄を評価するのは、史上最大のコンテンツ政策を遂行したからです。テレビ局の一斉開設です。1957年。岸内閣で39歳で郵政大臣に就任した田中が民放34社に一斉免許を与えました。これがテレビ産業の拡大をもたらし、日本コンテンツの大本となる産業を成立させました。

 腰を抜かすほどの電波開放。コンテンツ政策には長く関わっていますが、未だこれを超える政策はありません。89年、通信衛星を放送に使えるようにした制度改正、つまり多くのプロダクションが放送局になる道を開いた政策がこれに次ぐものですが、なんと言っても地上波開放のインパクトが大きかった。

 現在のコンテンツ政策も、それくらいのダイナミックな政治力が求められています。ちかごろコンテンツ政策には政府も肩入れしていますが、粒が小さすぎる。こういうガツンとしたオヤジが欲しいと思います。ぼくは文化政策、通信放送政策、家電・ソフトウェア政策、IT・知財政策を合体した「文化省」を提案しているんですが、田中角栄文化大臣だったら何を企画してくれるだろうという空想に捕らわれます。


2021/11/22

ポップカルチャーの提言

 ■ポップカルチャーの提言

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/8/31(土) 9:03ー


 前回までのような経過で、ネット上のいろんな意見をくみながら、委員のみなさんと議論し、提言を練っていきました。そして4月30日、クールジャパン推進会議が開催されました。稲田担当大臣、寺田副大臣、山際政務官、財務・外務、 農水・国交・文科政務官ら霞ヶ関そろい踏み。委員は秋元康さん、角川歴彦さん、金美齢さん、コシノジュンコさん、佐竹力総さん、千宗室さん、依田巽さん。 ぼくはポップカルチャー分科会の議長として出席し、その席で、ポップカルチャー分科会がとりまとめた提言を報告しました。以下、全文です。

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飛び出せ、日本ポップカルチャー。

 ポップカルチャーが世界に飛び出す「発信力」を強化する。

 このため、「参加」(短期)、「融合」(中期)、「育成」(長期)の三策を講ずる。

 「みんなで」「つながって」「そだてる」。

■みんなで    ・・・「参加」(短期)

  世界中の子どもが知っているアニメもゲームも、海外の若者が憧れるファッションも、支えているのは消費者、ファンの愛情。クリエイター、キャラクター、事 業者、そして何よりそれらを愛する国内と海外のファン。「みんな」の力を活かしたい。インターネットで多言語発信し、内外でイベントを開き、交流できる場 や特区、さらには「聖地」を形作るなど、みんなが「参加」して情報を発信する仕組みを構築しよう。政府主導ではなくて、みんな。

■つながって   ・・・「融合」(中期)

  クールジャパンは、マンガやJ-popだけではない。歴史、風土、精神文化、ものづくりの技術、それら全てが「融合」した総合力。そしてカワいいキャラク ターやカッコいいヒーローは、政治体制の壁も乗り越えて世界に受け容れられる。ポップカルチャーには海外への先導役をお願いしつつ、食、観光はじめ多くの 産業や伝統芸術、精神文化とも「つながって」、日本の総合力を発揮してもらおう。

■そだてる    ・・・「育成」(長期)

  ポップカルチャーを生むのは人。楽しむのも人。内外の人財を「育成」しよう。時間をかけて、トップを引き上げ、ボトムを厚くしたい。一流のクリエイターや プロデューサを育てる。彼らが意気に感じ、意欲をもって仕事に取り組むことができる環境を与えたい。海外のファンに正しい知識を与え、日本への視線を熱く する。子どものポップな創造力と表現力を育み、誰もがアニメを作れて作曲ができるようにする。このための制作環境や教育基盤を整えよう。

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 分科会委員のみなさんやネットでの意見も取り入れ、この三点にしました。特に、「政府主導ではなく、みんなで」を強調。

  クールジャパン推進会議では、この方向性を示した上で、この下に具体的なアクションを打つことが大事だと述べ、配信サイトやファンサイトに外国語翻訳をつけていくこと、海外向けテレビチャンネルとネット配信を整備すること、食・観光などと組み合わせた特区を作ること、内外の大学にポップ講座を設けること、 子ども向けワークショップやデジタル教材を開発すること等を例示しました。

 一方、これもぼくが会長を務める知財本部コンテンツ専門調査会でも、著作権制度や海賊版対策などに力を入れており、それらも合わせて日本のソフトパワーが発揮できるよう、委員や政府関係者にお願いをした次第です。

 ぼくの役目はここまで。

 後は一国民として、これから練られるクールジャパン推進会議や政府のアウトプットを注視すると同時に、ハッパかけたりプレッシャーかけたりしていきます。


2021/11/21

デジタルえほんアワード 2013

 ■デジタルえほんアワード 2013

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/11/9(土) 9:40ー


 

ワークショップコレクション9の会場でデジタルえほんアワードの受賞作品の発表と表彰式が行われました。第2回目の開催です。

 デジタルえほんアワードは、スマートフォンやタブレット、サイネージや電子黒板など、テレビ・PC以外の新しい端末での子ども向けのデジタル表現すべてを 「デジタルえほん」とし、応募作品の中から優秀な作品を表彰するものです。

 われらがNPO「CANVAS」、われらが株式会社「デジタルえほん」の共催です。

 審査委員は以下のかたがた。豪勢でしょ。

・いしかわ こうじ  絵本作家

・角川 歴彦  株式会社角川グループホールディングス取締役会長

・香山 リカ  精神科医・立教大学教授

・きむら ゆういち  絵本作家

・小林 登  東京大学名誉教授・国立小児病院名誉院長

・杉山 知之  デジタルハリウッド大学学長

・水口 哲也  クリエイター・プロデューサー

・茂木 健一郎  脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学特任教授

 今年の注目は、作品賞「めがねはちょうちょにあこがれる」。作者は竜海中学校の現役中学生、宇野侑佑くん。部活で作成したというデジタルです。メガネがきれいなチョウチョにあこがれて、いろんな方法で蝶になろうとするお話。いま宇野くんは文化祭に向けて3Dのカーレースゲームを制作中だといいます。機能が豊富なので英語の勉強をかねて英語版のソフトウェアを使っているそうです。たくましいなぁ。

 今回、慶應で表彰式が行われるため、仲間から「慶應大学おめでとう」というメッセージを受け取ったというお話を引率の先生がされていました。冗談じゃなくて、慶應に来てくれるといいな。

 審査委員からコメントをいただきました。まずはデジタルえほんの可能性に着目するメッセージ。

 香山さん「そもそもデジタルえほんなるものを操作できるのか心配だったが、スグにその世界に引き込まれた。」杉山さん「デジタルえほんは、新しい表現メディア。スマホ、タブレットの枠からも飛び出し、子どもから大人まで楽しむものが出てくるだろう。」

 水口さん「親が参加して初めて完成するえほん。新しい仕組みのものが出てきており、多様化している。」角川さん「そしてこれからますます広がっていく。ジョブスもエラいが、この分野を切り開いているみんなもエラい。」

 小林先生からは、さらなる宿題をいただきました。「産声を上げた赤ちゃんはまず周りを見回す。情報を求める存在。情報は脳や心の栄養。受賞者はその仕組みを研究してほしい。日本はアメリカや韓国に教育の情報化が遅れている。日本の将来のためにも「子どもが情報をとらえる力」を考えてほしい。」

 絵本作家のいしかわさん。「デジタルえほんは、絵本をデジタル化したものじゃない。屋外でケータイ使ったフィールドワークものや、ドリル学習えほんなど、それならでは表現メディア。 90年代にマルチメディアが期待されていたころは、結局は定着しなかった。キーボード主体だったからだ。スマホやタブレットは、デジタルだがアナログ的なツールが出てきたことが大きい。中学生の受賞はうれしい。作る喜びをそこに見出すことができる。」

 同じく絵本作家のきむらさん「そのとおり。絵本をデジタル化したものではない。全く違う発見があった。だが、まだまだ可能性がある。3年後は審査員ではなく、受賞者側に回りたい。」

 最後に、茂木さんから、ハッパをかけられました。「”デジタル”という言葉は誤解されている。絵本は紙じゃなきゃダメだという意見には根拠がない。デジタルとはインタラクティブのことだ。考えてみれば、紙芝居はインタラクティブだった。それが進化したものだ見ればいい。しかし、日本はその対応が遅い。20年間眠っている。スピード感が必要だ。動画のYouTubeはアワードなんてなくてもスゲー、という存在になっている。デジタルえほんも、こんなアワードがなくたってスゲーとなるようなものにならなければ。審査員が選ぶというスキームではなく、みんなが選ぶといった手法で広げていきたい。」

 がんばります。がんばりましょう。


2021/11/20

ポップカルチャー政策の根拠

■ポップカルチャー政策の根拠

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/8/17(土) 8:35ー


 コンテンツが一つの政策ジャンルになって20年近く。ここにきて政府は一段と高いギアに入れ、クールジャパンやポップカルチャーを前面に打ち出しました。

 でも、ポップカルチャー政策を話題にすると、中味も聞かず、「そんなの国のやることかよ!」という声が必ず飛び交います。マンガ、アニメ、ゲームの海外人気が認知されたとはいえ、未だサブカル扱いで、政策の俎上に乗せようとすると冷たい視線を浴びます。

 クールジャパンは10年前にダグラス・マッグレイ氏が記した論文「Japan’s Gross National Cool」がキッカケですし、ソフトパワーを提唱したジョゼフ・ナイ ハーバード大教授が日本はポップカルチャーの力を活かすべきと提言するなど、この流れは日本が自己評価して進めたというより、海外からの発見が先行したもの。国内的には及び腰。

 なかなか話がかみあわない。ぼくも政策に関与して20年ほど、じれったさを感じてきました。今回、ポップカルチャー政策の議論に参加してみると、やはりあちこちからタマが飛び、あちこち被弾しました。

 だけど、そもそも、ポップカルチャー政策はなぜ必要か。そのおおもとの整理が必要です。

 まずは経済政策として。アニメにしろ音楽にしろ、人気コンテンツはビジネスになります。それだけなら放っておけばいい。ターゲティングポリシーはとうに卒業したはず。

 ただ、それによって得られた日本に対する好感度や憧れといった波及効果、経済学でいう外部効果はビジネス上はカウントされない。コンテンツ生産量は社会経済的にあり得べき量より過小となる。これを政策的に高める。

 したがって、経済政策的には、コンテンツ産業自体の売り上げを伸ばすというより、コンテンツを触媒として、家電や食品や観光などを含む産業全体が伸びることが狙いとなります。

(これまでもコンテンツ産業の拡大が政策目標にされたことがありましたが、ぼくは反対でした。産業の数値を目標にするならGDPの拡大でしょう。)

 もう一つは、文化外交として。ナイ教授のいうソフトパワー、つまり文化の魅力で他国を引きつける国際関係論です。先ごろ日中関係が揺れていた最中に北京大学の博士課程の学生たち数十名にメディア政策について講義をしてきたのですが、その際、連中からは日本ポップカルチャーの動向に質問が集中しました。スキなのですよ。ナルトやワンピースは、戦争を抑止するほどの力を持っていないとしても、ケンカを止める対話のキッカケぐらいにはなるでしょう。

 なお、この評価指標がまだできていないのが課題。かつてスタンフォード日本センターで、GDPP(ポップパワー指数)を開発するプロジェクトを企画したものの、スポンサーが見つからず、うまく立ち上がりませんでした。やってみたいものです。


2021/11/19

教育情報化八策

 ■教育情報化八策

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/8/3(土) 10:02ー


 デジタル教科書教材協議会(DiTT)は6月、「教育情報化八策」をとりまとめました。政府は1人1台の情報端末とデジタル教科書の整備に動きを見せていますが、その動きを加速的に推進するため提言したものです。[ ]は数値目標です。

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・ 教育情報化タスクフォースの設置  [1]

 文科、総務、経産、厚労、内閣府など関連する省庁横断のタスクフォースを総理大臣直轄として置き、目標の設定、計画の推進、課題の解決に当たる。その一元的な推進機関をタスクフォース直下に置く。産官学連携の協議会(コンソーシアム)を形成し、協力態勢を敷く。

・ 「デジタル教科書法」の策定  [3]

 デジタル教科書を正規化するための3法(学校教育法、教科書発行法、著作権法)の改正を含む「デジタル教科書法」の策定に向けた検討を開始し、2013年度に結論を得て、必要な措置を講ずる。

・教育情報化計画の前倒し [5]

  「教育情報化ビジョン」の目標年度2020年を5年前倒しし、2015年に全ての子どもがデジタル教科書で教育を受けられるようにする。

・ デジタル教育システム標準化 [10]

 情報端末、クラウドネットワーク、デジタル教科書・教材のシステム標準化を図り、10地域のモデル自治体で検証を行う。2015年には標準スペックを決定する。

・ 推進地域の全国配置  [100]

早急に全国47都道府県、政令市を含む100か所に推進拠点地域を設定し、施策を重点投下する。教育センター等による教員研修も重視する。

・ スーパーデジタル教員の支援  [100]

 世界で共有できるデジタル教材の開発を促進するため、各地域の教育情報化の実践で成果を上げている全国の教員100名を「スーパーデジタル教員」に選定・支援する。優良教材については産官学の協議会が全国への普及を支援する。

・ デジタル創造教育の拡充  [1000000]

 ICTによる創造力・表現力を育成するワークショップに年間100万人が参加できるよう支援する。(参考:2013年3月のワークショップコレクションには10万人が参加)

・教育情報化の予算措置 [300000000000]

  教育情報化に使途を限定し、毎年3千億円規模の予算措置を行う。

  使途はハード、ソフト、人的サポートなど必要なものを広範囲に適応できるようにする。

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 3法律の策定、計画の5年前倒し、3千億円の予算措置といった内容は従来の提言を受け継いだものです。ポイントは、全国のリーダーとなる先導100地域・100教員を指定し、具体的な支援策を講ずるという点。

 2014-5年を目途に一人一台を達成しようという自治体が複数登場し、現場の先生方も勢いを増しています。これをとらえ、政府主導の運動よりも、地域や現場主導の運動へ、上からの指示でなく、下からの盛り上がりへ力を入れようということです。

 このため、DiTTでは、全国の自治体や先生方に自薦・他薦で名乗りを上げてもらい、登録する作業を進めています。ウチこそ・ワレこそという方は、事務局までご一報ください。


2021/11/18

北京大学の秀才が見る日本

 ■北京大学の秀才が見る日本

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/5/4(土) 9:19ー


 尖閣の問題がまだくすぶっているころ、北京大学を訪れました。日本のメディア政策について3連続講義を頼まれまして。相手は博士課程の学生20名。みな北京以外の、いわば田舎から上京した学生だといいます。地方で神童と呼ばれた人たちのようです。超優秀な精鋭。中国の次世代を担われるんでしょう。

 しかし冷え込んだ日中関係のもと、日本に興味はあるのか?ぼくの話を静かに聞いていた連中に、質問しました。

 「日本のコンテンツで知ってるのは?」

 連中が一斉に声を上げ始めました。

 ナルト、ブリーチ、ワンピース、デスノート、コナン、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、ギンタマ、ハガレン・・・なんだいなんだい、おスキなのね。

 もう一問。「一番有名な日本人は?」 めいめい名前を挙げた秀才たちが熱く議論を闘わせました。結果は、こうです。

 1位 蒼井そら  2位 ドラえもん  3位 宮崎駿

 

 ただ、そこは北京大の博士学生。政治的な話には敏感でした。「習近平政権の第一課題は?」と振ると、地域格差、経済格差に並び、党幹部の汚職問題を挙げました。新政権になって摘発が相次いでいるが、尻尾切りだ。ポーズに過ぎない。落ち着いたら元の腐敗に戻るだろう。など厳しい指摘。あけすけなんです。

 今度は向こうから質問が吹き出しました。タジタジでしたが、ぼくの即答も合わせてメモしておきます。彼らの日本を見る視点が少しわかるかと思います。

・政府に情報公開させる手法は?

 情報公開法など、制度で政府を規制し、国民に請求権を渡す手法が基本。ただ、最近のオープンデータ運動のように、政府や自治体と民間が連携して行動を促す方法もある。政府、官僚を督励し、成果を出した部門を高く評価する太陽政策だ。日本ではこちらのほうが効果的と考える。

・NTT民営化・再編の経験は他産業にも波及しているのか?

 電電公社や国鉄の民営化は郵政事業はじめ他分野の民営化と競争促進の参考になった。ただし、技術進歩や競争環境によって適用可能性が異なることに注意を要する。原発問題を契機として電力の競争環境整備が課題となっているが、同じアナロジーが適用できるわけではない。

・教育情報化が論理的思考を奪う恐れはないか?

 紙をデジタルに置き換える、ペンをキーボードに置き換える、という考え方であれば、そのような恐れも想定し得る。だが、私たちのアプローチはアナログとデジタルの共存。リプレースではない。アジアでは特に「書く」文化と能力に重きを置くが、これは当面、不変。「書かせる」デバイスや授業も重要。アナログvsデジタルという問題ではなく、授業の内容の問題。

・自動翻訳技術は中国のプレゼンスを高めるか?

 2007年のTechnorati調査では、世界のブログで使われている言語は37%が日本語、36%が英語、そして8%が中国語だった。日本語が世界一だったのは若者のケータイによる情報発信。今回、北京を歩いてとても多くの人がスマホを使っているのを見た。いま計測すれば中国語が相当増えているのではないか。そして中国語で発信された情報が各国語に自動翻訳され流通する。間違いなくプレゼンスを高める。

・大学が新産業育成に果たす役割は?

 スタンフォード、ハーバード、MITのように、数々のIT企業やサービスを大学がプラットフォームになって生み出していったアメリカのような成果を日本は挙げることができていない。従来型の教育と研究だけでなく、社会経済のプラットフォーム、次世代産業の増殖炉として機能することが求められる。ぜひ北京大学のみなさんとも連携して何か生み出しましょう。

・著作権保護の強化は日本人の学習機会を奪っているのでは?

 あなたがたがアニメはじめ色んなコンテンツをフリーで使って学習しているのは知っている。日本はあなたがたより制約がある。だが私から見れば中国の保護は緩すぎる。日本の権利者からみれば問題も多い。コンテンツが国境を越えて流通する量が爆発的に増えるので、国際調整はいよいよ重要。あなたがたのようなリーダーにはしかと考えてもらいたい。

 ひとまず反日暴動は収まり、民衆は平静を取り戻しているものの、王府井の書店では1フロア日本のマンガが占めていた場所が撤去されたままであるなど、経済の関係は落ち込んだままでした。

 中国では新政権が一足先に発足し、日本の安倍新政権の出方を待っている状況でした。習近平政権は2020年までに所得を倍増する計画ですが、エネルギーや環境問題をどう並行してクリアするのか、それまでに一党独裁制がほころびずに済むのか、内なる悩みは深そうです。

 今後も政治的に両国の関係が揺れることはあるでしょう。そんな中でぼくら大学関係者ができることは何でしょう。改めて彼らと論じてみたいと思っています。


2021/11/17

復活するか、マイナンバー

■復活するか、マイナンバー

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/4/20(土) 8:48ー


 税と社会保障の共通番号「マイナンバー」を導入する法案「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」。今国会での成立が見込まれています。2012年に国会提出されたものの、解散を巡る政治的駆け引きのあおりをくらって廃案となっていたのが再提出されたものです。法律が成立しても、マイナンバーの導入は当初計画より1年遅れの2016年となります。

 マイナンバー。何だろう。

 気になって、自分に関する番号を片っ端からチェックしてみました。運転免許証、パスポー ト、年金手帳、税務署からの請求、みな別の番号がついていて、国や公的機関が管理している。大学や企業その他の所属団体の証明証、電話番号、病院の診察券、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、アメリカに住んでたころ取得したソーシャルセキュリティナンバー・・、みな番号がついていて、誰かが管理している。一方、これだけ番号がある中で、国民全員が持ち公的機関が管理する番号はなかったわけです。

 この制度は、「国民ID」より「税と社会保障の一体改革を進める」という目的に集中して作られています。所得が把握しやすくなるし、行政コストも減るだろう、ということです。国民に与える番号は、氏名・住所・性別・生年月日の4情報と関連づけた個人番号。これを住民基本台帳で管理・把握しようとする。10年前に住基カード、住基ネットで騒ぎになり、あまり使われてこなかった仕組みをきちんと使おうとするしくみだそうです。

 よくわからなさが手伝って、怖がってる人も多いですね。2011年の政府調査によれば、「番号制度導入により国家によって国民が監視・監督される」46.9%。「偽造やなりすましによって、自分の情報が他人からのぞき見されたり不正利用されたりする」36.7%。「自分に関する情報が漏洩しやすくなる」27%。

 でも、国家監視で言えば、パスポートは外務省、免許証は警察、今でも管理したけりゃできます。逆にパスポート番号を管理してくれてないと外国入れずに困ります。情報漏洩にしても、4情報が漏れて本当に困ることって何でしょう。日々ネットの利便を実感しているぼくは、ぼんやりした不安でメリットを潰すことが正当化できないでいます。

 もちろん、安心できる制度構築は大事。法案でも、目的外の特定個人情報の収集・保管の作成禁止、第三者機関(個人番号情報保護委員会)による監視・監督といった手段が執られようとしていました。まぁ、どこまでコストをかけるかですね。個人情報保護のあおりで見られたような、緊急連絡網が作れないとか、事故で搬送された人のリストを病院が警察に教えないとか、行政が民政委員に情報を渡さずに虐待家庭のフォローができないといった事態は、安心を求めて余計に不安をもたらした事例でしょう。

 便利と安心のバランスは、公開と保護のバランスと言い換えてもいい。マイナンバーはコンピュータ/ITシステムですが、ネットを巡る利便性と恐怖の問題と同様ですね。ぼくはITの利便性をどう拡張するかに心を砕いているので、マイナンバーもいかに安心を確保するかよりも、どうメリットを拡げるのかに関心があります。

 病院・学校・銀行・引越・郵便局・ネット・郵便。公共的な領域に絞っても、いくらでも利用分野があります。金融・固定資産を一括管理する資産運用アドバイス。病院間をつないだ医療データのやりとり。さらに、一度IDを登録すれば他のサイトでも同じIDでログインできる、いわゆるオープンIDに拡げれば、ネット上のさまざまな民間サービスで利用できます。野村総研の試算では、番号制度による電子行政の効果3.8兆円に加え、民間でのID活用により10.5兆円の経済効果があるとしています。

 税と社会保障に限るだけでも不安が高いことを考えれば、そこまで拡げるのは抵抗が大きいでしょう。しかし、だとすれば、税と社会保障だけで巨額のコストをかけてシステムを構築するメリットも説明しづらい。といいますか、要するにぼくがよくわからないのは、メリットの小ささと安心コストの大きさがアンバランスじゃないか、ということです。

 民間利用の範囲で言えば、「自由に認める」と「一切認めない」との間に、「利用者・顧客が同意すればいい」とか「政府の許可制にかからしめる」とか、いろんな幅があるでしょう。道はあるということ。でも、民間利用の可能性は、法施行後3年たってからようやく検討されるそうです。

 ううむ。教育情報化の議論もそうなんですけど、メリットがどうでデメリットがどうで、便利がどうで安全がどうで、って話ばっかりで、結局導入が見送られたり、利用が制限されたりっていうのは、失った20年を通して日本が悩まされている宿痾です。

 やっちゃおうぜ、という雰囲気になる空気が欲しい。いま必要なのは、換気扇ですかね。

 

2021/11/16

本気か?クールジャパン政策

 ■本気か?クールジャパン政策

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/5/22(水) 7:39ー


 政府・知財本部では、今期政策の審議が大詰めを迎えている。私がコンテンツ専門調査会の会長を務めるようになった4年前から、いわゆるクールジャパンは知財政策の柱となっている。マンガ、アニメ、ゲームに代表される現代流行文化=ポップカルチャーを核としつつ、ファッション、食、伝統工芸、観光など経済・文化全般にわたるソフトパワーを発揮する。特に海外市場を取り込むことがミッションだ。

 しかし、取組は十分ではなかった。海外から評価されているポジションを日本は活かせていない。経済的にはコンテンツは成長産業どころか縮小傾向にあり、アニメの制作現場の悲惨さは笑えないギャグネタだ。政治的にも活用できていない。海外の若い世代にとって日本はソニーやトヨタよりもピカチュウやドラえもんだが、そのソフトパワーを外交に活かせてはいない。

 クールジャパンは10年前にダグラス・マッグレイ氏が記した論文「Japan’s Gross National Cool」がキッカケであるし、ソフトパワーを提唱したジョゼフ・ナイ ハーバード大教授が日本はポップカルチャーの力を活かすべきと提言するなど、この流れは日本が自己評価して進めたというより、海外からの発見が先行したものだ。国内的には及び腰だった。

 

 安倍政権が誕生し、この認識は改まったかに見える。知財本部とは別に「クールジャパン推進会議」が編成され、ソフトパワーを活かす方策を考えることになった。コンテンツが一つの政策ジャンルになって20年近くたって、政府は一段と高いギアに入れることにした。

 しかし、下手をすると、歌舞伎や華道や佐渡おけさを海外に紹介するという懐かしい政策に陥りそう。事実、そうした雰囲気も漂っていた。政府もより日本が強みを発揮できる政策を求め、更に「ポップカルチャー分科会」を置いて海外への発信策を練ることにした。

 私がその議長を務め、4月30日には「飛び出せ、日本ポップカルチャー。」と題する提言をとりまとめた。キーワードは、「みんなで」「つながって」「そだてる」。「参加」(短期)、「融合」(中期)、「育成」(長期)の三策を講ずるというものだ。

 インターネットで多言語発信し、内外でイベントを開き、交流できる場や特区、さらには「聖地」を形作る。一流のクリエイターやプロデューサを育てる。子どものポップな創造力と表現力を育み、誰もがアニメを作れて作曲ができるようにする。といった施策を念頭に置いている。特に、「政府主導ではなくて、みんな」で推進するという視点を強調した。

 これを具体化し、成長戦略につなぐことができるか。政府の本気度が問われている。

 難問である。クールジャパンやコンテンツを話題にすると、「そんなの国のやることかよ!」という声が必ず飛び交う。マンガ、アニメ、ゲームの海外人気が認知されたとはいえ、未だサブカル扱いなのだ。

 そう、国のやることだ。これは特定産業の育成策ではない。コンテンツを支援するのは、外部効果が大きいからだ。コンテンツ産業の売り上げを伸ばすというより、コンテンツを触媒として、家電や食品や観光などを含む産業全体、GDPを伸ばすことが狙い。むろん、ナイ教授のいうソフトパワー、つまり文化の魅力で他国を引きつける政治学的な意味合いもある。

 ただ、カネの使い方は要注意。コンテンツ政策への風当たりは、「予算」に向けられる。間違った業界にカネが流れ、ダメやヤツを温存してしまう。あるいは、かつての「アニメの殿堂」のように、コンテンツやヒトではなくハコに回ってしまう、といった批判だ。

 私も産業保護の補助金には反対だ。それよりも、支援措置として発動するなら、アナウンス(旗振り)、規制緩和(電波開放や著作権特区)、減税。それで民間の自主的行動にインセンティブを与えることではないかと考える。そして、ハコよりヒトだと考える。

 だが、インフラ整備(デジタル環境)や人材育成(教育)にはカネをかけてよかろう。道路予算の1割を文化と教育に回せれば、状況はたちどころに変わる。地方高速道の車線を増やすより、知財の生産力を高める政策に重点投資してもバチは当たるまい。

 しかも、日本の文化予算は他国に比べかなり低い。文化予算/政府予算は、日本が0.13%なのに対し、フランスや韓国は1%近くある。文化政策のプライオリティーを全政策のどのくらいに位置づけるか、を考える機会であろう。

 それは、予算にしろ規制緩和にしろ、どこにどう政策資源を配分するかの「目利き」が国民から信頼されていないせいもあろう。コンテンツのよしあしを政治家や官僚が判断できっこない、という指摘はごもっとも。審議会のような権威の集まりも白眼視されがちだ。

 私はかねてから日本に「文化省」を作るべきだと主張している。文化、知財、ITに関する政策の司令塔を創設して文化立国を明確にする。だが、ことポップカルチャーのような「みんな」が作り上げる文化の施策は、「みんな」が考えるのがいい。参加型の政策が欲しい。できるか。それを含めて、国としての本気度が問われている。

 20年前、政府にコンテンツ政策を打ち立てようと企てた研究会の事務局を務めていた時、ある委員の発言が今も耳に残る。「こういう政策は、本気で100年やり続けるか、何もやらないか、どちらかだ。」私は、「そうだ、政府は本気で100年やり続けろ。」と言いたい。


2021/11/15

国際討論:ネットは何をもたらすのか

 ■国際討論:ネットは何をもたらすのか

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2014/2/22(土) 8:30ー


 先日、京都でStanford Trans Asian Dialogueが開催されました。青木昌彦先生はじめスタンフォード大学のみなさんと、中国、インド、シンガポール、マレーシアらからの参加を得て、デジタルメディア、 特にインターネットが国際社会に与える影響について議論しました。ぼくもスタンフォード日本センターからのご縁でテーブルに着きました。

  円卓会議や公開シンポで、ぼくも質問を浴びました。お題は「ネットのもたらしたもの」。ビジネス論に傾く東京と異なり、実に京都らしい会議でしたが、英語だったのでヘロヘロ。やりとりをメモします。

○IT政策の変化は?

  30年前に担当した通信自由化以降、IT政策は市場競争や電波配分など「提供」政策が中心だった。通信・放送会社やメーカなど提供側が主要な行政客体だっ た。国内政策が中心だった。だが、デジタル通信・放送網の整備が完成し、「利用」政策にシフトしている。セキュリティ、プライバシー、電子商取引、著作権、教育・医療・行政。しかもそれらはボーダレスな国際問題。根本的に変化している。

○個人番号制度への不安は?

  日本はようやくマイナンバー制度を2016年に開始する。アメリカは社会保障番号を民間活用しており、さらに北欧は個人年収までオープンだが、ド イツは行政の利用さえ厳しく管理するなど、さまざまなモデルがある。日本はドイツに近いモデルから始めると考えるが、長期的にどの線に落ちつくかは不明。 世界標準はないのだが、どこに線を引くかは利用者主導で考えたい。

○ネットは誰の味方か?

 為政者の 味方であり、テロリストの味方でもある。ナイフのようなもので、メスにもなればドスにもなる。グーテンベルクの活版印刷が産業革命・市民革命をもたらすまでに3世紀かかったが、グーテンベルクは自分の発明がもたらす未来を空想はしていなかっただろう。われわれは空想すべきだ。ただ、ITの空想は3世紀は必要あるまい。ただ、落ちつくまでに1世代、30年はかかるだろう。ネット出現から20年なので、どこに落ちつくかを見通すまで、あと10年いただきたい。

○日中韓への影響は?

  尖閣、竹島問題はネットで加熱し、互いに愛国心の増殖炉になった面はある。一方、中国でも韓国でも、日本のアニメ、マンガ、ゲームなどのファンが増加し、それもネットで育っている。尖閣問題に揺れるころ北京大学を訪れ、博士課程の学生たちに、知っている日本人は誰かと聞いたところ、三位宮崎駿、二位ドラえ もん、一位蒼井そら、であった。二位が日本人かどうか釈然としないが、ここに政治家や経済人や学者の名前が登場しないことが問題。ネットの問題ではない。

○メディアがあふれる汚染問題は?

  デジタルサイネージが空間を覆っていく。サイネージの公共空間への設置制限には、日本は中国や韓国より厳しい面があるが、タクシーやデパートなど私設空間 は自由。将来、メディアがあふれることへの規制論はあり得るが、あふれると広告効果も下がる。規制よりも経済が解決するだろう。それよりも、消費者の情報 リテラシーが問題となろう。

○新たな国際問題は?

  著作権にしろ青少年保護にしろプライバシーにしろ、問題は国家間の対立ではなく、国家vsグローバル企業の対立。日本など国家がグーグルやアップルを規制 できず、それを国家間で調整できなければ、新たな調整スキーム作りに汗をかくか、回線をブチ切るか、ということになるのでは。

○新聞とネットの関係は?

  学生が新聞を読まずテレビも持たないというビックリ話はもう飽きた。ぼく自身、メディア接触態度が変わった。10年前は朝起きたら、1.新聞を開き、2.テレビをつけ、3.PCでニュースをチェックした。今は、1.フェイスブックで友 だちを確認し、2.ツイッターで追いかけ、3.ウェブサイト、4.テレビのニュースを見て、5.新聞を読む。全く逆になっている。

 以前は、信頼性の順に見ていたということだろう。今は身近な順、速報性のある順、そして信頼性の逆順で、最後にゆっくり確認する感じ。そう考えれば、どのメディアもぼくには存在価値があるけど、それは紙とかメディアとかの媒体の問題じゃないということだ。


2021/11/14

マルチスクリーン暮らしは?

 ■マルチスクリーン暮らしは?

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/9/14(土) 8:57ー


「マルチスクリーンとソーシャルメディア」に関するトークショー。中村さんのマルチスクリーン暮らしは?と聞かれて、はて、気がつきました。マルチスクリーンって言ったって、イメージが共有されていませんよね。


 ぼくは基本ノマドで、自宅と、3カ所のオフィスの間をぐるぐるしておりまして、そこにはテレビとPCが置いてある。スクリーンはマルチに存在します。でも使うときは1スクリーンです。移動中はてぶらでかまいません。一方、自分の息子たちは、居間でテレビにネットをつなぎ、そのスクリーンの前でノートPCを開きつつ、スマホもいじり、3スクリーン同時利用。同僚には、PCとタブレットとスマホとガラケーをカバンに持ち歩き、電車の中でもマルチスクリーンってのもいます。


 人には人のマルチスクリーン、てことです。


 そこで、いろんなデバイスを使ってコンテンツが展開されるビジネスが紹介されました。家のテレビで見ていたドラマの続きを、電車のスマホで見る。テレビのCMを、街角のデジタルサイネージやオフィスのPCにも届ける。1コンテンツ・マルチスクリーン。この場合のマルチスクリーンは、あちこちにデバイスがあるけど、使うときは1スクリーンのタイプですね。


 でもぼくは、別の方向、息子たちがやってる3スクリーン同時利用に可能性を見出します。テレビのコンテンツと、PCの情報と、スマホのソーシャルサービスが渾然となって1ユーザを取り囲む構図。マルチスクリーンに対し、通信・放送のマルチチャンネルで、マルチなコンテンツを届けるサービス。


 これまで テレビ局は地デジで番組を届け、ネット企業はブロードバンドでウェブサイトを開き、通信会社はモバイルネットでケータイコンテンツを送ってきたのですが、 それじゃダメだということでもあります。一人のユーザを捕まえきれない。マルチなデバイス+チャンネル+コンテンツを、トータルに設計しなければ。


 ユーザに頼りすぎなんですよ。


 親子丼とギョーザとカルボナーラをコンビニで買ってきて食卓に並べて同時に喰っているぼく。楽しいです。でもそれは、ぼくに「コレが喰いたい」という欲求がハッキリしていて、それを編集する力があり、コンビニがそれを可能にしてくれるから。


 でもね、ホントはその渾然メニューを、ぼくが同時に喰いたいメニューを、セットでパックにしつらえてハイって定食にしてほしいわけです、食堂には。ぼくが3スクリーンのばらばらなサービスを自分で編集して楽しまなくても、1パッケージで誰かが構成してくれるといいのに、と思うわけです。


 マルチビジネスのみなさま、よろしくお願いします。


リアリズムの田中角栄

 ■リアリズムの田中角栄 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/9/7(土) 11:30ー  早野透著「田中角栄」を読んで、改めて田中政治って何だったのかなと考えています。  毀誉褒貶のチャンピオン。金権政治、官僚操縦、数々の議員立法を通した政策マン。評価はさ...