2020/11/05

著作権制度、ギロンの前にアクションを

■著作権制度、ギロンの前にアクションを

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2020/8/15(土) 8:30ー


                     文化庁資料より

文化審議会著作権分科会基本政策小委員会。

海賊版対策としてリーチサイト対策や侵害コンテンツのダウンロード違法化など著作権法改正をこなし、かつ、教育情報化に対応して学校で著作物を無許諾で使えるようにするなど、大きな進展がありました。

それに次ぐ新ラウンドが始まりました。

                     文化庁資料より

今期は、

・放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化

・私的録音録画補償金制度の見直し

・デジタル時代に対応した著作権施策の在り方

というやたら重いテーマが並んでいます。

末吉亙弁護士が主査、上野達弘早稲田大学教授が主査代理を担われます。

よく担われました。たいへんです。

ぼくは会議で2点、コメントをしました。

教育情報化について、放送ネット配信について。

前者は措置済みの案件。

放送ネット配信はこれからの案件。

                     文化庁資料より

1 教育情報化について。

子どもPC一人1台の運動を始めて10年になる。日本は途上国で、5人に1台だった。昨年の補正予算と新型コロナウィルスの緊急対策で4000億円強が措置されて、今年一気に達成できる見込み。同時に、補償金の制度がセットになったことで両輪が揃い、展望が開けることとなった。

知財本部の会議でも申し上げたが、制度改正に携わった政府はじめ関係者のみなさんと、特に瀬尾委員を筆頭とする権利者のみなさんに、教育情報化を推進する立場としてお礼申し上げる。

ただこれは来年度以降の措置をどうするかが本丸のテーマ。関係者の調整を期待する。 

                      文化庁資料より

2 放送ネット配信について。

私的録音録画補償金については、2004年の見直し論に参加した。2008年のダビング10の整理にも携わった。

非常に激しい利害対立があり、複数の大臣も登場し、訴訟もあった。それでも解決していない。そういう問題。 

                     文化庁資料より

一方、通信放送融合という言葉が公式文書に登場したのは1992年の電気通信審議会答申で、30年近くのテーマ。

日本の著作権制度がガラパゴス化した30年のテーマなのに、制度見直し論はこの1-2年のこと。

これを論ずべきタイミングは、

・送信可能化権を作ったとき(1997)

・電気通信役務利用放送法を作ったとき(2001)

・通信放送法体系をガラポンにしたとき(2010)

など何度もあった。でも行われなかった。

それを今ただちに整理するには、民間ステイクホルダーの、それなりの覚悟とアクションが必要。

第三者が理論的な整理をしても動かないのがリアリティーだ。

この問題解決は、デジタル化に遅れを取った日本として待ったなしの重要課題であり、海外の制度と歩調を合わせるべきと考える。

が、それを前進させるためには、まずステイクホルダーのみなさんの意見集約、その調整に期待したい。

また、本件は通信・放送の法制度ともリンクする。

著作権制度と通信放送法制度がバラバラに議論されてきたことも問題の一因ということも留意すべきだ。

――コメントは以上です。

2に関しては、ネットで傍聴するみなさんも、何を言ってるんだ?と思われたかもしれません。だって、審議会での議論を無視するような発言ですから。

でも、ある種そういう意味も含めているんです。

録音録画補償金にしろ、放送配信にしろ、民間の利害対立問題でして、肉食の世界です。

ビジネス+政治なのです。

そしてダビング10の際に痛感したように、行政がそれを解決する力も持ち得ていません。

「ダビング10にみる霞ヶ関の失墜」

https://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/03/10.html

それをアカデミズムなど第三者に委ねるなどフィクションです。

制度化したいステイクホルダーの経営者たちが、対峙する相手の親分とサシで握って妥結して、政治にもスジを通して、全方位に「しゃーねーな」と言わせる。

制度は、その上で審議会→政府→国会に落とし込む。

そのリアリティを持たずに議論していても時間の無駄になりますので、あらかじめ、文化庁の会議室の外でコトを進めておきましょうよ。

ということを申し上げたかったわけです。

さて、ギロンよりアクションと行きましょう。

では。

放送の規制改革も答申が出ました。

■放送の規制改革も答申が出ました。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2020/7/18(土) 8:30ー


                                                     総務省資料より著者撮影


規制改革推進会議の答申が取りまとめられました。

電波・通信・放送制度改革もその重要項目です。

電波・通信はブロードバンドのユニバーサルサービス化を検討するなど1ページでさらりと扱われているのに対し、放送は7ページにわたりガッツリ記述されています。

それはぼくが投資WGに呼ばれ、通信・放送融合についてお話しした内容と重なるものです。

答申を読んでみます。

「超スマート時代のメディア成長戦略を」

https://ichiyanakamura-thatisallfortoday.blogspot.com/2020/11/blog-post_79.html

「放送を巡る規制改革」は4項目。

ア 放送事業者によるインターネット配信の推進

イ ローカル局の経営基盤強化とNHKによる協力の在り方

ウ インターネットにおける放送コンテンツの円滑な流通に向けた制度整備

エ 放送コンテンツの製作取引適正化

問題意識は正しく、そしてそれは同時期に総務省の「放送事業の基盤強化に関する検討分科会」がまとめた報告ともオーバーラップします。

業界関係者は合わせ読むのがよいでしょう。

「放送事業の展望は? 総務省報告、出来。」

https://ichiyanakamura-thatisallfortoday.blogspot.com/2020/11/blog-post_72.html

ア 放送事業者によるインターネット配信の推進

はNHKに向けた提言です。配信のエリアを放送対象地域に制限する制御は不適切とし、地方番組を積極的に全国配信することを求めます。

NHK同時配信を可能とする放送法の国会審議に呼ばれた際「地方からの全国・海外発信が重要」とぼくも申し上げた事項です。

また、受信料で制作された番組を有効活用すべきところ、NHKは100万件の番組と800万件のニュースを保存しているが、NHKオンデマンドで配信されているのは7000件にすぎないとし、考え方の明確化や公表を求めています。

さらに、コロナ禍で休校中の子供に提供された「NHK for School」を「高く評価」し(珍しい!)、Eテレにおける学校放送番組の拡充などを求めています。

NHK、もっとがんばれ、という答申です。

イ ローカル局の経営基盤強化とNHKによる協力の在り方

これもまずはNHKを名宛人としています。

改正放送法に盛られた、ネット活用業務に当たっての民放との連携・協調義務に関し、ローカル局がネット配信基盤を構築できるよう協力せよ、というもの。

これも総務省報告と方向を一にしています。

同時に、ローカル局について、経営の自由度を高める制度改革や設備の共用化を検討する、としています。

ポイントは「関係者からの具体的な要望を把握し」が頭についていること。まずはローカル局が自らの経営戦略で考えろ、という姿勢です。総務省の報告もそのトーンです。

2年前、放送法4条の撤廃やハード・ソフト分離など放送制度改革の「うわさ」が流れ、業界がざわつきました。規制緩和に見えつつ、放送局の意向に基づくものではなく、すぐ沈静化しましたが、その後この分野の制度論はまず当事者の意向をベースに扱われていると考えます。

ウ インターネットにおける放送コンテンツの円滑な流通に向けた制度整備

ネット配信の著作権制度に関する事項です。これだけで3ページを割く力の入れよう。

放送と通信(ネット)で扱いが異なるため厄介になっている長年の課題で、放送局と権利者(実演家やレコード業界など)の利害が錯綜しています。

答申は前のめりで、放送のネット配信、拡大集中許諾制度、孤児著作物の裁定制度につき総務省と文化庁が制度設計を行うことを求めています。

放送とネットの著作権がねじれているのは日本ガラパゴス制度で、どうにかしたい。

通信・放送融合を邪魔してきたこの制度問題、前進を願います。

ただし、そう簡単ではない。経緯もありますから。

今でこそ放送局は問題解決に躍起だが、かつてその機会を逸してきたんです。

1997年にガラパゴスの大元、公衆送信権を著作権法に設けた時。

2001年に通信・放送融合を促す通信役務利用放送法を制定した時。

チャンスは2回あったと思います。

当時ぼくは放送のネット配信は著作権法上も放送と同等にすればよいと主張しましたが、放送局はネットから距離を取る姿勢でした。

著作権法上、放送と通信が分断されての運用が長く続く中、これを動かすには放送側がかなりの本気度を示す必要があるでしょう。

そしてもう一点、簡単ではないと思うのは、省庁の調整ではおぼつかないからです。

2006年に私的録音録画補償金を巡って著作権者と機器メーカが対立した際、文化庁と経産省の調整は不調で、以来、著作権者の願いは達成されていません。

2008年、地デジのダビング10を巡って放送局、機器メーカ、著作権者が対立した際、総務省、経産省、文化庁の調整は不調で、結局は民間による合意でことが収まりました。

霞が関の調整で民民の利害対立が収まる昭和は遠い遠い昔で、民間の当事者同士が握らないと動かない。

つまり本件は規制・制度問題ではあるものの、それを動かしたい放送局側が汗をかいて、権利者と握ったうえでテーブルに持ち込まないと展望を得づらい。とぼくは考えます。

この答申は規制当局より民間プレイヤーに向けて発せられた、と読みました。


放送事業の展望は? 総務省報告、出来。

放送事業の展望は? 総務省報告、出来。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2020/7/4(土) 8:30


                         

                                           総務省資料より著者撮影

総務省 放送を巡る諸課題に関する検討会「放送事業の基盤強化に関する検討分科会」が報告書を取りまとめました。AMラジオの在り方、ローカル局の経営基盤強化策に関し検討を進めたものです。分科会長は多賀谷一照千葉大学名誉教授、ぼくが会長代理を務めました。

テレビ放送の広告費は低下傾向にあるのに対し、2019年のインターネットの広告費はテレビ放送の広告費を初めて上回りました。地方の人口減少やインターネットの普及に伴うメディアの多様化等が引き続く中、「テレビ広告収入の伸びを期待することは今後厳しい状況になる」と分析しています。

 

                                                           総務省資料より著者撮影

同時に「民間AMラジオ放送事業者の経営は厳しく、企業努力で対応できる範囲を超えている」とし、AMラジオ放送の停波も含め経営基盤強化を図ることができるよう、「民放連の要望を踏まえ」現行制度を見直すべき、としました。

2028年の再免許時までに、AM放送からFM放送への「転換」や両放送の「併用」を可能とするよう制度を整備する。2023年の再免許時を目途にAM放送を一部地域で実証実験として長期間にわたり「停波」できるよう制度的措置を行う。というものです。

                                          総務省資料より著者撮影 

                                                        総務省資料より著者撮影

もう一つの柱がローカル局の経営基盤強化です。民間企業の経営問題ですが、地域におけるジャーナリズムの確保、地域の安全・安心の確保、地域活性化への貢献という社会的役割・公益性を維持すべきとする考え方に立ちます。免許事業たるゆえんです。

環境整備のため取り組むべき事項として、4項目を掲げます。

1)ベストプラクティスの共有

2)人材育成

3)インターネット等の活用の推進

4)海外展開の一層の推進

1)ベストプラクティスの共有:民放連は事例を収集し、会員社間で情報を共有している。こうした取組を継続する。

2)人材育成:IP化などの技術、コンテンツ海外展開、ネット配信など新事業領域に対応した人材の確保・育成が必要。

これらは業界をあげての対応が求められます。

より重要なのは、3)インターネット等の活用の推進。

「共通の配信基盤を構築するなど、効率的・安定的な配信基盤の確立ができるよう、引き続き国としても環境整備を図る必要がある。」としている。

配信に当たっての権利処理の円滑化も課題。日本の制度がガラパゴスで、かねてから課題であったにもかかわらず、取組が弱すぎたとぼくは考えるが、NHKの同時配信スタートもあり、総務省から文化庁に対して対応を求め、これを受けて文化審議会で議論が行われています。進展に期待します。

視聴データの利活用も新たな重要テーマ。「多岐にわたる実サービスを想定し、多くの視聴者を対象とした実証による検証が必要」「個人情報保護法の改正も踏まえ、実証等を通じたルール整備を進め、視聴データを活用した新たなサービスの創出・展開を促進していく必要がある。」としています。

NHKとの連携も。radikoやTVerでの番組の配信、民放が出資する配信プラットフォームJOCDNへの出資など、ネット分野での協力を紹介します。

NHKは「放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行うこと」を目的としており、放送法を踏まえ、「ネット配信に係る協力も一層取り組んでいくこと」を求めます。

さらに、NHKはAIを活用した自動手話や自動字幕生成などの技術開発を行っており、このような先導的な知見・技術を広く放送サービス全体に活用することは、ローカル局の経営基盤の強化にも貢献すると指摘しています。

NHKの先導的役割に関する正しい認識と考えます。

最後の提言が4)海外展開の一層の推進。

クールジャパン政策でも放送番組の海外展開は重要事項とされています。ローカル局による「国際コンテンツ見本市を通じた海外展開支援、人材育成等が重要」とし、TIFFCOMの抜本的強化を挙げています。ぼくが拠点整備を進める東京・竹芝CiPも協力したいと考えています。

この報告書は、「各社がどのような経営を選択するかは自らが判断すべきこと」とし、AM制度も「民放連の要望を踏まえ」た上で行政の役割を整理する抑制的な筆致で、ぼく好みです。

作成に当たりぼくは会長代理ではありますが、さほどの貢献をしていません。多賀谷会長と事務局の手腕です。

というのも、ちかごろ政府の会議に出席していて、また悪癖が出てきたと感じることが多いんです。

コンサル型と銀行型の会議です。

コンサル型:こうすべしと上から目線で民間企業の方向性を指図する。

銀行型:政府予算でおカネをつけてやることを主眼にする。

これが現れるたび、ぼくは反対しています。

コンサル型の企業戦略、その見極めは政府や学識者より、経営者と株主のほうが鋭いです。責任も負います。会議は責任を負いません。

銀行型の政府予算は、大きくても一口数億円。おカネは民間のほうがあります。世界的に調達します。

そうじゃなくて、政府にしかできないことを考えたい。

規制改革会議で放送の制度について問われ、県域免許、マスメディア集中排除、外資規制などについて言及することもあるのですが、あくまで当事者たる放送局がどう考えるかが前提。要望もないのに制度を動かすのは不適当、というのがぼくのスタンスです。

他方この報告は、時期の都合でコロナの影響を反映できませんでした。冒頭にその旨を明記しました。巣ごもりでテレビは需要が高まる反面、広告主の提供力が落ちた。制作もストップした。ネット配信が海外企業の手によって活性化した。新型コロナウイルス後これにどう向き合うか、重要な課題です。検討を続けましょう。


コロナ非常事態下のエンタメ戦略

■コロナ非常事態下のエンタメ戦略

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2020/5/2(土) 8:30ー

                                       事務局資料(著者撮影)

政府・知財本部のクールジャパンWG、コンテンツWG、構想委員会、3会合が立て続けにウェブで開催されました。

民間の委員で3つとも関与するのはぼくだけで、クローズドな会議ですが、コロナ非常事態下でのエンタメ対策はとても重要につき、可能な範囲で共有します。

 

                                                         事務局資料(著者撮影)

このうちコンテンツWGは新たにスタートした組織。かつて知財委員会はコンテンツと産業財産権を分けて議論していたのですが、AI+データが主要課題となり、現行の構想委員会に一本化。でもコンテンツは独自領域が存在するのでWGを立てて深堀りします。ぼくが座長を務めます。

                                       事務局資料(著者撮影)

3会合でぼくがまず強調したのはライブ・エンタメの支援策です。

緊急経済対策で食・観光と並びコンテンツはコロナの直撃を受けた領域として、寄附金控除などの施策が盛り込まれています。

が、ライブハウスやプロモーターなど中小の事業者はバタバタと倒産していくでしょう。

来年の五輪を見据えても、それまでにかなりライブ文化は壊れると考えます。

平時の経済対策ではこの文化を支えることはムリ。

文化政策として、これまでにない措置を考える必要があります。まず止血せねば。

 

                                                         事務局資料(著者撮影)

クールジャパン対策の短期措置としてコロナ対策が書かれています。コンテンツ政策やクールジャパン政策は当面、この直面するコロナ危機に集中すべき。

その他の全ての政策はアフターコロナとして後で考えればよい。コロナを乗り越えられなければアフターコロナもありません。

危機感を持つ有志が外食・エンタメ・ホテルの3分野に関し緊急のステイトメントをまとめています。

1.優良コンテンツの再生・再成長支援、2.新しいビジネスモデルの創造、3.デジタルシフトの加速、4.ラグジュアリートラベル開発の準備の4提言です。追って公表されるでしょう。

その提言でぼくはテクノロジーのことを強調しました。

コロナ後のエンタメはこれまでのエンタメとは違う形になるでしょう。インバウンドへの期待も限界があるかもしれません。

ただ、テクノロジーはこれまで以上に使われるでしょう。

5GやVRでのライブ、ブロックチェーンでの著作権管理などテクノロジーを利用する環境・基盤の整備が急がれます。

その点、コンテンツ業界は中小が多く財政基盤が弱い。テクノロジーの導入を促進する支援措置が求められます。

ただ、国の施策に頼るのも限界があるでしょう。民ができることも並行して動かねば。

例えば民間の資金を募って基金を作り、この分野に使う、国はその税制措置を施す、といった知恵が必要だと考えます。

 

                                                  事務局資料(著者撮影)

知財計画のフォローアップについて3点補足します。

1) 海賊版対策・著作権法

リーチサイト対策・侵害コンテンツダウンロード違法化を内容とする著作権法改正が国会提出に至りました。成立を期す。海賊版対策のボールは民間に投げられます。

2) 教育情報化

教育の情報化は教材コンテンツのデジタル化を含め、知財計画2010に方針が記載されて以来10年、長年の課題でした。それが昨年末の補正予算と、今回のコロナ対策で一気に解決します。政府・与党関係者の大変な努力によるもので、高く評価します。

オンライン授業の著作権処理も無許諾とする措置が始動します。これは権利者団体SARTRASが本年度の補償金をタダで認可申請という驚きの対応をするため実現するもの。権利者の姿勢も称賛したい。ただ、来年度以降の補償金をどう処理するかは政策問題として残る。早期に解決を図ってもらいたい。

                                                       事務局資料(著者撮影)

3) eスポーツ

経産省+JeSUの検討会、座長を務めました。

現在の市場を5年後に16倍にする目標を立てました。それに向け産官学それぞれに対する施策を提言しました。特に、大学、高校などのコミュニティを作って教育研究を進めろという学に対する宿題も頂いたので、アクションを起こしています。

この方向で知財計画2020のとりまとめに向かうのですが、今回は緊急事態下での策定となります。

短期的な止血を目指す処置と、長期的なアフターコロナの戦略とを両にらみする。そして後者は2020計画策定後もしばし議論を続けることになりそうです。

 

超スマート時代のメディア成長戦略を

■超スマート時代のメディア成長戦略を

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2020/3/28(土) 8:30ー

                                               著者資料より

 規制改革会議 投資WGに呼ばれ、2年ぶりに通信・放送融合についてお話しして参りました。

 会議は非公開につき、WG後に事務局が記者向けにブリーフィングした内容を越えない範囲でメモしておきます。

前回の模様はこちらに。

「通信・放送融合2.0」

http://ichiyanakamura.blogspot.com/2018/06/20.html


                                                          著者作成資料より

前回の議論後、放送法が改正されNHK同時配信がスタートしました。大きな成果、大きな進展です。ただ、通信・放送融合という言葉が生まれて28年、NHK同時配信はBBCの12年遅れ。

通信・放送は2011年に法体系が抜本改正され、法制度はほぼ対応が終わっていて、残る宿題がNHK同時配信だったわけです。

法改正から10年、放送は地デジ以外の変化がなく、通信は成長して、NTT一社の営業利益でキー局がまるごと買収されるくらいの格差が開きました。

ネットフリックスはじめ米国の巨人が上陸し、もうすぐ中国資本も攻めてくる。同時に、AI・データ時代にさしかかる。その中での放送を考えるのが、今のミッション。

                                               著者作成資料より

1年前、放送法改正に当たって国会に呼ばれ申し上げたのが、英国の事例。BBCと民放が一丸となって、ネットフリックスやアマゾンに立ち向かう姿勢が鮮明。1.配信プラットフォーム、2.IPクラウド、3.データ利用の3施策を打っています。

                                           著者作成資料より

特に2.IPクラウドに注目。英国はハード・ソフト分離で、ハード=送信をアウトソース。コンテンツをIPベースで、クラウドに集中してソフトウェアで管理し、有線・無線全ネットワーク、全デバイスに配信する仕組み。これが通信・放送融合の進化系で、BBCはいずれ地上波を返上するとも言われています。

今回、放送法はNHKと民放の協力義務規定を置きました。これに注目します。共同プラットフォーム、IPクラウド、データ利用、この3点セットをNHKと民放の連携で作れるか。受信料2.5%、200億円弱という小さい話ではなく、数千億円規模でこうしたインフラが作れないか、が一つのポイント。

                                         著者作成資料より

放送は4兆円。通信は15兆円。融合というと、その交わり、公約数を見がちだが、公倍数をどう伸ばすか。トータルな市場を見据えた成長戦略を描くべき。放送業界への外資規制を考え直す必要があるのか。マスメディア集中排除や、NTTのメディア出資規制などの規制はなお必要なのか。あたりが新しい論点でしょう。

次に残るのが著作権。通信・放送の融合が進む中、著作権法上の通信・放送の区分がネックになっている面があります。20年ほど問題提起していますが、日本の制度がガラパゴスで、ネット流通を阻害している面が問題となります。

ぼくのプレゼンはここまでで、後は同僚の菊池尚人慶應義塾大学特任教授が著作権制度を世界基準に合わせるべきと問題提起しました。ネットフリックス、NTTぷらら、NTTドコモ、スカパーなど映像プラットフォーマーからもプレゼンがありました。

 英国や米国の放送局の対応動向について質問がありました。英国のテレビ局は政府に促されてというより、自らの判断で対米戦略を講じているが、コンテンツについては自信を持っていて、むしろネットフリックスなどを世界的な販路として活用する姿勢です。

 米国の放送局、3大ネットワークはケーブルテレビの一部門とみるのが妥当。ABC、NBC、CBSともに巨大メディア資本の傘下で、映画会社も同居していて、配信プラットフォームと対決している。日本は放送も通信も映画もバラバラで、対抗軸になるスケールが描けません。

 加えて3点コメントしました。

1)利用者からみて光であれ電波であれ、テレビであれスマホであれ、どこにいても受けられるサービス、となるとオールIP、オールクラウドに進むだろうが、そのためには事業者が連携・合併してまとまるか、大きなプレイヤーが巻き取るか。そのリアリティがあっていい。

2)米国メディアの激しい合従連衡が日本に起きても驚かない。かつて孫さんとマードックさんがテレ朝を、ライブドアがフジを、楽天がTBSを買おうとした。サイバーエージェントとテレ朝はAbemaを作った。これらを促す政策があり得るのか、は検討材料かもしれません。

3)吉本興業が参考になるでしょう。「火花」をネットフリックスの資金で制作して世界配信し、その後にNHKで放映した。従来のウィンドウ戦略と全く異なる。NTTぷららと大阪チャンネルを作り、放送コンテンツを配信している。制作プロダクションがプラットフォームやテレビ局を活用する事例です。

 総じて申し上げた趣旨は、制度課題は(著作権を除き)特になく、それよりもテレビ局を含む民間・ビジネス側の戦略やビジョンが問われているということです。米中の攻勢とテクノロジーの転換にどう立ち向かうのか。ぼくは政府にではなく、メディア企業に聞きたいです。


海賊版総合対策メニュー作り、大詰めです

■海賊版総合対策メニュー作り、大詰めです

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2019/6/19(水) 8:30ー


知財本部の海賊版タスクフォースはとりまとめができませんでしたが、その議論を踏まえつつ、政府のアクションプランである知財計画に反映させるため、検証評価企画委員会で議論を続けています。

その区切りとなる会議が持たれました。

前回の会議で、総合対策メニューが提案されました。以下の3点、ブロッキングを除き10項目。

1:できることから直ちに実施。

 著作権教育・意識啓発、正規版流通の促進、対策組織の設置、国際連携・執行の強化、検索サイト対策、広告出稿対策、フィルタリング、アクセス警告方式。

2:導入・法案提出に向けて準備。

 アクセス警告方式、リーチサイト対策、権利侵害静止画ダウンロード違法化。

3:他の取り組みの効果や被害状況等を見ながら検討。

 ブロッキング。

これについて関係者のヒアリングを実施しました。

まず集英社の鈴木常務。

正規版配信「MANGA Plus」について報告いただきました。

2019年1月、ONE PIECEなど人気作を含め170か国に日本と同時で無料広告配信。

この正規版強化が第一の対策ですよね。

日本漫画家協会から里中満智子理事長名で意見が提出されました。

まずは正規版の充実、広告出稿規制、リーチサイト規制。

違法範囲が適切に設定されたうえでのダウンロード規制の模索、アップロードの重点的な取り締まり。

うなづける内容です。

その上で「海賊版を無くそうとする、その目標が一つである以上、必ず理想的な対策方法が生まれてくると、信じて疑いません。」としています。

里中先生の肉声が響くような文章です。

意を強くする次第です。

会議に出席された赤松健さんは「ダウンロード違法化が対立構造で報じられたが、対策には感謝している」とし、リーチサイト対策はぜひお願いするが、ダウンロード違法化の規制範囲を制限すべきこと、アクセス警告方式やブロッキングには懸念があることを指摘しました。

全国消費者団体連合会も意見を提出しました。

「直ちに実施」とされた施策を着実に実施するとともに、「まずは海賊版サイトの開設者・運営者への取り締まりを徹底することが重要」。

同意します。併せて「サイバー事件の捜査を専門的に担当する国家機関の設置も検討すべき」とします。

これに対し、「通信の秘密に抵触するような施策の導入は、慎重であるべき」とし、ブロッキング導入への反対を表明するとともに、アクセス警告方式はブロッキングと同様の考え方に基づく手法であること、ダウンロード違法化は海賊版対策に必要な範囲に限定すべきことを指摘しています。

弁護士の藤原さんは、思考停止せずブロッキングの議論も続けるべきとしつつ、ダウンロード違法化に関しては、音楽・映像のダウンロード違法化を導入した経緯を踏まえつつ、「民事上にとどめる手もある」という新しい提案を示しました。

川上量生委員は、アクセス警告方式を進める政府方針に改めて異を唱え、総務省との応酬がありました。まだ整理が必要なようです。

ただ、正規版、教育、国際連携、リーチサイト対策など、おおむね方向性と優先順位は一致をみた模様です。

この件、本ラウンドはここまで。

知財計画に向け整理します。

海賊版対策、アップデート。

■海賊版対策、アップデート。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2019/4/20(土) 8:30ー

 

    内閣府知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会 配布資料より抜粋


知財本部 検証・評価・企画委員会にて海賊版対策の状況を議論しました。

政府・緊急対策の発表から1年。

タスクフォースでは意見とりまとめができなかったのですが、そこで話された事項をもとに事務局が総合対策メニューの案を提出しました。3層立てです。

1:できることから直ちに実施。

著作権教育・意識啓発、正規版流通の促進、対策組織の設置、国際連携・執行の強化、検索サイト対策、広告出稿対策、フィルタリング、アクセス警告方式。

2:導入・法案提出に向けて準備。

アクセス警告方式、リーチサイト対策、権利侵害静止画ダウンロード違法化。

3:他の取り組みの効果や被害状況等を見ながら検討

ブロッキング。

以上(ブロッキングを除く)10項目。

その上で、(ブロッキングを除く)10項目について、2019年度の前半・後半に実施する事項と担当省庁を明確にし、それを知財計画2019に反映させる、という段取りです。

リーチサイト対策と権利侵害静止画ダウンロード違法化を含む著作権法改正は、文化審議会も議論が紛糾し、自民党との調整もつかず、文化庁は法案提出を見送りました。これに関しては「国民の皆様の声を丁寧に伺いながら引き続き法案提出に向けた準備を進める」と記述されています。

これに関し竹宮恵子さんは、「大きな網かけ」の恐れを主張したのであって、法制化自体が問題なのではないとコメント。そうですね。著作権法改正に遅れが生ずるのは残念ですが、仕切り直して早急によい着地点に収めてもらいたい。

ブロッキングもダウンロード違法化も、高度な難問で、会議で意見が割れるのはまっとうなことだと考えます。行政の意向に立法が待ったをかけるのも民主主義として正統です。知財とITを巡る問題に、正規の解決手法へぼくらがまだ到達していない。しばし高速な試行錯誤を続ける、その覚悟が必要かと。

EUは昨年12月、悪質とされる海賊版のウォッチリストとして、クラウドフレア社を含む社名を公開。2月には教育目的でのデジタル利用の権利制限、プラットフォームのコンテンツ権利者からの許諾取得義務などを内容とする著作権指令案に合意。動きを高めていることを事務局が報告しました。重要です。

総務省からは、青少年インターネット環境整備法の改正に基づくフィルタリング対策について説明。ぼくが主査を務める青少年安心・安全ネットタスクフォースでも議論をしており、海賊版対策とも連携して進める予定です。また、通信業界と権利者との協力関係を築くよう働きかけていると報告がありました。

福井健策さんから、通信と出版の有志十数社が参加し、対策協議の場を立ち上げたという報告がありました。タスクフォースでヒビ割れを見せた関係を修復し前進できるか。民間の対応が求められています。この融和に汗をかく各位の努力に頭が下がります。これを総務省もバックアップするとのことです。

瀬尾太一さんは、タスクフォースでの議論が長引いたため文化庁は苦しかったと同情しつつ、出版業界がより危機感を表明し、マンガ家と出版社が連携すべきことを説きました。民間の対応へのハッパです。

アクセス警告方式は意見が割れました。マルウェア対策などの実績を踏まえ進めるべしとする林いづみさんに対し、川上量生さんは「法制度を前提としない仕組はネットの自由を侵す恐れがあるのに、ブロッキングが監視社会をもたらすと反対した総務省が推すのは不可解」と反対しました。

話は教育に及びます。宮島香澄さんは、根本は国民の意識であり、著作権教育を強化すべしと強調。堀義貴さんは、自分に被害がないものを教育するのは難しいが、音楽は不当コピーで産業規模が半減したのであり、海賊版を作る人だけでなく見る人が悪いということを明確に教育に入れるべき、としました。

コンテンツ海外流通促進機構CODA後藤代表理事から、一時的に海賊版サイトが閉鎖されたがセッションは上昇傾向に転じていて、アクセスの過半数が日本から行われているという事例や、日本の放送番組を無料で視聴できる不正ストリーミング機器の事例、5Gの危険性などを報告しました。

林さんは海賊版対策の現状を憂うべきだとします。結局、実効的な対策は進んだのか?あと何年かかるのか。議論でなく、いつまでに実効対策とするのかが重要だ、と。

同意します。合意できるところは握り、早急にアクションに移す。知財計画の策定に力を込めながらも、動ける案件は動いていきましょう。

瀬尾さんからは、タスクフォースで意見とりまとめがなされなかったことに改めて遺憾の表明がありました。制度化を進める上での正しい手順が壊れる危険があるとの表明です。

これに関しては座長への警鐘としても受け止め、まずは1年がかりの本件への答案を仕上げてまいります。 

著作権延長後の世界で、我われは何をすべきか?

■著作権延長後の世界で、我われは何をすべきか?

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2019/1/12(土) 8:30ー

                                                                     著者撮影


シンポジウム「著作権延長後の世界で、我われは何をすべきか」が青山にて開催されました。

TPP11が6ヶ国目の批准を得て2018年12月30日に発効しました。著作権保護期間が著作者の死後50年から70年に延長されました。

2006年、米国や権利者団体の要求で保護期間の延長論議が本格化して以来、さまざまな議論が重ねられました。国益を損なうとしての反対意見も強く、文科省での議論でも延長は見送られてきました。

しかし今回、TPP11発効に伴い延長となったのです。

だからといって、その事実を非難するよりも、過去の作品の保存と継承や新たな創造・ビジネス・教育・研究開発のために、「延長後の世界」でできることを、建設的に考えようという集まりです。

中山信弘・東京大学名誉教授の基調スピーチに次いで、福井健策弁護士から期間延長問題の経緯が説明されました。

・90年代に欧米が70年に延長し、他国に求めた。日本は2006年に延長論議となった。

・thinkC(著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム)が発足した。

・文化審議会でも議論となり、延長は見送られた。

・2011年、TPP協議で議論再燃となるものの、トランプ政権となり米国がTPPを離脱。

・だが政府は期間延長を内容とする法律を準備した。

・そしてTPP11の成立に伴い、延長が発効した。藤田嗣治、村岡花子などの作品が延長の対象となる。

延長に対する懸念は3点ほど共有されてきました。

1.遺族の収入増はわずかでメリットが少ない。

2.権利処理が困難となり、ビジネスや二次創作が停滞する。

3.コンテンツ輸入国たる日本は民間の負担増となる。

ぼくもこれらの指摘に同意し、延長には慎重な立場を保ってきました。逆に、この懸念を覆すほど延長することを納得させる理屈もデータも12年間目にしませんでした。その中での制度化はどういう決定メカニズムだったのか疑問です。

(アメリカにTPPに帰ってもらいたいために日本は動いたということでしょう。ぼくはTPPには賛成ですが、著作権が人身御供になるのは失策と考えます。それは国内で知財政策の優先度が低いこと、知財戦略が弱いことの現れであり、悔しさを噛み締めます。)

生貝直人東洋大学准教授は、デジタル・アーカイブの取組が期間延長によって甚大なダメージを受けると主張。保護期間の最終20年に入った絶版資料を非営利のアーカイブ機関がネット公開することを認める制度を提案しました。

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン渡辺智暁理事長は「使ってOK」と意思表示し、著作物を利用しやすくするクリエイティブ・コモンズの仕組みを推奨。絶版マンガを無料配信している漫画家の赤松健さんは、国会図書館から配信し、出版社・作者にもメリットのある分配システムを提案しました。

「法に失望した」と言う永井幸輔弁護士はブロックチェーンによる著作権管理の可能性を強調。弁護士が法よりテクノロジーでの改善策を説くのは色っぽい。ぼくもそのアプローチに強く期待します。その後も多くのスピーカーがブロックチェーンに言及しました。制度は後退しても時代は前進しています。

三菱UFJリサーチ太下義之さんによれば、90年代に公立文化施設が多数整備されたのは日米構造協議の内需拡大圧力で箱物作れとなったから。今般の延長も、外部からの働きかけによるメタ政策。逆に日本は世界に対し期間短縮を主張してよいと説きます。そうですよ。日本は自らの知財戦略を立てましょう。

慶應義塾大学田中辰雄教授が「著作権厨をなんとかしたい!」と主張。著作権論議は世間で共有されていない。権利にやかましいだけの人が多い。孤児作品の流通を高める上での弊害が「著作権厨」であると。名付けて広めて、恥ずかしめることで、影響力が下がる。うははは。さすがです。

司会の津田大介さん「議論の発端となった12年前からどう変わったのか?」。

写真家の瀬尾太一さんは、著作権が唯一絶対のものではなく、もっと普遍的なものになった。法に限界があり、権利者・利用者が一体となるスキームが重要になった。権利者を呼んでスキーム論議をしよう、と提案しました。

津田さんが「お通夜みたいなシンポになるかと思ったが」とおっしゃったとおり、みなさん前を向き、明るく建設的。ぼくもthinkCの発起から携わりましたが、この12年の運動はムダではなく、みんなが学び、賢くなり、前進したと考えます。これを後世にどう生かしていくか。

12年前ぼくは司会で、孫ひ孫に資産を残したいと主張する松本零士先生に「そば屋も資産を残したがっているがそば屋法はない。なぜクリエイターだけ法律が要るのか」と素で聞いたところ「そば屋と一緒にするな!」と先生大激怒。おいしいリアクションをいただいた思い出があります。

これでthinkCの活動は一区切り。ですが瀬尾さんご提案のとおり、次の場はスグに必要です。本件に限らず(あまり言いたかぁないが海賊版含め)著作権を巡る問題はますます多層的に発生してきます。改めてアクションを起こしましょう。

 

海賊版対策会議を「終えて」。

■海賊版対策会議を「終えて」

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/11/24(土) 8:30ー


去る10月15日。海賊版対策会議が無期限延期になりました。ひとまず座長タスク終了です。

・正規版対策、リーチサイト法制化など今できることを連携して行い成果を検証する。

・ブロッキング法制化は「まとまらなかった」。

というのが今の「状況」です。

漫画村などの被害が深刻化し、従来の課題であったブロッキングについて4月13日に政府が緊急避難の解釈を示したことが賛否の騒ぎとなりました。その効果もあってか海賊版はいったん収まりを見せ、政府は検討会議(タスクフォース)を設置、9回に及ぶ集中討議を行いました。

ブロッキングを巡っては出版・権利者が賛成、通信・ISPが反対という構図で見られました。とはいえ各業界内も濃淡があり、意見はまだら模様でした。表のテーブルでは語られない業界事情もあり、それぞれ一枚板ではありません。

政府・事務局は「法制化ありき」で強引だという不信感もありました。内実は、官邸、総務省、文科省など政府内ステイクホルダーも意見は分かれ、内部の調整には民間の調整を上回る熾烈なものがありました。

賛成・反対どちらにも不満が残る「状況」となりました。ただ、対立点や論点は明らかになりました。

この会議はブロッキングの法制化を決める場ではなく、論点を詰める場でしたので、その役割は果たしたと考えます。

ぼくはブロッキングを進める元凶と批判されたこともありますが、会議の当初に宣言したとおり、中立を貫きました。

知財本部での座長を務めているため、著作権側とのレッテルを貼るむきもありました。でもその前にぼくは通信政策屋を自負しており、両サイドを等分に重視しています。

今はコンテンツの仕事が多いものの、通信自由化に際して電気通信事業法の制度策定に携わったのが社会人のスタートでありまして、出自はそっちなのです。両サイドが「割れず」に問題解決に向かうこと。この一点に心をくだきました。

その上でブロッキングを除く10項目が「ほぼ」合意をみたのは重要な成果と考えます。

そのうち、3つを冒頭に特記しました。

長期対策は教育。ユーザのリテラシーが保たれないと、ネットに規制が入る。

中期対策は正規版。漫画村のように魅力的な正規版がほしい。

短期対策は官民連携での体制づくり。

この連携体制ができるかどうかが今の課題です。出版社・権利者と通信・ISPが連携して対策を打つスキームができるなら、まず実行し、検証する。それができないと、ブロッキング法制化に向かう口実を与えます。

対策会議は座礁、延期となったのはボールが民間に投げられたことでもあると考えます。

今回の件は「通信の秘密」と「財産権」(著作権)という憲法が保障する価値の対立であり、IT政策と知財政策の対立です。それを調整するテーマだととらえました。

しかし、その対立項は間違っていた。議論を通じてぼくが気づいたことです。問題の設定は、その両者が共存する場を、ITと知財が共栄できる領域をどう「つくる」か、とすべきだったと。

ちなみに、欧州はプライバシー保護に、米国は表現の自由に重きを置くが、日本はその荷を「通信の秘密」に負わせている面があるということが対策会議でも指摘されていました。総務省内にも、そのガラパゴスさが政策の手足を縛っているとの声があります。

「通信の秘密」を正面から広く議論できたことは意義がありました。この問題は知財本部で扱うには重すぎるという指摘もありました。

はい。IT時代の「通信の秘密」をまるごと整理する場があっていいでしょう。

そう、本件は、ITや知財を巡る政策を扱う体制をも問うています。

知財問題は知財本部+文化庁、IT問題はIT本部+総務省が主軸です。

その限界が露呈しています。

この問題は、ぼくが霞が関を去ることになった20年前の省庁再編からずっと提起していることです。

「文化省を作ろう」

http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1208/21/news124.html

今から12年前、録音録画補償金を巡って機器メーカと著作権者が対立した際、それまで蜜月でやってきたITと知財の折り合いが悪くなったことを実感しました。デジタル化がもたらすコピーと拡散の威力は、利点にも驚異にもなる。ぼくも文科省・文化審議会の議論に参加しましたが、問題の解決には至らず、今日まで尾を引いています。

そして10年前、地デジ整備に伴い導入された「ダビング10」を巡っても対立がありました。この際は、権利者(文科省)、放送局(総務省)、メーカー(経産省)の3つどもえ。舞台は総務省・情報通信審議会でした。補償金の拡大で経産大臣・文科大臣が記者会見を開いたのに、民間が納得せず破裂しました。

この際も主査・副査は村井純さんとぼくのコンビでして、今回の海賊版の構図と酷似。民間が対立する案件をバックにつく役所がさばけない歴史の繰り返しなのです。

「ダビング10にみる霞ヶ関の失墜」

https://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/03/10.html

ぼくは今回の件を通じ、われわれは失敗の歴史に学んでおらず、解決の困難さが増したと感じました。

以前に比べIT×知財に対する関心が高まり、どちらの意見も強い批判にさらされ、抜き差しならなくなる。

ではITと知財が共存共栄する地平を目指し、われわれが起こすべきアクションは何なのか。

自問自答を続けます。

 

海賊版対策会議、座長の状況報告

■海賊版対策会議、座長の状況報告

 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/11/3(土) 8:30ー


「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(座長)検討状況報告を公開しました。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2019/contents/dai1/gijisidai.html

中間報告は「まとまらなかった」のですが、それに至る検討の状況を座長として整理したものです。検討会議としての整理でも報告でもありません。

60ページを超える第9回会合の議事録が重要です。

いかに濃密な議論がなされ、いかに本件が難題で、いかに賛否双方の意見を忠実に組み上げようとしたかが表されています。

冒頭、「座長メモ」として以下のとおり記録しました。

ーーーーーーーーー

 2018年4月の犯罪対策閣僚会議・知的財産戦略本部による緊急対策の決定を受けて、同6月に、知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会の下に、「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」が設置され、権利者、インターネットサービス事業者、学識経験者、法律家などの関係者を一堂に集めて、コンテンツの流通の促進、既存の海賊版対策の検証・評価、アクセス遮断の法制度化も含めた総合的対策について、短期間に9回にわたる集中的な議論を行った。

 その結果、著作権教育・意識啓発、海賊版対策に資する出版業界・通信業界における環境整備、海賊版サイトに対する広告出稿の自主的な抑制、フィルタリングの強化等、関係者が民間主導で連携して取り組むべき対策のほか、関係省庁の連携等によるリーチサイト規制の法制化、著作権を侵害する静止画(書籍)ダウンロードの違法化の検討等、様々な側面から直ちに取り掛かることが必要な内容について、共通の認識が得られた。しかし、いわゆるブロッキングに関する法制度整備について、議論をまとめることはできなかった。議論の詳細については、別添を御覧いただきたい。(会議構成員の間では、検討会議の報告としての取りまとめには合意が得られていない。別添は第9回の議論を踏まえて座長及び事務局において修正したものである。)

 今後、権利者、インターネット関係事業者、関係省庁等が連携して、海賊版の撲滅に向けて取り組んでいくことを心より期待する。

ーーーーーーーーーーーーーー

そのうえで、以下の5項目を記しました。

ーーーーーーーーーーーーーー

○正規版流通の環境整備に加えて、海賊版サイトに対して緊急に対応することができるようにするため、著作権教育・意識啓発、海賊版対策に資する出版業界・通信業界における環境整備、海賊版サイトに対する広告出稿の自主的な抑制、フィルタリングの強化等について、関係者が民間主導で連携して直ちに取り掛かり、これを関係省庁が連携して支援する。

○さらに、関係省庁の連携も推進し、リーチサイト規制の法制化や、著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロードの違法化の検討を進め、加えて、様々な側面から必要な制度設計の検討を進める。

○我が国の重要な電子コンテンツである漫画とアニメーションの海賊版サイトの課題を迅速・適切に解決するため、本検討会議で議論された内容について、継続・発展的な議論ができる適切な環境を引き続き整備する。

○以上の措置を進め、その効果を検証すべきである。

○ブロッキングに関する法制度整備については、意見がまとまらなかった。

ーーーーーーーーーーーーーー

5項目のうち、4点目の措置推進・効果検証はぼくが入れた項目です。

これに基づき、対策会議の親会である知財本部検証評価企画委員会に報告を行い、以下のとおり申し添えました。

レポートは対策会議の議論を踏まえ修正した現時点のもので、委員の了解を取ったものではありません。そして、末尾にある60ページの第9回議事録が重要。いかに対策会議で濃密な議論がなされたか、いかに本件が難題であるか、いかに賛否双方の意見を忠実に汲み上げたかが表れています。

ブロッキング以外の対策が重要です。今できる措置を進め、効果を検証すべきと考えます。

これについては合意が得られたと認識します。

具体的には、ブロッキング以外の10項目の対策。これがまとまり、動き始めるのは大きな成果です。

これは同時に4/13の政府緊急対策の状況を脱し、次の段階に進むことを意味します。

長期的に重要なのは、第一項目の「教育」。

ユーザの情報行動がユーザの自由を守る。ユーザのリテラシーが保たれないと、ネットにブロッキングなどの規制が入り、自由が狭まることになりかねません。

 

中期的には、第二項目の「正規版」。

漫画村のように魅力的な正規版ができないものでしょうか。

短期的に最重要なのは民間の「連携」体制。

いま微妙な信頼関係のもとに体制づくりが進められようとしています。

政府にはこの努力を後押しするよう応援をいただきたい。

逆に、強引な動きで民間の連携を壊すようなことがないようお願いします。

座長メモに書いたように、「権利者、インターネット関係事業者、関係省庁等が連携して、海賊版の撲滅に向けて取り組んでいくことを心より期待する」次第であります。

以上です。

海賊版の対策会議は無期限延期、そして親会にも報告したので、この件の検討は一区切りです。

日経xTECH 浅川直輝さんの記事を紹介しておきます。

ありがたい論考です。

会議は破裂しましたが、それを批判的に検証し、今後につなげていただければと存じます。

「なぜ会議は決裂したのか、海賊版対策TFの議論を検証する」

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00138/103000174/?P=1

日経 xTECH/日経コンピュータ(2018/11/2)

その他の記事;

海賊版対策会議の両座長、まとめ案の修正版を親会に提出

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/03164/

日経 xTECH/日経コンピュータ(2018/10/30)


「ブロッキング法制化」反対派不在の報告会 「中間まとまらない」座長メモも公開

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1810/30/news101.html

ITmedia(2018/10/30)


海賊版サイト遮断「意見まとまらず」有識者報告

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20181030-OYT1T50081.html

読売新聞(2018/10/30)


海賊版対策、意見まとまらず 有識者座長が上部会合で報告

https://www.sanspo.com/geino/news/20181030/sot18103009440004-n1.html

産経新聞(2018/10/30)


海賊版サイト対策、物別れを報告 有識者座長が上部会合に

https://www.kyoto-np.co.jp/economy/article/20181030000037

京都新聞(2018/10/30)


海賊版サイト対策「ブロッキング意見まとまらず」を報告

https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/illgal-site-20181030

BuzzFeed News(2018/10/30)


「ブロッキングについてはまとまらず」混乱つづいた海賊版対策「座長メモ」の形で報告

https://www.bengo4.com/internet/n_8767/

弁護士ドットコム(2018/10/30) 

賊版対策、「とりまとまらず」。

■海賊版対策、「とりまとまらず」。

 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/10/20(土) 8:30ー

 

              著者撮影


第9回海賊版対策会議@霞が関。

前回の最終会合で中間とりまとめに至らず、時間を置いて調整した後、延長戦として組まれた会合ですが、決着に至りませんでした。

ブロッキング法制化は対立が解けず、とりまとめること自体への反対も多いため、

・両論併記の結論を削除し「まとまらなかった」と明記する

・「中間とりまとめ」とせず「状況報告」とする

と座長案を示しましたが、それも合意に至りませんでした。

ひとまず座長預かりとし、会議は無期限の延期となりました。

議論の内容は下記報道をご覧ください。


ITmedia  2018年10月15日

「ブロッキング法制化」結論出ず 3時間半の激論、政府検討会は無期限延期に

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1810/15/news131.html


日経 xTECH/日経コンピュータ 2018年10月15日

両論併記か棚上げか、ブロッキング法制化で3時間半の大激論

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/03017/?P=1


毎日新聞 2018年10月15日

海賊版サイト「ブロッキング」でまとまらず 有識者会議

https://mainichi.jp/articles/20181016/k00/00m/020/130000c


読売新聞 2018年10月15日

海賊版サイトの遮断法制化で紛糾、まとまらず

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20181015-OYT1T50128.html


産経新聞 2018年10月15日

海賊版サイト対策、中間報告を断念 接続遮断で対立

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181015-00000584-san-ent


朝日新聞 2018年10月16日

海賊版サイト対策、まとまらず 検討会議は無期限延期に

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181016-00000001-asahi-soci


NHK 2018年10月16日

海賊版サイト対策 賛否対立 中間取りまとめ断念

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181016/k10011672781000.html


弁護士ドットコム 2018年10月16日

対立激化の海賊版対策、まとまらず迷走 中間まとめ→× 報告書→× 延長も不透明

https://www.bengo4.com/internet/n_8693/


ブロッキング法制化の懸念が残る以上その他の対策にも協力しかねる、とする意見もありますが、ブロッキング以外の対策を進めることへの反対はないと見ます。

そこで、私としては、

・ブロッキング以外の10項目からなる対策に民間が連携して取り掛かる。

・リーチサイト法制化などの制度設計を進める。

・今後も海賊版対策の議論を続ける。

・今できるこの3点については合意して前進したい。

・だけどブロッキングは「まとまらない」。

そういう議論の結果を残したい。

ただ、審議結果を残すべきだという意見がある一方、残すべきでないとする意見もあります。

どのように引き取るか、考えることとします。

異例の議論、異例の事態です。私も政府の委員会でこうした事態を見たことはありません。

それが本事案の困難さと重要性を物語っていると同時に、対立する意見を本気でぶつけ合う政府委員会という場のあり方も示し得たと考えます。

どちらの立場の委員も真剣に参加を続けられ、政策の構築に多大な負担をし、貢献をされました。

このタスクフォースが、海賊版対策にとどまらず、今後のITと知財を巡るさまざまな問題に立ち向かううえで、成否両面での礎になることを希望します。

委員のみなさま、傍聴参加のみなさま、どうもおつかれさまでした。どうもありがとうございました。

海賊版対策会議、延長へ

■海賊版対策会議、延長へ

 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/9/22(土) 8:30

                著者撮影

海賊版対策会議、第8回は、報道されているとおり、「とりまとめ」はせず先送りとなりました。

日本経済新聞(2018/9/19)

海賊版サイト遮断、法制化結論先送り 有識者報告書修正案

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3552762019092018PP8000/


毎日新聞(2018/9/19)

海賊版サイト遮断 結論持ち越し 賛否併記も対立解けず

https://mainichi.jp/articles/20180920/k00/00m/020/130000c


時事ドットコムニュース(2018/9/19)

海賊版対策、中間まとめ先送り=ブロッキングで紛糾-政府有識者会議

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018091900719&g=pol


日経 xTECH/日経コンピュータ(2018/9/19) 浅川直輝さん

「ブロッキング法制化の強行につながる」、9委員が海賊版対策まとめ案に反対表明

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/02709/

弁護士ドットコム(2018/9/19)

「ブロッキング法制化、いったん見合わせて」検討会委員9人が意見書、中間まとめはまとまらず

https://www.bengo4.com/internet/n_8569/


朝日新聞(2018/9/20)

接続遮断に猛反対、報告書まとまらず 海賊版サイト対策

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13686711.html


産経新聞(2018/9/20)

サイト遮断修正案を先送り 海賊版対策、賛否併記に見直し

https://www.sankeibiz.jp/compliance/news/180920/cpd1809200500004-n1.htm


東京新聞(2018/9/20)

海賊版サイト遮断、先送り 法制化賛否、溝埋まらず

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201809/CK2018092002000134.html

事務局が提出した「第一次中間まとめ(案)」は、ブロッキングの法制化の必要性について両論併記したうえで、「合意には至っていない」としました。

しかし、それをとりまとめることついても合意に至りませんでした。

「第一次中間まとめ」としたのは、この会合で一旦のまとめをした上で、ブロッキング法制度に関しては継続検討し、二次の中間まとめを10月初旬に行うとするひとまずの調停案でしたが、一次まとめも無理だったということです。

まず、教育啓発、正規版流通、対策組織の3項目を「基盤的な取組」と位置づけ、リーチサイト、侵害ダウンロード違法化、国際執行強化、検索対策、広告対策、フィルタリング、アクセス警告というブロッキング以外の計10項目については記載がほぼまとまりました。

ブロッキングに関する記述に関しても、多くの意見が飛び交い、修文して対応できる部分は全て書き込むことで調整を図りました。

しかし、委員9名連名の反対意見書に関しては折り合うことができませんでした。

それは以下の3点セットです。

1)ブロッキングを可能にする法律には強い憲法違反の疑いがあること

2)他の手段の実効性を検証するまで法制化はいったん見合わせるべきであることの2点を明記

3)具体的な法制度の内容部分は削除しまたは参考情報に留めること

このうち、1)憲法違反の疑い、3)参考情報落としについては、対応策があるとぼくは感じましたが、ポイントは2)の「法制化見合わせ」の取扱です。

法制化をするかどうかの政策判断は政府や立法府に委ねられ、このTFの権能を超えますが、だからこそ発生する危惧だと考えます。

ブロッキングの位置づけは、事務局案では下記の記述となっています。

「これまで掲げた対策を、コスト・時間等も勘案しながら実施した上で、なお十分な効果を挙げられない場合の最終手段として、アクセス制限(ブロッキング)が必要な場合があり得る。」

「海賊版サイト運営者に対する削除要請、刑事告訴などの手段がとられることが適切であり、アクセス制限(ブロッキング)は、これらの手段が現実に試みられたかまたはこれらの手段が奏功しないと合理的に認められる場合に限って最終的な手段として位置付けられる」

このとおり、ブロッキングは他の対策(10項目)を実施した上で取られるものであり、その検証・評価が必要となります。時間も必要です。一方、法制化の「検討」は継続して行うべきという意見も提出されています。このあたりの折り合いをつける知恵がないものかと考えます。

とりまとめなくてもよい、という意見もありましたが、ぼくが「とりまとめ」を行いたいのは、4/13の緊急対策に一旦の区切りをつけたいからです。あの政府決定から次のステージに移ったということを明確にするには、ブロッキング以外の措置だけでも対策として一致させ、アクションに移る必要があると考えます。合意できる10項目を執行する体制を組みたい。

しばし会議は延長されますが、政府から託された時間は10月上旬。

割れたまままとめられず、4/13状態が続き、政府が引き取る。

その事態を避けるべく、もうしばらく汗をかきます。


海賊版対策:中間まとめの議論、続きます

■海賊版対策:中間まとめの議論、続きます

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/9/15(土) 12:00ー

著者撮影

海賊版対策会議、第7回。

事務局から中間まとめ案が提出され議論を行いました。

中間まとめ案は、

第1章 インターネット上の海賊版サイトによる権利侵害の現状

第2章 インターネット上の海賊版サイトに対する総合対策

第3章 アクセス制限(ブロッキング)に係る法制度整備について

という骨組みで、第2章の総合対策として、

1.著作権教育・意識啓発

2.協力体制の構築

3.正規版の流通促進

4.海賊版サイトの検索結果からの削除・表示抑制

5.海賊版サイトへの広告出稿の抑制

6.国際連携・国際執行の強化

7.リーチサイト対策

8.アクセス制限に係る措置

9.著作権を侵害する静止画のダウンロードの違法化の検討

の9項目を掲げました。

そして「アクセス制限(ブロッキング)に係る法制度整備の必要性については多様な意見があり、本検討会議において合意を見ることはできなかった」と記しました。

これを巡り、意見の応酬となりました。

その模様を描く浅川直輝さんの速報です。

「「ブロッキングの章は削除すべき」、海賊版対策会合第7回はまとめ案巡り批判の応酬」

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/02651/?P=1

日経 xTECH/日経コンピュータ(2018/09/13)

弁護士ドットコムでも報じられています。

「宍戸教授「ブロッキングの議論が不十分だと明記すべき」 中間まとめ案に反発続出、平行線のまま最終局面に」

https://www.bengo4.com/internet/n_8545/

弁護士ドットコムNews(2018/09/13)

日本経済新聞(2018/09/13)

「海賊版サイト遮断の法制化、両論併記案を議論」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3534987013092018TJ3000/

朝日新聞(2018/09/13)

「海賊版サイト遮断、合意至らず 国の会議で法制化へ賛否」

https://digital.asahi.com/articles/ASL9F4HCHL9FUCLV00D.html

SankeiBiz(2018/9/14)

「接続遮断法制化に異論続出 海賊版サイト、対策再検討」

https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180914/mca1809140613008-n1.htm

議論の具体的な内容は浅川さんらの記事に譲りますが、取り分け、ブロッキング法制化に関する憲法を巡る議論は深まりを見せました。そして、まだ整理・調整を要することが共有されました。3章の記述を削除すべきという意見もある一方、「ここでの議論は社会の共有財産だ」という指摘もありました。

民間による協力体制の構築も重要なテーマとなりました。多くの委員がその必要性を強調する一方、ISPから出版側への反発も見られました。これに対し、川上委員がネット側の立場から、インターネットは違法配信でユーザを獲得してきたことに自覚的であるべきと発言したのには目を見開きました。

こうしたやりとりと並行して、海賊版へのブロッキング等を規定しながら成立に至らなかった米SOPA法案やフランスでのブロッキング制度の説明があったほか、検索エンジン対策や国際連携の重要性が強調されました。また、違法ダウンロード違法化は、映像・音楽の法制化の際にも多難を極めたことも指摘されました。

最後にぼくも発言機会をいただきました。

「4/13の政府措置に賛否の声ある中このタスクフォースが設置されました。その成果は2つあると考えます。

 第一に、このタスクフォースができたこと。賛成・反対の両者、ステイクホルダーの専門家のかたがたが一つのテーブルについて問題に向き合えた。今後対策を実施する上で重要な座組だと考えます。

 第二に、総合対策の打つことのコンセンサスができそうなこと。コンセンサスが得られない事項は両論をきちんと書き込む。書きぶりは工夫しつつも、なんとか了解にたどりつきたい。その光を見ています。

 その上で、とりまとめを行うとしても2つのポイントがあると思います。

1.これで当面、大丈夫と言えるか。

 最悪の事態は4/13政府決定を繰り返すことだと思います。ブロッキング法制化をしないとしても、この総合対策を実施することによって展望が得られるというものに近づけたい。

2.今後の対策に向かう民間の体制は整うのか。

 ブロッキング以外の対策は関係者・ステイクホルダーの協力が前提です。このタスクフォースが対立を深めたという指摘もあるが、それは座長の不徳の致すところです。伏して、是非、協力体制を組んでもらいたい。

 知財とITの対立を調整する、という論の建て方は間違いだったのかもしれません。知財とITの求める理念・自由が共存する場を探す、作る、と言うべきだったのかもしれません。それはこれから作ればいい。

 敵は海賊版。その対策に向けて協力する。それだけは確保したい。

 この問題は、単純な海賊版への対策というより、知財保護と通信の秘密という、憲法の要請する理念が情報社会において共存できるよう知恵を絞ったものである。

 マンガ・アニメ大国たる日本が、ITという技術の落とし子としての海賊版サイトに解決策を講じる総合モデルを検討した。

 といった、この大変なタスクフォースのみなさんのご苦労がどういう位置づけであったのかを記しておきたいと思います。

 いま何合目にいるのか視界が定かではありませんが、山を登りきりたいと思います。」


海賊版対策:中間まとめの議論が始まりました。

■海賊版対策:中間まとめの議論が始まりました。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/9/1(土) 8:30ー

 

                著者撮影


海賊版対策会議@霞が関、第6回。

事務局から「中間まとめ骨子(案)」が示されるとともに、各委員から意見ペーパーが提出され、それに基づく議論となりました。

中間まとめ骨子(案)は、海賊版による権利侵害の現状を記述した上で、「総合対策」として、9項目を挙げました。

1)正規版の流通促進

2)海賊版サイトの検索結果からの削除・表示抑制

3)著作権教育・意識啓発

4)海賊版サイトへの広告出稿抑制

5)侵害コンテンツの検知システムの確立

6)国際連携・国際執行の強化

7)リーチサイト規制

8)アクセス制限に係る措置

9)その他の今後の課題

弁護士ドットコムに速報があります。

「海賊版サイト対策「中間まとめ骨子案」公表…「ブロッキング」の論点整理は続行」

https://www.bengo4.com/internet/n_8452/

(出典元:弁護士ドットコムニュース 2018/08/30)

8)アクセス制限では、アクセス警告方式の実施検討、フィルタリングの推進とともにブロッキングを挙げ、ブロッキングについてはP(検討中)とし、論点整理を深める扱いとしています。また、今後の課題として違法静止画ダウンロードの扱いなどを挙げています。

議論はアクセス警告方式とブロッキングに集中しました。アクセス警告方式は東大・宍戸さんが提唱した、契約約款に基づいて通信の秘密に関する合意を得るフィルタリングとブロッキングの中間案というもので、その条件、実効性、限界などが論じられました。建設的な案と受け止められています。

ブロッキングに関しては、またも賛成・反対両意見が交錯しました。憲法における通信の秘密と財産権の比較衡量などの法律論、OP53Bの妥当性などの技術論、前回の総務省発言などに現れる政策論など多岐にわたりました。

42か国がブロッキングを導入しているという事実の認定やアメリカのフォローアップをしていないことの妥当性を巡る指摘、ブロッキングありきの議論をしているという批判なども見られました。

一方、欧米で普及しているアドブロック・アドオン・アプリによる対策が提案されたほか、対策を運用するための民間による組織、場、チャンネルを作るべきという意見も複数ありました。対策として検討に足る提案です。

このやりとりについては浅川直輝さんが詳しく記事にしてくださっているので譲ります。

「中間まとめ骨子案めぐり激論、海賊版対策検討会議第6回」

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/02478/?P=1

(出典元:日経 xTECH/日経コンピュータ 2018/08/30)

ぼくが申し上げたこと(うろ覚えですが)。

「通信の秘密と著作権の保護をどう調和させるか。それを前文に書き込みたい。マンガ・アニメ大国の日本が海賊版にこう取り組むというモデルを海外に提示したい。日本のスタンスは国際的にみても妥当、というレポートにしたい。

 ブロッキング法制度に対しては、条件つきでやるべき、条件つきでありえる、無条件にあり得ない、という意見がある。全ての意見を尊重する。

 当初から、ブロッキングありきの議論にはしないがブロッキングを排除しないと申し上げている。もしも制度を整備するとなるとという条件下での論点を詰める。

 この場合、憲法に照らし合憲か、技術的に可能・妥当か、政策として採り得るか、という点を掘り下げる必要があると感じた。」

遠隔参加の村井座長は、「日本にとって貴重なマンガ・アニメが世界に向け発展するためにネット上の海賊版にどう対応するかが目的であり、ISPとコンテンツとが力を合わせなければ解けない。優先度や即効性などを併せて考える。」と締めました。

以上、今回明らかになったのは、まだ議論は続く、ということです。

 

海賊版対策:ブロッキングの論点整理と新提案

■海賊版対策:ブロッキングの論点整理と新提案

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/8/29(水) 8:30ー

            著者撮影


海賊版対策会議@霞が関、第5回。

法的・技術面の専門的な議論は深まる一方、未だ拡散も続けていて、対立も解けず、2時間半に延長したものの、それでも全く時間は足りず、なかなかに緊張する座長の職であります。

Googleの削除対策、広告対策、リーチサイト制度化、静止画ダウンロード違法化、普及啓発、そしてフィルタリング対策について、政府・委員・参考人から詳しい報告がありました。

それぞれ難問ではあるのですが、総合対策を彩る項目としてはかなり出揃ったと考えます。

賛否が分かれるブロッキングについては事務局がこれまでの議論を論点整理しました。

・諸外国の制度

・憲法上の通信の秘密、表現の自由、検閲

・実現するための手法

・手続

・アクセスプロバイダの位置づけ

・要件

・費用負担

などです。

これを煮詰めて総合対策への盛り込み方を練ることになります。

関連して、既にブロッキングが行われている「児童ポルノ」についての報告もありました。3月時点で17サイトがDNSブロッキングの対象となっているとのこと。これは制度化がなされず、緊急避難として実行されているもので、海賊版対策の重要・有力なモデルです。

併せて村瀬弁護士から海賊版の現況について報告がありました。漫画村以外の海賊版が大きくなりつつあること、リーチサイトが強力になってきていることに加え、海外でブロッキング対象サイトの使用が7割方減少している効果について共有されました。

川上委員からはブロッキングが有効であるとした上で、OP53Bの採用やPublic DNSサーバの対応等についての提案がありました。これに関してはISP側からの反論もあり、対立項として議論は続きます。

一方、東大・宍戸さんから「アクセス警告方式」という新提案があり、検討することとなりました。

「ブロッキングに代わる「海賊版対策」の切り札? 東大・宍戸教授「アクセス警告方式」提案」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180825-00008424-bengocom-soci

フィルタリング・ブロッキングとは異なる第3の対策として、約款に基づいてアクセス警告表示を行うもので、静止画ダウンロード違法化や、実行のための団体設立など課題も伴いますが、同意に基づく措置として制度化せずに導入できる提案。検討の俎上に乗ります。

森委員から「ISPは臨時的かつ緊急的な措置としてのブロッキングを実施すべきではないことを本検討会で決議する」との提案がなされました。4/13政府決定に関するものです。これは以前も各委員の意見をテイクノートし次に進む整理をしたのですが、改めて同様の収め方をしました。

4/13決定に関しぼくも意見はあるけれど、決議はこの会議の権能ではないことや海賊版の動きがなお不穏ということに加え、座長としては最終的に全会一致の報告をまとめたいところ、本件はブロッキング制度化と同様、意見が割れるので、いま割るのはどうかという思いもあります。

今回のもう一つのハイライト。

「サイト遮断で「監視進む」 総務省職員の発言に会議混乱」

https://digital.asahi.com/articles/ASL8S7FXML8SUCVL028.html?jumpUrl=http%253A%252F%252Fdigital.asahi.com%252Fsp%252Farticles%252FASL8S7FXML8SUCVL028.html%253F_requesturl%253Dsp%252Farticles%252FASL8S7FXML8SUCVL028.html%2526amp%253Brm%253D475

政府内にもさまざまな考え、立場があり、その一部が吐露されるのは、本件の難しさを共有する上で有益な面もあります。総合対策を作るには、委員・民間だけでなく政府部内の調整が難しいと考えておりまして、座長の仕事はそこかなぁとも考えているところです。

この総務省の意見表明に関し、時間があればぼくは質問をしたいところでした。

まず「ネットの利用の監視のほうへすすむのか、自由なほうへすすむのか」とする総務省には、では児童ポルノのブロッキングは監視にすすんだと見ているのか、その整理は総務省内でクリアになっているのか。

もう一つは全委員に聞きたいことです。

日本ではことほどさように通信の秘密が憲法問題となり議論が高まっているが、ブロッキングを実行している海外40数カ国では通信の秘密の議論は「ない」とのこと。

これはなぜなのか。

日本「だけが」ブロッキングが通信の秘密との整理を強く求めるのは、法体系の問題か、歴史的経緯か、国家観か、文化的背景か、何によるものなのか。

日本として政策を決めるに当たり、海外とは異なる特殊事情があるのか。

それを整理したいです。

特にこれは通信の秘密の制度を預かる総務省や、グローバルを旨とする技術系のかたがたに、日本の制度が特殊でしかるべき理由を整理いただけると、議論の集約にも役立つと考える次第です。

総務省の意見表明は今更こうしたことを考えさせるトリガーになったかなと思います。

ところでぼくが「全会一致でとりまとめたい」と発言したことに対し、会議後「秘策があるのですね」と何人かに問われました。

ありません。

努力の意思表明です。


海賊版対策は総合パッケージ作りへ

■海賊版対策は総合パッケージ作りへ

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/7/28(土) 8:30ー

著者撮影

海賊版対策会議、第4回が開催されました。ブロッキングに関する英独の運用、憲法や著作権法上の論点、技術的論点、そしてフィルタリングなどブロッキング以外の措置などが審議されました。

日経xTECH浅川直輝さんがその模様を報じています。

「海賊版対策タスクフォースの第4回会合、「ブロッキングは有効か」論争はいったん収束」

(出典元:日経 xTECH/日経コンピュータ 2018/07/25)

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/news/18/02114/?n_cid=nbpnxt_twcm_it

ここに書かれていないことを中心にメモします。

(なおぼくのメモは残った記憶を頼りとする細かいニュアンスなどが不正確なもので、お叱りを受けることもあるのですが、それでもぼくの立場で発信・共有することに意味があろうと考えて書きます。正しいところは後日公開される議事録でお確かめください。)

まず明治大学・今村哲也さんがイギリスのブロッキングについて説明しました。著作権法に基づく裁判所の命令による仕組です。ブロッキングは効果薄との批判に対し、「多くの利用者にとって専門知識が必要で、迂回はユーザの負担にもなる。少数のアクセスが妨げられるだけでも命令は正当」と判事が断じたとのこと。

続いて早稲田大学・上野達弘さんからドイツの事例報告。著作権法の妨害者責任に基づく措置です。最高裁は、権利者が努力を尽くした場合に限定しつつ、技術的に回避可能であっても、プロッキング命令はあり得ると整理。本年2月にはミュンヘン地裁が初めてブロッキング請求を認容する判断を下したとのことです。

前回の会議では、ブロッキングの効果がない/薄いことと、制度導入の是非について、激しい応酬がありましたが、その点、英独ではそれでもプロッキングありという判断を裁判所が下しているんですね。

上野さんは、日本では侵害幇助者(ここではプロバイダ)への差止請求の位置が明確でなく、認められないという説が強い一方、現行法でも認められるという考えもあり、裁判所が判断すればブロッキングはOKとなり得ると整理しました。踏み込んだ解説です。

一橋大学・山本和彦さんは、ブロッキング請求はプロバイダを被告人とする民事訴訟が基本となると説きます。その際、サイト運営者、ユーザ、オーバーブロッキング主催者の手続保障が論点となるとのことです。

東京大学・宍戸常寿さんは憲法の観点からブロッキングの是非を問い、フィルタリングの実効性の検討が不十分だとしました。目的を「カジュアルユーザーによるアクセスを困難にすること」とすれば効果は見込めるとしても、対象サイトは真に必要な範囲に限定し、その基準も明確にすべきと主張しました。

上野さんが立法上の論点を挙げました。著作権のほか、名誉毀損、プライバシー侵害、覚醒剤取締法、銃刀法などどのような理由でどのようなサイトを対象とするか。悪質なサイトをどこまで限定するか。プロバイダに課される条件は何か。手続きは裁判所の命令か行政命令か。コスト負担をどうするか。法整備に向けた具体的な問いかけです。

ここまではブロッキングの深掘りでしたが、JPNIC前村さんは「教育、フィルタリング、検索抑止、ドメイン停止、DNS応答停止などなどさまざまなアクセス遮断の方法がある」と指摘。そのとおりです。この会議のアウトプットとしては、それら全ての方策を総合的なパッケージとして打ち出したいです。

講談社・野間さんも「文化庁のリーチサイト規制法制化の加速、違法電子出版ダウンロードの違法化を求める」とし、ブロッキング以外の対策の必要性を強調しました。海賊版へアクセスできなくする方法を総合的に講ずるという趣旨ですね。

福井弁護士は、フィルタリングの効果について正しつつ、フィルタリングに限界があるのはブロッキングに限界があるのと同じで、とはいえフィルタリングは青少年に一定の効果があるので、ヒアリング含め議論すべきとしました。

ここでカドカワ川上さんが「対象制限に賛成。私は中村座長から唯一のブロッキング推進派とのレッテルを貼られているが、私は慎重派。中村座長はブロッキングをワンオブゼムだとし、村井座長はブロッキングだけだとダダ漏れだと言うが、私はブロッキングは「最後の手段」と思っている」と発言。慎重な姿勢を示しました。

これに対し、欠席した林いづみ弁護士がペーパーを提出、アクセス制限措置を認めることが必要とし、対象を著作権侵害が明白な海外サイトに特定しつつ裁判所に措置を求める権利を新設するという案を示しました。これは今のところ最も明確で具体的な推進意見だと思います。

ブロッキングに関する技術的手法(OP53B)に関する議論もありましたが、これは浅川さんの記事に譲ります。

宍戸さんが、本件は情報社会における流通と保護のバランスを問うもので、これを解決する場や手続きが求められる、とまとめました。ぼくも本件はIT政策と知財政策のバッティングであり、今後ますます増加する政策領域を解く試金石ととらえています。

ここまでの議論により、現在の対策の評価、海外の制度、法的な論点を共有し、まだまだ掘り下げることはありますが、論点のネタはテーブルの上に揃ったと考えます。総合対策パッケージを作るというのもコンセンサスだと考えます。どのような方向性をもたせられるか、いよいよ知恵出しです。


海賊版対策、議論が核心に入ってきました。

■海賊版対策、議論が核心に入ってきました。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/7/21(土) 8:30ー

内閣府知的財産戦略本部「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」資料より抜粋


海賊版対策検討会議第3回@霞が関。

アジェンダは、正規版流通とこれまでの対策の検証、諸外国の対策についての2点です。

訴訟、警察の取締り、削除要請、ドメイン停止要請、広告対策、フィルタリング、教育・啓発など既存の取組状況がまず共有されました。

4/13の政府・緊急対策決定後の動きとしては、漫画村・Anitubeが閉鎖され、広告出稿抑止の取組も本格化して正規版の売上が回復していること。人々の海賊版への意識が向上し、他の海賊版サイトへのアクセスも激減していることが報告されました。対策の効果はあったと言ってよいでしょう。

ドワンゴが行ったアンケートでは、法制度の整備によるアクセス遮断(ブロッキング)が必要と考える62%、考えない20%。ネット民でもブロッキング肯定派が多数という結果です。これをどう受け止めるか。

同アンケートでは、アクセス遮断以外の対策として、広告対策61%、検索表示削除49%、正規版強化47%。重層的な手を打つ総合対策が必要ということでしょうが、これと比べてもブロッキング肯定の意見の多さが目を引きます。

アニメ海賊版対策に力を入れてきたテレビ東京川崎さんは、元来マンガは有料でTVアニメは無料、モデルが違うと指摘したことに関し、講談社野間さんは、出版社は今Amazon型のつど課金、有料サブスクリプション、無料広告の3モデルを使い分けていると解説しました。

野間さんによれば、マンガはデジタルの売上が4割、点数も紙よりうんと多く、正規版は機能しているとのこと。講談社・集英社・小学館ら11社が出資した出版デジタル機構も順調でエグジットしたとのこと。

ネット資源を管理するJPNICが49か国向けアンケートを行ったところ、ブロッキングを71%が導入し、うち著作権侵害を対象とするのは45%の回答。ポルノ37%、犯罪・薬物33%より多いんですね。

文化庁が米英仏独加などの制度について報告。海賊版コンテンツの削除は全ての国に法的措置がある一方、ブロッキングは欧州には制度があるが米・加にはない。米にはドメイン差押えや個人のネット接続禁止があるが英仏独加にはない。制度はさまざまという状況です。

オーストラリアの制度について、慶應・奥邨さんが報告。著作権法にブロッキング制度を設け、裁判所による差止命令で発令する。国外のサイトのみを対象とし、ブロッキングのコスト負担は裁判所が決める仕組み。日本で著作権法で導入する場合の論点を提示。議論が核心に入ってきました。

韓国は獨協大学の張さんが報告。文化体育観光部が放送通信委員会に要求して、情報通信網法に基づいて接続遮断できる制度。日本では文化庁が総務省に要求し、電気通信事業法で措置するイメージですね。韓国では違憲訴訟が起きたが退けられたとのことです。

さて、議論です。気温35度の中、会議室のエアコンが故障していることもあり、ヒートアップしました。

まず川上量生さんが、インターネットの専門家はブロッキングの効果がないと考えているのか?と問うのに対し、前村さん立石さん村井純さんが効果ナシないし効果薄と答え、効果があるとする見方と対立しました。

続いて、森亮二さんから4/13緊急対策は現時点では当てはまらないことを決議すべきと提起がありました。そうせねばNTTの現場が困っているとの意見もありました。一方、悪質サイトは3つ以外にも16ほどある、今その旗を下ろす状況にない、啓蒙の効果があり今も重要という意見もありました。これも対立です。

ぼくも4/13当時と状況が変わったと認識しますが、政府が決定した措置であり、解釈を変更するには再度官邸での会合が必要。今それだけを行うのは建設的ではない。この会議は議決機関ではなく、決を取っても効力がない。なので委員みなさんの認識を聞いて、議事録に残すことで引き取りました。

東大・宍戸さんは、フィルタリングの効果の検証、違法ダウンロードを違法化した上での教育の強化など多層的な議論と措置を求めました。村井純共同座長も、ゴールはコンテンツの健全な発展であり、ブロッキングだけではなく総合的な対策の重要性を強調しました。賛成です。

4/13ブロッキングの政府決定は、それ自体によって状況を変えました。そして、それにより、ブロッキングがテーマのワンオブゼムになりました。神経質で重要なテーマではありますが、それだけに引っ張られず、総合的で本格的な枠組みを作ることがミッションです。

議論はいよいよ熱くなってまいります。


リアリズムの田中角栄

 ■リアリズムの田中角栄 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/9/7(土) 11:30ー  早野透著「田中角栄」を読んで、改めて田中政治って何だったのかなと考えています。  毀誉褒貶のチャンピオン。金権政治、官僚操縦、数々の議員立法を通した政策マン。評価はさ...