2020/11/05

海賊版サイト対策はいまーブロッキング以外の対策

■海賊版サイト対策はいまーブロッキング以外の対策

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/6/30(土) 8:30ー

      内閣府知的財産戦略本部「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」資料より抜粋

先週に続き、海賊版対策会議第2回が開催されました。

マンガが中心話題なのですが、コンテンツ分野でもジャンルにより市場構造はさまざま。2016年のマンガは電子が35%。アニメは配信が15%、動画は4%。音楽は配信が8%で、なんとライブが24%に高まっています。そんな中、電子の海賊版にどう対応するかがテーマ。

 

   内閣府知的財産戦略本部「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」資料を元に作成

正規版流通の取組、削除要請や訴訟、海外当局との協議、広告対策などブロッキング以外の対策について状況を共有しました。

出版社の努力不足を批判する声もありますが、ぼくは被害者がよくがんばっているという印象です。

出版9団体で構成する出版広報センターが海賊版WGを3月に発足、正規版マークとホワイトリストを作成。出版各社は海賊版への削除要請、広告出稿停止要請、警察との連携などを進めているとのことです。

CODA(コンテンツ海外流通促進機構)のサイト削除要請による削除率はこの1年で91%。しかし応じないサイトに関し、中国政府やブラジルの警察と協議するがラチがあかない状況が語られました。

広告3団体も違法・不当サイト対策をCODAと連携して進めています。ただ、ネット広告市場に多数の事業者が参入し、運用型広告が拡大している状況で、実効性のある対策を打つのもなかなか大変です。

中高生への啓発法として、出版業界は人気キャラによるキャンペーンを張る準備をしているそうです。GoogleやLINEとの連携も進めているとか。一方、上野委員は、映像・音楽と違い出版は閲覧が適法だから、キャンペーンは効果薄ではとの疑問を呈しました。ダウンロード閲覧違法化に話が広がるかもしれません。

長田委員・瀬尾委員は、漫画村のような正規版をいかに作るのか、という大きな問いを示唆しました。知財本部・住田局長も、出版業界横断で作るべきではと示唆しました。ぼくもそれが第一テーマだと思います。音楽・映像に比べ、出版の対応は遅れています。それも共有すべき。

さて、この会議で面白かったのは、ドラゴン桜やインベスターZの作者、三田紀房さんの意見表明。まず、週刊の連載は月250万円のコストに対し収入は同額で、単行本で稼ぐというマンガ家のビジネスモデルを明らかにし、それが電子書籍で構造が劇的に改善したことを教えてくれました。ネットは福音であると。

三田さんは、今後、国際競争が激化し、中国の攻勢が強まるとしたうえで、日本の戦略を問いました。ゴルフもサッカーも英国産だが、ゴルフは米国に覇権が移った。サッカーも世界的になったがプレミアリーグなど英国が存在感を保つ。マンガもサッカーのようなモデルを考えよう、と。

ただ、マンガは「読む力」が必要だと三田さんは言います。読み方=ルールを広げることが大切だと。京都・菊乃井の村田さんが、和食の海外展開にはダシや旨味を味わう舌を鍛えることが大事で、パリに舌を根づかせるのに20年かかったと話していたのを思い出します。

なぜマンガは音楽・映像のような動きにならなかったのかという問いに三田さんは「マンガは右肩上がりで儲かってきたので、著作権に関心がなかった」と言明。マンガ家が権利を管理するのは難しいが、エージェントビジネスがマンガ界にも起こっているとのこと。コルクのことですね。

会議を通じ、音楽・映像の分野では取組が先行しているので、それも参考に出版も対策を進める必要性を感じました。正規版の取組も大事だし、普及啓発を総務省の青少年ネット対策と連動して進めることも重要。これらを含む総合パッケージ対策が求められます。よろしく。


海賊版対策会議、スタート。

■海賊版対策会議、スタート。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/6/23(土) 8:30ー

内閣府知的財産戦略本部「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」資料より抜粋

政府・海賊版サイト対策会議が始まりました。

その第一回会合が昨日、霞が関で開催されました。

ぼくは共同座長を務めます。

4月13日に政府が緊急対策を決定しました。ブロッキングを「緊急避難」と解釈する一方、ISPには実行を要請しないものでしたが、批判が巻き起こり、賑やかな議論となりました。

「海賊版サイトブロッキングの政府方針が出ました。」

https://ichiyanakamura-thatisallfortoday.blogspot.com/2020/11/blog-post_96.html

その後、事態は変化し、漫画村など名指しした3サイトは見られない状態になっています。また、NTTグループがブロッキングの方針を発表しましたが、実行はしていません。

ひとまず沈静化し、膠着状態にあるということです。

4月の対策は「政府がメッセージを発すること」が第一目的でした。

海賊版サイト対策は知財委員会で2年以上にわたり論議され、リーチサイト対策や広告対策などが各省で取られてきて、昨年来ブロッキングが残る課題でした。

被害の急激な悪化を受け、アクションを起こすことが求められていました。動かなければ不作為のそしりを免れない状況でした。

それを政府が引き取り、問題に対する政府の姿勢を示すことが主目的で、総務・経産・文科・法務省、警察庁らが合意した方針です。

その内容は、緊急避難という法解釈と、今後の法整備方針。

政府として示し得る措置を取ったものであり、民間への要請も指導もしないと政府は明言しました。ぼくはよくここでとどめたと見ています。

決定・メッセージと前後して、検索ブロックや広告配信の停止などブロッキング以外の動きも広がりました。そして問題の3サイトは見られない状態となりました。政府決定が何らか作用した面もあるでしょう。結果として事態は収まっています。「止血」措置は、ひとまず効いたのでしょう。

カドカワ川上量生さんは、漫画村などへの対策はそれまで無効だったが、4月13日決定により見られなくなったこと、広告対策もようやく動くようになったこと、結果としてコミックの売上が改善していることを指摘しています。

対策に対する批判も多いのですが、では政府はどうすべきだったのか。この決定を上回る正解をぼくは知りません。あの決定がなければ今も海賊版サイトは生きていたのではないか、国民の問題意識もさほど高まっていなかったのではないかと考えます。

そこでより重要なのは次のアクション。対策会議での法制度などの検討です。ここからが本番です。

会議のメンバーには、ぼくと共同での座長として、インターネットのお父さん村井純慶應義塾大学教授が参加。憲法からは東京大学宍戸常寿教授、著作権は早稲田大学上野達弘教授、民訴法は一橋大学山本和彦教授。福井健策・森亮二・林いづみ弁護士。インターネット事業者とコンテンツ事業者の各代表が加わります。

村井さんや宍戸さんのように前回の政府措置に反対されたかたがたが入り、これ以上ない布陣で正面から問題に取り組みます。

以下の3つの論点があると考えます。

1. 正規版の整備

 マンガ界などコンテンツ側は漫画村のような魅力的なプラットフォームをどうすれば作れるのか。音楽や映像の業界がネット時代のビジネスモデル構築に苦労してきたのに比べ、出版の対応は遅れています。法制度論以前に、それがまず大事だと考えます。

2. 現状の評価と対策

 3サイトが死んでいる現状では「緊急避難」の要件を満たしそうにありません。まず、場面が変わった、「ブロッキングはナシ」という状況確認が必要と考えます。

 そのうえで、現行法のもとで取り得る・取るべき措置を整理したい。広告対策、削除要請、刑事手続、差止請求、フィルタリングなど。

3. 法制度 

 ブロッキングその他の法制度を設ける必要性・可能性はあるのか。もし行う場合、著作権法、電気通信事業法などどの法律で扱うのか。リーチサイト対策や違法静止画ダウンロードの違法化はどうか。

 

              内閣府知的財産戦略本部「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」資料より抜粋


昨日の会合は、議論が本格化する嵐の前の賑やかさ。海賊版対策の重要性や総合対策の必要性はコンセンサスであるものの、ブロッキングに対しては賛否が飛び交いました。ブロッキングありきの議論ではないが、ブロッキング論議を排除するものではない。対策を掘り下げよう、という整理を致しました。

川上さんが4月13日の晩にニコニコアンケートを8万9千人に取ったところ、ブロッキング措置に賛成が53%で反対は19%、ネットユーザでもそういう問題意識、というデータを示しました。通信の秘密うんぬんはかなりプロの議論であり、国民全体にどういうメッセージを発するかも重要ポイントと考えます。

なお、今回、海賊版対策をきっかけに議論が盛り上がったことは、IT・知財問題を考える絶好の機会と考えます。知財本部発足から16年、これほど注目されたことはなかったかもしれません。

これをより建設的な議論に結びつけたい。

政府はIT政策と知財政策をどうすれば融合できるのか。現在のコンテンツ政策のほぼ全てがIT政策と関わります。今回の問題は著作権の保護と通信の秘密という、その本丸の調整問題です。今後もそのような案件は増えます。

この問題はその試金石。実りある議論にしたく存じます。


海賊版サイトブロッキングの政府方針が出ました。

■海賊版サイトブロッキングの政府方針が出ました。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/4/14(土) 8:30ー

昨日、ネット海賊版対策に関する知財本部・犯罪対策閣僚会議が官邸で開催されました。

首相以下、全閣僚と論議し、サイトブロッキングに関する政府方針が決定されました。

ぼくも出席しました。

方針は以下のとおり。

1.法制度を整備する。次期通常国会を目指しブロッキングの法的根拠となる制度を整備する。リーチサイト対策も進める。

2.それまでの緊急避難としてのブロッキングについて、政府は「違法性が阻却される」との解釈を示す。

3.これを受けてISP+コンテンツら民間の対応を進めるタスクフォースを作る。

ブロッキングについて政府は法的リスクを負い、ゴーサインを出す。

ただし、民間に対しては要請も行政指導もしない。

ISP+コンテンツら民間側で対応を決める。その場を政府が用意する。

同時並行で法制度を整備する。

--これが決定です。いま政府の取り得るギリギリの措置でしょう。

ブロッキングを指示ないし行政指導すると見られていた地点からみれば自制的だと考えます。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/180413/gijisidai.html

ブロッキングの賛否に関してはずいぶん議論が加熱しました。

マンガ家や出版社など権利者が漫画村などのサイトによる急激な事態の悪化に業を煮やす中、政府がブロッキングをISPに指示するとの報道が流れ、法学者や弁護士などが強い反対を表明する事態となりました。

ただ、この議論は、突然に密室で発生した議論ではなく、海賊版サイトへの対策は3年ほど前から知財本部を舞台にオープンに審議されてきました。知財計画2016には既にブロッキングに関する記述もなされています。リーチサイト対策は現在、文化審議会で制度化が審議され、広告対策は経産省を中心に措置が取られていて、ブロッキングが残る課題でした。それがあまり注目されてこなかったのは、関わるぼくの発信力不足という面もあります。

そして昨今の事態の悪化に関して、サーバが置かれているとみられる外国の政府等に官民で交渉してもラチがあかず、民間もDMCAテイクダウンなどの措置を取っても有効ではなく手詰まりな状況でした。これが国内サーバであれば、ブロッキングなどの悠長な措置ではなく、著作権法違反で警察がしょっぴき叩き潰すのですが、日本人が日本語で商売していても海外にあるという事情で放置されている、これに対する止血が求められていたわけです。

ブロッキングに対する反対側の主な主張は、

・手続が不当であり立法が必要。

・児童ポルノと異なり緊急避難には当たらない。

・名誉毀損などブロッキングの拡大濫用の恐れ。

・権利者の対策が不十分。

・やっても無駄。

というものです。

これに対し今回の決定は、政府として立法を行う宣言をし、政府として緊急避難に当たる解釈を示すというもの。この解釈は、司法判断ではないけれど、総務省、法務省、警察庁を含む関係省庁が協議・了解したものであり、少なからず重みを持ちます。また、ブロッキングが行われるとしても、極めて限定的・抑止的であるべきことは関係者のコンセンサスであり、将来に向けては明確に制度で縛ることになりましょう。

権利者の対策が不十分か否かはぼくには判断がつきませんが、逆に、本件の決定を下すのにどれだけ大量の汗をかかなければいけないものなのでしょうか。国内で閉じた事案であれば対策が十分であれ不十分であれ権力がしょっぴくわけで。ただ、ここからブロッキングをISPが行うとなれば、それに要するコストや損失をどうカバーするか、それを権利者側がどう負担するか、はポイントになるでしょう。

本件は、事態を放置する責任と、ブロッキングを実行する責任(憲法問題や法的安定性)とが拮抗して下された決定と考えます。「現実の被害」に対する手当と、「未来への危惧」との調整です。後者の一番の当事者はISPですが、ISPは電気通信事業法上の通信の秘密を守る義務を負いつつ、海賊版サイトでトラフィックを稼ぐ商売をしており、微妙な立場です。

ぼくの役割はコンテンツ・権利者側と通信・ISP側の両サイドの声+ネット上の意見を政府・政権に届け、必要な場を用意することで、それはとりあえず作用したと考えます。

これを受けタスクフォースを早急に設置し、アクションを考えることが民間に投げられたボールです。その主役はISPであり、ISPがどう判断・対応するかです。

なお、本決定に関し、現政権の横暴というコメントを見受けますが、ぼくは民主党政権でも同様のアクションを起こしたと思います。鳩山政権の権利者側に寄った政策を振り返ると、もっとすばやくやったんじゃないかと。

今回の決定で最も大事なのは法制度を整備するという点であり、これは憲法学者はじめ有識者や関係者の意見を糾合して設計してもらわなければなりません。それはまた別の場が必要となります。そしてそれは今回のアクションプランよりもタフな議論になると考えます。

関係者のみなさま、よろしく取り運びください。


ネットワーク時代に対応した著作権法改正が実現へ

■ネットワーク時代に対応した著作権法改正が実現へ

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2018/3/17(土) 8:30ー

                                          文部科学省資料より

デジタル教科書を正規の教科書とする学校教育法等改正案と並び、著作権法改正法案も閣議決定がなされ、国会提出の運びとなりました。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/02/23/1401718_001.pdf

著作権法改正案、注目は2点です。

1)デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備

(第30条の4、第47条の4、第47条の5等関係)

2)教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備

(第35条等関係)

1) 柔軟な権利制限規定

ビッグデータを活用したサービス等のための著作物の利用を許諾なく行えるようにする。所在検索サービスや情報解析サービスなど現在許諾が必要な可能性がある行為の一部が無許諾で利用可能となる。

2) 教育の情報化に対応した権利制限規定

授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等を許諾なく行えるようにする。ワンストップの補償金支払のみを要する。

これらはぼくが座長を務める知財本部で方向性をつけたことが文化審議会で詳細議論され制度化に至ったものです。権利者、利用者、学界、政界が何年も議論を重ね、調整を重ね、ようやく閣議決定・国会提出です。文化庁はじめ関係のみなさまどうもおつかれさまです。

知財計画2017では「著作権法における柔軟性のある権利制限規定について、速やかな法案提出に向けて必要な措置を講ずる。」と明記。教育情報化も「授業の過程における著作物等の公衆送信の円滑化について、新たに補償金請求権付の権利制限規定を整備するなど必要な措置を講ずる。」としていました。

なお、デジタル教科書に関しても知財計画は「公表された著作物の掲載が必要な限度で認められるよう必要な措置を講ずる。」としていましたが、こちらは学校教育法等改正案の中で手当されることとなり、これも同時に閣議決定・国会提出となりました。

今回の改正は議論開始から国会提出まで何年もの時間を要しました。最大の難関は権利者・利用者の調整でも学界の対立でもなく、政府内、内閣法制局でした。その壁が崩せず、文化庁のかたがたは随分苦労されました。ステイクホルダーが妥結したものを通さない法制局というメカニズムに疑問が残りました。

さて、国会が大変なことになっております。与党のかたも野党のかたも言いたいことは多々ありましょう。が、それはそれとして、本件はちょっと国民・民間のことを忖度いただいて、何とか通していただきたい。この機を逃すと大変です。

で、無事これが国会で成立するとして、さらに大事なのは知財計画が求める「ガイドライン」です。

「イノベーション促進に向けた権利制限規定等の検討:ガイドラインの策定などの必要な措置を講ずる。」

著作権法は大まかなことだけ法律で定め、解釈・運用は権利者・利用者に委ねられ、もめたら裁判という仕組みで、官庁が介入してくる度合いが低いので、判断が難しいグレーゾーンが広い。特に今回の改正は、将来の事案にも柔軟に対応できるようある程度抽象的に定めることとしています。

なので、通説の解釈をガイドラインとして示しておくのが望ましい。これを権利者・利用者、学界、行政・司法の関係者が集って定めておくのがよいと考えます。

関係者のみなさまよろしくお願いします。


著作権制度の改正、論議は煮詰まりました。

■著作権制度の改正、論議は煮詰まりました。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2017/11/4(土) 8:30ー

内閣府知的財産戦略本部「新たな情報財検討委員会」(第6回)「AI学習用データ作成と柔軟性のある権利制限規定の検討」資料より抜粋


 文化審議会の著作権分科会にて、「柔軟な権利制限」の議論がなされました。著作権の権利制限、つまり著作権を緩めて利用しやすくする仕組みを少し柔軟にする工夫です。詳しい内容は省きますが、ほぼネット利用を円滑にすることへの対応であり、必要な法整備です。政府・知財本部が策定した「知財計画」で方向づけられた内容を、審議会で具体的な制度に落とし込む作業です。

 ぼくは著作権は「制度よりビジネス」を標榜してきました。制度改正に何年もかかって、かつ、その効果が小さいのが通常だからです。それより実サービス、実ビジネスで著作物の生産・流通・消費を増やすことのほうが効果的であり実効性が高いと考えてきたからです。

 ただ、今回の制度論議は、久しぶりにぼくも委員として参加してみたところ、想定以上に「大きく厄介な見直し」に向けて勢力が注がれていて、意味のあるものでした。この問題はもう5年以上の時がかけられており、政府・委員はじめ汗をかき続けているかたがたに敬意を表します。ぼくは今回の審議会の方向性に賛成ですし、事務局にもよく整理してもらったと考えます。

 しかしぼくの関心はその後のことにあります。2点あります。

 まず第一に、これが法律として成立するのかどうかです。

 これが利用者、権利者、産業界などステイクホルダーの理解を得られるのか、はもちろん重要ポイントです。法律となるためにはその環境整備が必要です。

 国会・与野党にも本件についてはさまざまな意見があり、慎重派・推進派がなお割れているとか。かつてより著作権制度に対する注目度が高くなっていることも感じます。政府提出の法案が成立するには、政府と国会との間でかなりの調整が必要です。

 また、そもそもこれが政府の成案として、内閣法制局を通って提出されるのかどうか。実はこれが一番気になりました。というのも、5年ほど前に同様の議論が審議会で行われ、いったん結論に達しながら、内閣法制局を通らないというできごとがあったからです。

 今回の議論は、ネット上のコンテンツ流通の利便性を高める方策ですが、これはある程度、これから生まれるサービスや利用法を先取り想定して制度を作る必要がありますが、内閣法制局は、空想ではなく「実態」に基づいた法律を死守しようとするため、バッティングするわけです。

 実態を先取りした著作権制度が作れないため、ネット検索サービスが日本で立ち上がらなかったという見方があります。だからチャレンジするため政府で議論しているのですが、実は壁は政府内にあったのです。

 これらに対し、ぼくらができる、対外的なメッセージや動き方はないのか。これが第一のポイントです。

 今のところ、総選挙を経て体制が改まった国会には何とか近く提出されるとの見通しです。まずはそれを進めてもらいたい。

 もう一点は、知財計画が求めているガイドラインの策定です。

「柔軟性のある権利制限規定に関連して、予見可能性の向上等の観点から、対象とする行為等に関するガイドラインの策定等を含め、法の適切な運用を図るための方策について検討を行う。」(知財計画2016)

 法律にはざっくりしたことしか書かないので、細かいことは裁判で白黒つける、のが著作権制度のやりかたでした。通常の行政法のように、役所が解釈したりコンメンタールを書いたりしなかったんですが、今回、事前に白黒つけやすいようにガイドラインを作ろうというものです。

 これは法案策定後の作業でしょうが、より細かい解釈や考え方を、審議会の委員やステイクホルダー、場合によっては立法府や司法の参加も得て作っていく努力をするのがよいと考えます。これまでの枠を広げる取り組みをすべきタイミングだと考えます。


「インターネットと法規制」、ニコ生での議論。

■「インターネットと法規制」、ニコ生での議論。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2017/10/28(土) 8:30ー

 10月13日、「インターネットと法規制 ~多様化するウェブサービスに法制度は対応できるのか~」というニコニコ生放送の司会を務めました。ネットは普及したとはいえ、まだ過渡期。法的トラブルも絶えません。ネットと法律の規制の問題を考えるのが趣旨です。

 法律問題は多様です。通信の規制もあれば、著作権もあります。金融取引、eコマース、ネット選挙。遠隔医療やデジタル教育。そんな中で今回は、最近話題となった1)DCMA悪用、2)ビットコイン、3)CASH、4)VALUの4点をテーマに取り上げました。

 出演は川上量生氏(ドワンゴ会長)、ひろゆき氏(4chan管理人)、水野祐氏(弁護士)。要点をレポートします。詳しくはタイムシフト視聴でどうぞ。

 http://live.nicovideo.jp/watch/lv307336514

                著者作成

1)DMCA悪用

 まずはDMCA(デジタルミレニアム著作権法)というアメリカの法律についての議論です。不正コピーを阻止するため2000年に施行されたもので、Googleなどのプロバイダが著作権の権利者からコンテンツを削除する申請があれば削除すること等を含む仕組み。

 今回、求人サイトのWantedlyがこの制度を使って削除申請しました。Wantedly上場を批判するブログ記事の中にCEOの写真が使われており、その著作権違反を理由に申請がなされたのですが、写真だけでなく、その記事自体がGoogle検索から消え、それをつぶやいたツイートも非表示になった。それは制度の悪用ではないか、という議論です。

 プロバイダは制度に則った申請が来ると、著作権侵害かを判断せず一旦落とす。川上氏はそのルール運用が問題と指摘します。これに対し、ツイートやリンクを載せるのは日本では侵害に当たらないのが定説だったが、EUなどでは当たり得る流れだと水野氏は言います。

 元々は不正のコピーを減らすという目的で導入されたDMCAが、悪くないものも削ってしまう。それに対し「嘘ついてガンガン削除している人に、何らかの罰則は発生するのか?」と問いかけるひろゆき氏に、水野氏は場合によってはあり得ると答えました。

 著作権法はアメリカと日本の制度がかなり違っていて、TPPでアメリカの制度に合わせて非親告罪やフェアユースを導入する話もあったが、トランプ政権でまた状況がガラリと変わりました。しかもサーバーがあちこちにある状況でどこの法律が適用されるかという問題もあり、企業にはそれぞれの国の法律をどう戦術的に使うのかも問われます。

 水野氏がEUが個人情報保護に関して越境データの規制をかけている現状を紹介しました。これを受け川上氏は「ヨーロッパはかしこい。そういうことを戦略的にやっている。」と指摘、個人情報保護法や独禁法でGoogleやFacebookに対抗するという国家戦略論にも話は発展しました。

2)ビットコイン

 ビットコインに代表されるネット上の仮想通貨は、日本円などの法定通貨やSUICAのような電子マネーとは異なって管理する主体がなく、ブロックチェーンと呼ばれる技術で分散管理されているものです。制度的には日本では改正された資金決済法で仮想通貨が「財産的価値」として定義され(水野氏)、仮想通貨取引所は登録が必要(川上氏)となりました。

 そして、資金洗浄・マネーロンダリングの温床になる(水野氏)、ほぼ投機の対象となっている(川上氏)、既に税金的なメリットもない(ひろゆき氏)という厳しい現状認識も示されました。

 しかし、ビットコインにはP2Pで仲介者がおらず低コストで決済ができるメリットがあるのでは、との問いかけに対して川上氏が反論。トランザクションあたりのコストは上がり、非効率だと言います。ブロックチェーンのP2Pは新しい信用の世界を作るのでは、との問いにも「完全な寝言」と否定、ビットコインは取引所が支配するネットワークであるとします。これには水野氏もひろゆき氏も、コア開発者や取引所という権力者がいると同調しました。

 そしてひろゆき氏は、発電コストが世界一安い中国がビットコインを掘って寡占すると説きます。川上氏は、中国は自国が支配するためおめこぼしをしてきたが、そろそろ規制に動くと予測。ひろゆき氏はビットコインがつぶれても他の仮想通貨が現れ、それも中国が力を発揮すると主張します。

 マイニングに紐づかない仮想通貨も現れており、分散システムの次の技術が現れるのではとの指摘には、川上氏は金融業界が規制を逃れて仮想通貨にお金は集まるとする一方、ビットコインは実体経済・市場経済に影響がない点に意味があると言います。

では「投資しますか?」と問うひろゆき氏に川上氏は「するわけないじゃないですか。ビットコイン大嫌い。」と打ち返して本件は終了。

3) CASH

 自分が持っているブランド品などの写真を撮ると、すぐに査定をしてもらい、現金を受け取れるサービスです。利用者は物品を2か月以内に運営元に送るか、15%手数料を上乗せして返金するかを選ぶ仕組みの、質屋のようなサービス。

 6月のリリース当初、16時間で7000件の申込みがあり、3億5000万円のおカネが支払われたことで一旦中止になったが、8月に再開。上限2万円、ブランド品などに限定する等の仕組みとし、15%手数料も廃止しました。

 水野氏は、アイテムをユーザが持っているから法的には質権が設定できず、質屋営業法の適用を受けないこと、また、15%という高額のキャンセル料をマネタイズポイントとして狙っている点で貸金業法にも引っかからないよう設計されたことが透けて見えるサービスだが、後者の点は違法と判断される可能性があったことを示唆します。

 ただ、ひろゆき氏はこれほど知られるようになったことを踏まえると、3億円程度は安いプロモーション費だと指摘。面白い経営者だと評します。グレーを白にするのは難しい、ニコ動もグレーだったころがあった、と。

 「一緒にされたくない。ビジョンが違う。」と川上氏は反論。「CASHは儲かると思ってやったと思うが、ニコニコ動画は儲からないと思っていた。」ではCASHはどんなビジョンを持つものか。「困っている人を助ける」とするひろゆき氏は、CASHやメルカリが合併して「貧者経済圏」を作ると面白いと話を広げます。水野氏も「仮想通貨経済圏や貧者経済圏など、普通の経済圏とは別の選択肢があって、ここでダメでも僕はあっちで生きて行けるとか」という可能性を見出します。3氏とも基本的にこうした新サービスが生まれてくることには肯定的で、話が弾みます。

4)VALU

 資金を自分で集めたいという人が「VA」という自分の価値を発行し、ユーザーの間でビットコインで売買ができる仕組み。8月、YouTuberのヒカルさんらがVAを売り抜け、謝罪・活動停止に至った騒動がまだざわついています。

 冒頭、水野氏がVALU社の顧問弁護士を務めていることを言明したうえで、VAは有価証券に当たらないというVALUの主張を解説しました。株式と比べると、配当を受けたり議決権を持ったりすることがない。クラウドファンディングは特定プロジェクトの資金調達をするが、VALUは人自体のサービスなので期限がない。ただ、売買型のクラウドファンディングと異なり「寄付型」の場合は、人におカネを渡す行為という点で似ている、とのことです。

 ヒカルさんとVALUは価格操作があったかどうかで対立がある模様なのですが、これに対しひろゆき氏は、そもそもVAを第三者に売れるサービス設計が問題と批判。川上氏は、優待を本人が発表できて売買できるから、インサイダー取引を誘発するサービスであると指摘しました。

 しかし、こうした個人の価値を資金化する仕組み自体については、ひろゆき氏は「日本の法律でやらなければ全然問題ない。サービスとして面白い。」と評価。さらに川上氏は「ヒカルが非難されるのが分からない。非難されちゃいけない。」と踏み込みます。ひろゆき氏「こういう仕組みのサービスと分かってて、VALUを買っているんだから、損したと言ってる奴がおかしいだろう。」

 両氏は、物議を醸し出すサービスが出ること自体は悪い事ではない。もっと堂々とやって欲しい。グレーになったから謝ります、となるなら、最初から日本以外の国で立ち上げて、日本に向けたサービスの方がよいということになる、という問題提起に至りました。

 VALUの関係者が出演したということでひろゆき氏・川上氏から高く評価された水野氏「こういう面白いサービスというのが出てくる事自体を楽しみにしていて、ちゃんとビジョンがあるのなら、法的にも支援したい。」「規制やグレーゾーンは社会の課題を発見して解決するチャンスであり、そのときの社会の縮図が出やすい場所なので、それを積極的な目線で見つめて、乗り越えていきたい。」

 川上氏「社会が成熟していくと、しがらみで外せない規制というのが出てくる。新しいテクノロジーが媒介となって、ブレークスルーが起きることは、社会的にも良い話だ。」

 という締めくくりで番組は終了。またいつかこんなテーマでやりましょう。




2020/11/04

AI・IoT時代の著作権ビジネス

■AI・IoT時代の著作権ビジネス

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2017/1/28(土) 7:30ー

 音楽業界の会報誌に一文を寄せました。業界のかた向けですが、ご参考まで。

 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)で世間は騒がしい。

 近未来に機械が人の仕事の半分を奪うという研究もあります。囲碁は人よりAIのほうが強くなりました。プロ顔負けの作曲をするAIも現れました。私が座長を務める政府・知財本部の委員会でも、AIが作る音楽などの作品に権利を与えるかどうか、熱く論議されています。

 私が文化審議会の録音録画補償金を巡る議論に参加していたのはもう12年前になります。それから制度は動いていません。

 だが、事態は一変しました。

 当時、PC・ハードディスクとCD・DVDを念頭に置いていた世界のコンテンツ消費は、スマホ+クラウド+ソーシャルからなる「スマート」へと軸を移しました。ビジネスの体重はサブスクリプションやライブへとかかります。日本の業界にも波は来ます。

 そしてAIやIoTなど、メディアは早くもスマートの次のステージに移るというのです。

 だからといって必ずしも危機というわけではありません。

 例えば、音楽。

 若い世代は、スマート化で大量の音楽に接し、楽しむ機会を増やしています。私の世代よりカジュアルで自然に音楽をまとっているように見えます。タダで消費されたりするから商売にとって具合は悪いけど、「音楽」にとってはチャンスなのではないでしょうか。

 西海岸のあるミュージシャンが話していました。欧米なら3コードで済ます曲をJ-POPは何十個もコードを使う。そんな豊かな音楽に憧れる、と。そう、日本の音楽は土壌が豊かで、競争力はあります。技術を使ってこれを世界に展開していきたい。

 そこで著作権をどう考えるか。

 制度を巡る議論は今も盛んです。TPPの妥結で保護期間延長などの措置がとられます。政官ではフェアユースに関する議論も進められています。しかし、どういう結論に至ろうと、さしたることはありますまい。先人の知恵と努力で練り上げられた著作権の制度に多少手が入ったところで、もはや抜本的に環境が変わるという事態は考えにくい。

 それよりも、グーグルやアップルやアマゾンがどういう戦略を取るのか。映像配信サービスはテレビの牙城にどう攻めこむのか。スマート化やAIは若い世代の視聴行動にどう影響するのか。これらは一国の制度などおかまいなしに、著作権ビジネスを根底から塗り替えます。

 

 私はもともと制度屋ですが、今は制度の議論にばかり時間を費やしてはいられません。それよりも、今ある枠組みでいいから、それを使って、スマート時代、AI時代の著作権の世界をどう広げるかにエネルギーを注ぎたい。

 このところ政府もコンテンツ支援に熱心で、海外展開向けの大型ファンドを作ったり、aRmaの設置を進めたり、海賊版対策に力を入れたりと、アクションに重きを置いています。昨年のクールジャパン戦略推進会議では、コンテンツ分野は音楽に焦点を当てた施策が論じられました。いい方向だと思います。

 東京オリンピックを迎える2020年に向けて、東京・竹芝の国家戦略特区にデジタルやコンテンツの産業集積地を作る構想「CiP」が進められています。関係業界が中心となり、政府とも連携して、そこに音楽のデータベースやアーカイブを作るプランも動いています。民間としてもこのような機運を活かして、ビジネス実験、異業種連携、インフラ整備などをできるだけ進めておきたい。

 スマートからAI/IoTへと舞台は動きます。対応次第でチャンスにもなれば、ピンチにもなります。制度を考えている間に、ビジネスは終わってしまいます。先を見通して手を打っておくべき時期でしょう。


著作権法をガラポンにしませんか

■著作権法をガラポンにしませんか

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2016/11/19(土) 8:30ー

 シンポ「次世代の知財システム構築に向けて」@虎ノ門。

 ぼくが座長となって政府知財本部で開かれていた次世代知財システム委員会の続編を、東大喜連川優さん、福井健策弁護士、瀬尾太一さん、リクルート石山洸さんとともに開催しました。モデレータを務めました。

 シンポではまず「柔軟な著作権システム」について議論しました。知財計画2016が打ち出した、権利制限、集中管理、裁定精度、報酬請求権を組み合わせるグラデーションをもった取組という方向性をどうみるか。

 福井さんは、権利制限とライセンスを組み合わせる議論は画期的としつつ、孤児著作物の処理のため、裁定+拡大集中許諾に期待するとのこと。瀬尾さんはアメリカ型フェアユースに反対しつつ、権利と利用の2元論じゃ立ちいかないと指摘。

 権利制限、フェアユース規定は既に文化庁の審議会に場を移し、議論が進んでいます。ぼくも参加しています。次期国会に法案を出すよう知財計画は求めているので、どこかに落とし込まれましょう。

 ただぼくは、それ以上に、知財計画に書かれた「ガイドラインを作る」という約束に注目しています。

 法律は大雑把にしか書かれず、結局その解釈や運用が不透明で、企業リスクが残るという点が問題。じゃその解釈をガイドラインに落とし込みましょうよ。その通説を政府、学者、裁判官、企業、弁護士などで作ればいいじゃないですか。けっこう透明になるはず。

 喜連川さんは、アメリカが旧来の企業からIT企業に力がシフトする中で日本は硬直的だとし、ゲームを変えられる国になるよう強く指摘しました。それは著作権だけではなく、全ジャンルに共通する課題です。

 福井さん・瀬尾さんが共に主張するのはアーカイブの重要性。孤児著作物を巡り欧米がしのぎを削る中で、日本もアーカイブ戦略に注力すべき。権利処理のコストを大幅に下げる必要があります。裁定補償金の措置など、スグにやるべき課題が見えていますね。

 喜連川さんは突然、「オボカタ問題を解く制度を!」と言い始めました。コピー論文をチェックするサービスが合法なのは当然だろう、ところがそのサービスを日本はアメリカから買っている、なんたることだ、と。オボカタさん、恐るべし。

 小宮山・元東大総長が進めた「知の構造化」は、東大の全シラバスを見ても何を教えているかがわからん、わかるようにする、というものだった。だから著作権法も読んでわかるようにしろ、という指摘も喜連川さんからありました。

 そうなんです。権利制限や集中管理といった課題は2020年あたりには決着しておく。問題はその次世代の制度。1971年にできた現著作権法を50年ぶりに大改正する。これに手をつけたいですね。

 福井さんは、1億総発信社会となり、著作権法がお茶の間法になった。わかりやすくスリム化せよ、と説きます。そして、オプトインの仕組みをオプトアウトに変え、著作物を使えるのが基本、という仕組みにすることを示唆しました。

 瀬尾さんは、音楽のようにきちんと仕組みが動いている分野があることを示しつつ、著作物そのものが多様化する中で、文芸作品やデータベースのような異質なものを一括りで扱うことの問題を指摘しました。いずれにしろ限界、ですね。

 文化審議会の委員を務める著作権制度を専門とする方々からは、制度をガラポンにするという議論は出てこないかもしれません。恐れを知らずそれを唱え、道筋をつけるのが知財本部の役目でしょう。本気でこれに取り組む時期だとぼくも思います。

 10年前の通信・放送融合論議でぼくは、10本以上あった関連法を1本化し、通信放送タテ割りの制度をレイヤ別ヨコ割りに再編する「情報通信法」を主張、ボコボコにされましたが、4年の議論を経てほぼその方向で再編され、1本化はできませんでしたが4本まで法律が減りました。

 それをなしとげたのはメディア環境の変化という客観情勢と総務省事務方の情熱。著作権制度も客観情勢は揃っているので、事務方が死ぬ気になれば、できましょう。

 やりましょう。


メディア法制この10年

■メディア法制この10年

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2016/9/17(土) 8:31ー

 通信・放送の融合。今から10年前に動きがありました。2005年にライブドアや楽天が放送局の買収工作を見せ、2006年初頭のCESで米IT企業が一斉に映像配信ビジネスへの参入を宣言。メディア構造転換が待ったなしとなりました。

 竹中平蔵総務大臣が「通信・放送の在り方に関する懇談会」、いわゆる竹中懇を開催し、その示す方向が通信・放送業界に激震を与えました。小泉総理の腕力も手伝い、それが政府与党合意、骨太の方針となって第一次安倍政権へと引き継がれます。

http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/tsushin_hosou/pdf/060606_saisyuu.pdf

 さて、10年前の元旦に書いたペーパーを座興までに貼り付けておきます。政府などの議論が本格化する前に作った個人メモです。

 1~4までの通信・放送法制は、その方向に進みました。制度がレイヤ別に再編されて、新しい放送法が構成されるとともに、電波法も改正され、融合サービスに道が開かれました。

 5と6の特殊法人制度は手つかず。ぼくは今は、7のデジタル著作権に関する議論を知財本部で進めています。8の子どもに関しては、デジタル教科書の整備を進めており、法制度も整備されそうです。10の文化省設置は、今もお題目だけ唱えています。

 10年たって、進んだ面もあれば、進んでいない面もあります。制度の動きは、遅くても押し続ける必要があります。押し続けましょう。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

□メディア法制改造大綱           2006.1.1

 メディア環境は、思想・表現の自由はもちろん、生存権や参政権などの基本的人権を保障する手段であり、かつ、産業・文化・福祉・国防等のための基盤となる。これを旨としつつ、デジタル技術の進歩、20世紀型メディアの普及の進展、メディア市場競争状況の変化その他の環境変化を踏まえ、国民が情報の生産、流通及び消費を円滑に行うことができるようメディア法制を再構成する。

 「通信・放送の二分法」に立脚した「事業・提供者行政」を基本としつつ特殊法人という「公的機関」を主軸に据えている現行制度の枠組みを改め、「メディア融合・レイヤ別制度」、「役務・利用行政」、「官民分担明確化」へと移行する。

1. 公衆電気通信法

○ 事業及び事業者行政を役務及び利用行政に改め、通信・放送共通のアクセス面の法制として、通信・放送ネットワークに関する公正・適正利用の確保、接続・ユニバーサルアクセスの確保、番号管理等に関する法律を策定する。これに伴い電気通信事業法を廃止する。

2. デジタル放送法

○ 放送法、有線テレビジョン放送法、電気通信役務利用放送法を廃止し、電気通信役務利用放送法のスキームを基礎とする新しい放送法を構成する。公衆直接受信要件を満たし番組規制を受け容れるものとして認定を受けた者に著作権法及び電波法上の特典を付与する。なお、これを含むコンテンツ規制は、児童ポルノ法、風営法その他の法律との役割分担を図り多元的な規律体系とする。

3. 電波法改正法

○ 帯域免許を導入するとともに、個人利用以外はMVNOを基本とする。放送は電気通信役務利用放送法スキームを基本とするが、(有線も含め)ハード・ソフト一致型のビジネスも認める。この場合、通信役務の提供義務は外すものの、その特典に見合う電波利用料を徴収する。

4. 有線電気通信法改正法

○ 電気通信事業法及び有線テレビジョン放送法がカバーする有線インフラ規制(技術基準その他インフラに求められる要件)を移管し、電波法と同程度のレイヤを扱う法律とする。

5. 日本電信電話株式会社法廃止法

○ NTTを完全民営化する。特殊法人たるNTTに求められているユニバーサルサービス確保と研究開発の要請は、それぞれ他の法律で手当てする。通信主権の確保については、国家危機管理法制ないし有線電気通信法・電波法にて措置を講ずる。

6. 日本放送株式会社法

○ NHKをハード・ソフト分離し、ハード(伝送路)部門は通信会社として独立させ、公衆電気通信法、有線電気通信法、電波法の規律を適用。その電波を活用し、ハード・ソフト分離での地上波デジタルテレビ局の新規参入を実現する。NHKのソフト部門のうち、受信料でまかなう領域は引き続き特殊法人とするが株式会社化し根拠法を独立させる。この特殊法人には番組アーカイブのインターネット開放を義務づける。

7. デジタル著作権法

○ 登録を受けたデジタル情報を対象とし、P2P推進など、情報の共有、流通及び消費を円滑化するための措置を講ずる著作権法の特例法を策定する。

8. 子どもデジタル法

○ 子どもが最先端のデジタル技術を安全にかつ安心して享受・利用できるよう環境整備するための法律を策定する。

9. 情報通信研究開発法

○ NTT及びNHKの研究開発組織、情報通信研究開発機構、ATRその他の関係機構を統合・再編成するとともに、産学連携を推進する措置を講ずる。

10. 文化省設置法

○ 文化庁に総務省テレコム2局、同行政管理局(e-gov)、経済産業省商務情報流通局の関連部局を統合した官庁を置く。官庁の増加を防ぐため、経済産業省と農林水産省を統合し、農商務省とする。

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


TPP著作権合意をどう処理するか

■TPP著作権合意をどう処理するか

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2015/12/26(土) 8:30ー

 TPP合意は評価しているんですが、著作権分野は懸念大です。

 TPP著作権分野の合意内容は、アメリカが望む保護期間延長、非親告罪化、法廷損害賠償の3点セット。いずれも提供側の保護強化を意味します。

 これは、利用側の効用を下げることにつながります。

 これまで日本は、提供・利用のバランスをとって著作権制度を積み上げてきました。アメリカなどに比べると、利用者・消費者の利益に配意する仕組みでした。これが崩れます。

 この決着は権利者にとってよい方向とみるむきもありますが、提供と利用のエコシステムが崩れると、長期的な文化の弱体化につながりかねません。提供側にとっても果たして朗報なのかどうか。冷静な分析が必要です。

 そして、崩れるバランスを、国内制度で改めてどう調節できるか。重大な事態です。

 ぼくはこれまで、保護期間延長より、非親告罪化のほうがクリティカルだと表明してきました。

 保護期間延長は、コンテンツ業界を利すると言っても、いま売れているマンガ・アニメ・ゲームの作者が亡くなってから50年先の話で、当面の利益に乏しい反面、過去から売れているアメリカの業界を利する。いずれにしろ利用者にとって利益は見当たらない。ただ、経済的にみてさほどインパクトはあるまい。

 でも、この数年、ヨーロッパやアメリカの国家的なアーカイブ戦略が激しさを増していて、そこでは保護期間の長さがマイナスに働くという認識が明らかになっている戦線に、日本の条件を不利にするという点で、ヤバい話だと思い直すようになりました。

 他方、非親告罪化は、プロとアマが文化を共有して表現する暗黙裡の土壌が日本のポップカルチャーを支えてきた実態からみて、そのエコシステムを壊すことは、根本的な問題だと考えてきました。この考えは今も変わりません。

 TPP合意において、非親告罪化には一定の配慮も盛り込まれましたが、さて、国内制度としてどうセーフガードを設けるか。

 さきごろ官邸で開かれた政府・知財本部の席上、安倍総理だけでなく、島尻知財大臣、馳文科大臣も揃って著作権に関し「「二次創作への萎縮効果を生じないよう」対応すると表明しました。

 私も出席していましたが、この発言は予期しておらず驚きました。TPP知財交渉に政府が真剣に取り組み、重い決断をしたことを表していました。

 本件は既に文化庁・著作権審議会で検討が始まっており、私が座長を務める知財本部の委員会でもその後の方向性を議論します。

 セーフガードにとどまらない、ダイナミックな制度論議や政策が求められます。今回の決着を奇貨として、より大きな知財の制度論を展開したいものです。

 この論議で求めたいことが2点あります。

 まず、「データに基づく分析」です。

 著作権の制度論が文化庁で論議される場合、データに基づく科学的な分析が乏しく、権利者と利用者の綱引きをにらみつつ法学者が断ずるケースが多く、問題を感じています。

 制度を動かすことによって、著作物の生産量や流通量はどう動くのか、経済的なインパクトはどの程度か。他の行政分野と同様、そうしたシミュレーションやアセスメントを踏まえて、政策プランを論じていただきたい。

 もう1点。「プレイヤー」です。

 今回は、これまで築いてきたシステムを壊す課題への対応です。これまでの制度構築にあたってきた法学者や事業者の世界にとどまらない論議を要します。コミケ関係者、ネット関係者や経済学者など 広い分野の英知を活かしてもらいたいと思います。


リアリズムの田中角栄

 ■リアリズムの田中角栄 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/9/7(土) 11:30ー  早野透著「田中角栄」を読んで、改めて田中政治って何だったのかなと考えています。  毀誉褒貶のチャンピオン。金権政治、官僚操縦、数々の議員立法を通した政策マン。評価はさ...