2021/01/18

創作活動のメッカ、ワークショップコレクション

■ 創作活動のメッカ、ワークショップコレクション

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/10/27(土) 8:31ー

 幾重にも押し寄せる親子連れの波。慶應義塾大学の日吉キャンパスへと続く数百メートルの通学路。年に一度、この町は子どもたちの歓声に包まれます。コンテンツを創作する子ども向けワークショップの展示会「ワークショップ・コレクション」です。

 従来のアナログの表現手段と最先端のデジタル技術を駆使した創作活動を一堂に集め、紹介します。ワークショップに関わる人々、研究者、保護者、企業、学校関係者、アーティストたちの出会いを促進する場でもあります。

 8回目となる今年2月の来場は1日で5万人! 世界最大の子ども創作イベントです。実は日本はこうした活動の本場なのです。知らなかったでしょ?NPO法人CANVASと慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)が主催しています。

 参加したワークショップは90組。ねんど細工、手紙作りなどアナログもありますが、デジタル系も豊富。パソコンを使ってアニメを作る。パソコンでキャラクターを作ってゲームを作る。自分だけのデジタル新聞を作る。ロボット画像を作って戦う。iPad2でオリジナル楽器を作る。自分だけのオリジナル・ウェブブラウザを作る。PCでプログラミングをしてロボットを操作する。デジタルで触覚を伝える。キャラクターを作って世界のひとたちとバーチャルに対話する。スゴいんです。

 よしもと芸人と子どもたちがユニットを組み、一緒にネタを作り披露するワークショップもありました。ワッキー(ペナルティ)、ジョイマン、もう中学生、大西ライオン、佐久間一行、鉄拳、レイザーラモンHGといった面々が子どもたちとネタづくりとパフォーマンスに取り組んだんです。芸人より子どものほうが会場の笑いを取るペアもいて、芸人も手を抜けません。

 今年は企業出展が本格化してきました。ベネッセ、無印良品、朝日新聞、ECC、WAO、フジテレビ、マイクロソフト、Yahoo!、第一生命、しくみデザイン、オリンパス、NHK、NTTといった顔ぶれ。そして、デジタル色が強くなりました。特に、タブレット端末やスマホを用いたワークショップ活動が目立ちました。

 しかし、毎年変わらないのは、混雑。ごめんなさいね。需要が倍々に高まっているのに対し、供給が少なすぎるんです。年に一度のイベントではなく、常設のワークショップコレクションが各地に開かれていて、いつでもどこでも体験できるようになればいいと思いません?

 ハリウッドを凌駕するようなクリエイターやプロデューサーをどう生むかという高等教育は重要な緊急課題。コンテンツ産業政策の本丸です。しかし同時に、デジタル技術が全ての人に行き渡り、全ての人が表現する時代には、創造力と表現力の全国的な底上げ策がもっと大切になります。初等教育の問題。教育政策、地域政策です。ワークショップコレクションは、その方向性を示しています。

 政府は知財計画で「創作系ワークショップへ参加する子どもの数を2020年には年35万人にする」という国家目標を立てました。実はこれはワークショップコレクションへの参加者数を念頭に置いてはじいた数字だったのですが、1日で5万人まで来てるんだから、がんばればすぐにでも達成できそう。がんばるぞ!


20年ぶりのメディア転換点

 ■20年ぶりのメディア転換点

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/10/13(土) 8:44ー

 今回はちょいと授業風に。

 この2年、メディアは20年に一度の大波に洗われました。90年代初め、アナログからデジタルへの転換点「マルチメディア」ブームがありました。テレビ、電話からPC、ケータイへ。アナログ放送網と電話網からデジタル放送とインターネットへ。それ以来の転換点です。3つの状況が現れました。


1) マルチデバイス

 スマートフォン、電子書籍リーダー、タブレットPCなど、新型のデジタル・デバイスが一斉にラインアップされ、急速な普及を見せました。大小さまざまの、モバイル型あるいは壁いちめん据え置き型のディスプレイが登場。50年間君臨してきたテレビ、20年間広がってきたPCとケータイ に次ぐ、いわば「第4のメディア」の君臨です。しかも2012年の家電ショーは「スマートテレビ」一色。多彩なメディアがまたしてもTVに集約されていくのか? 改めて混沌とした場面を迎えています。


2) クラウドネットワーク

 2010年はブロードバンド網の全国化目標年でした。一方、94年 に政策が始まった放送ネットワークのデジタル化、つまり「地デジ」は2011年に完成。日本は世界に先駆け、通信・放送を横断するデジタル高速ネットワークを整備しました。メディア融合の環境が整いました。明治以来、郵便局整備と並び国家が推進してきた情報網の整備が完了しました。もうインフラ政策は要らないのでは? 国の政策も大きく変わります。


3) ソーシャルサービス

 マルチメディアが唱えられた20年前から、「コンテンツ」の重要性が唱えられてきました。2000年代に入ると、政府はコンテンツを国の戦略成長産業と位置づけました。しかし、コンテンツ産業は元気がありません。それに代わり、ソーシャルメディアが花盛りです。情報量も収益もソーシャルに集中しています。使われすぎで、炎上やらコンプガチャやら問題さえ起こしています。コンテンツが真ん中に座りながらも、それをネタにつながった人々がつぶやき、段幕を作る。そちらに関心が移り、主役を張る状況は当分続くでしょう。コンテンツからコミュニケーション、コミュニティへ。

 メディアを形作る1)デバイス、2)ネットワーク、3)サービスの3要素がそっくり入れ替わるわけです。90年代初頭のマルチメディアは、PCという万能の集約型マシンを作ろうとするものでした。だけど、ここに来て登場した新メディア環境は、その逆。ふたたび、バラバラで多様なデバイスが現れて、それらをネットワークでつないで同時に使いこなす。

 重要なのは、デバイスやネットワークが「ソーシャル」によって価値を持つということ。5年ほど前まで、検索エンジンのようなネットの向こうの「技術」が社会を制圧するかに思われていたのに、技術が進化して、マルチメディアが完成したら、結局のところ、人と人のつながりが価値を持った。ともだちや知り合いや信頼を置く専門家といった「人力」が力の源泉となった。機械や技術からヒトへ。それがこの20年の帰結だったわけです。アナログの勝利であります。

 悪くない。デジタルは、ここからやっと面白くなるんじゃないでしょうか。


おまえこそ回し者だろう。

■おまえこそ回し者だろう。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/10/20(土) 8:02ー

 ぼくは政府やIT業界の仕事をよく引き受けるので、御用学者だとか業界チョウチン持ちとかいった批判を受けることがあります。御用だ!と。でもね、そういうこと言ってる人って、逆に霞ヶ関や業界や外国の回し者だと思うんです。

 御用学者ってのは、政府や政権の意を受けて、その都合のいいように太鼓持ちをする輩のことですよね?ところが、ぼくはけっこう政府の逆張りなのです。

 民主党政権が掲げた日本版FCC(通信・放送委員会)設立に真っ向から反対し、話が潰れるまで論陣を張りました。電波政策に対しても開放路線を主張、電波特区も推進しました。通信・放送融合法制も政府の意向を突き抜ける案で物議をかもしました。教育情報化は今も改革急先鋒で政府から目をつけられています。

 つまり霞ヶ関からタンコブ扱いされることが多いのですが、至近距離に出かけてわあわあツバ飛ばしてるから、遠くからは御用っぽく見られるのかも。もちろん政府の正しい政策には乗ります。コンテンツ海外展開策の推進や情報公開構想には積極的に協力しています。

 IT業界に近いという批判もあります。学者は研究や教育をしておれと。でも、逆じゃないですか? 日本は産学連携が弱すぎる。特にIT分野はそこが大きな課題です。基礎研究分野ならまだしも、ITのソフトや政策のようなジャンルで、学は産の役に立てずにどうする。

 MITもスタンフォードもハーバードも、大学が揺りかごになって、技術もビジネスモデルも開発しています。GoogleもFacebookも学生が、大学が生んだじゃないですか。日本の大学はこの分野で何か生みましたか?

 日本は産と官が遠いのも問題です。90年代半ばの大蔵省不祥事を受けて導入された公務員倫理法以降、特に官僚と産業界とのパイプが詰まっちゃって、霞ヶ関が情報不足に陥って的確な戦略が打てない。公務員倫理法はアメリカの陰謀ではないか!? そのパイプを開く役割を学が担うこともあっていいでしょう。アメリカの大学も結構そういう役割を果たしているんです。

 慶應義塾大学に顔ぶれが偏っているのがいかんという批判も。IT分野では今のところ政府や産業界と慶應の距離が近いことは事実。だからといって、それを分散させるのは反対! そうではなくて、東大でも京大でも早稲田でも東工大でも関関同立でもいいので、他に高い山ができればいい。山脈になればもっといい。日本の大学は分散を考えてる場合じゃない。国際競争の中で負け組にならないように、筋肉を増強しなきゃいけない。

 現役官僚の間も東京一極集中是正に反対していました。NYロンパリ、北京上海、ソウルにシンガポール。東京を弱めてる場合かよ。ぐずぐずするうち、案の定、日本は沈んでいきました。

 脱官僚だってそうです。官が強すぎるから倫理法なんかで縛って平衡を保つ。違う。違う。国内的に強いセクターを弱めたら国際的に沈むだけ。そうじゃなくて、官僚=行政に比べ弱い立法と司法を強めることです。政治と裁判機能を強化すべきなんです。

 何が強くて何が弱いか。何を伸ばすべきか。見極めが肝心です。


クールジャパンの次にくるもの

■クールジャパンの次にくるもの

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/10/6(土) 8:30ー

 初夏にパリ郊外で開かれる「ジャパンエキスポ」の会場。おっさんどもが「涼宮ハルヒ」の主題歌をバックに踊りまくっています。女の子たちが日本の女子高生の制服をまとっています。日本では絶滅種のガングロもヤマンバもいます。

 12年前に3000人の来場で始まったこの日本文化イベントには、2012年には4日間で20万人が足を運びました。マンガ、アニメ、ゲームの御三家は海外に定着しました。政府もコンテンツ産業に期待を寄せるようになりました。

 ところがコンテンツ産業はあっぷあっぷしています。市場規模は拡大はおろか逆に減少しています。出版も音楽も映画も放送もみな苦しんでいます。広告も縮小傾向。御三家も苦戦。マンガもアニメもテレビゲームも国内市場は減少しています。

 「クールジャパン」という言葉もよく聞くようになりましたよね?しかし海外で御三家が奮闘しているとはいえ、コンテンツ全体の国際競争力は高くありません。収入の海外・国内比は日本は4.3%で、アメリカの17%に遠く及びません。政府はアジア市場の収入を2020年までに1兆円拡大する意向ですが、道筋は見えていません。

 ゲームもビジネスの主戦場はテレビゲームからネットゲームに移行し、日本は完全に出遅れました。GREEやモバゲーが巻き返してくれるでしょうか? 10年前にアジアでJ-POPというジャンルを確立したポップ音楽も、今は韓国のK-POPに地位を奪われています。初音ミクが巻き返してくれるでしょうか?

 ただ、かつて取締りの対象でしかなかったマンガやゲームを政府が今や国の宝として扱っているのは、それが産業に元気を与えてくれるから。外部経済効果ってやつです。産業規模は小さくても、コンテンツがもたらすイメージやブランド力が他の産業を押し上げる効果を持つからです。

 そこで求めたいのが複合クールジャパン策。コンテンツと、他業種との連携です。エンタテイメントに家電、ファッション、食といった日本の強みを組み合わせ、総がかりで海外進出を図ることです。コンテンツという文化力と、ものづくりという技術力をかけ合わせる。いずれも日本の強みです。その両方を国内に持ち合わせている国は多くない。チャンスなのです。コンテンツがらみの多面展開はこれまで、商品ごとや企業ごとの連携はみられたものの、産業を横断する面的な取組は乏しかったんです。

 韓国メーカは政府の後押しもあり、K-POPや韓流ドラマの映像を組み込んで販売することでアジア市場での家電製品のシェアを伸ばしています。韓国旅行を題材にした映画をヒットさせてアジアからの観光客を引き寄せたりもしています。

 「政府?いらんコトするぐらいなら黙っといてくれ。」

 以前はコンテンツ業界はそう言い捨ててたんですが、韓国の官民攻勢を目の当たりにすると、そうも言ってられなくなりました。

 アメリカでは日本のスナック菓子が静かにヒットしているそうです。菓子のおいしさと、かわいいパッケージデザインやキャラクターが受けていて、日本食品店に行かなくてもネットで手に入るようになった。製造力と文化力の融合がデジタル技術で新しい市場を開く可能性が見えます。

 こうしたジャンル融合による輸出戦略がほしい。政府には異業種を連携させるコーディネイト役を期待します。タテ割り省庁の壁を超えて取り組んでください。身の回りに眠る日本の魅力を掘り起こし、ハードとソフトを組み合わせた総合力を発揮できれば、新しい成長エンジンの芽も見えてくるでしょう。


キッズにデジタルの力を

 ■キッズにデジタルの力を

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/9/29(土) 12:40ー

 色鮮やかな全く正体不明のキャラクターたちがスクリーンに登場した。「バートールー、ピヨピヨパーンチ!、カミナリおとしー!、ガーッ!、ハッハッハー、ボカーン、ドワー、ドワー、ドワドワドワー!完。」戦って、戦って、怒濤のように、どうにかなって、終わってしまった。

 子どもたちが作ったデジタルアニメです。アニメ作りワークショップの一こま。涙と汗の作品は、いつもこんな感じです。たいていギャグと戦いの応酬となり、しばしばウンコも登場します。そんなコト大学でやってていいのか?ええんちゃいますか、クリエイティブだから。

 ぼくのグループはこういう活動を世界各地で、先進国から途上国まで、実施していますが、キャラクター設定、絵コンテ、ストーリー、構図、セリフ、編集など、日本の子はどれもぴかイチ。ふだん親に叱られながらゲームやアニメに没頭している力が発揮されます。

 10年前、2002年に設立したNPO「CANVAS」は、慶應義塾大学とも連携し、デジタル時代の子どもに創造の場、表現の場を提供し続けています。これまで1750件のワークショップを20万人の子どもたちに与えてきました。

 アニメ作り、映画作り、ゲーム作り。作詞した作品、作曲した楽曲をネット上で共有し、互いにマッチングしたり、その曲を演奏したりするバーチャルなコミュニティも提供。自分たちの住む地域の情報をブログや新聞などのメディアを駆使して発信していく活動もあります。

 吉本興業とも連携し「おもしろかし子大作戦」も展開中です。毎回プロの芸人たちが特別講師として登場します。「お母さんに送るムービー作品をつくろう!」の巻にガレッジセール、ペナルティが講師を務めた際には、ぼくが大好きな「2700」八十島さんも親子連れで参加。レイザーラモン講師「かんじをかんじてつくる」の巻では、「フォー!」と登場したHGに子どもがドン引きで、後部席の親たちが一斉に写メという、なるほど世代は移るのね、などと、NPOと吉本が組む化学反応も感じた次第。慶應の教室に「フォー!」が響くのも、大学当局にバレないかなと少々スリリングでよろしい。

 ワークショップの場を広げたい。東京大学、早稲田大学などでも活動しています。ノウハウや素材をまとめたパッケージも開発中です。小中学校、幼稚園、保育園、学童保育所、アミューズメント施設など、いろんな場で活用できるようになってきています。

 日本のワークショップは国際的にみて高水準です。胸を張ります。この分野の産学連携が充実し、点だった活動が面的に広がってきました。10年間の成果です。でも、10年たって、なお道半ば。欧米には、至るところに体験学習型の子ども博物館があります。これらは小学校との連携が強く、プログラムが小学校のカリキュラムに組み込まれています。

 日本ではこういう取組が学校現場に入れない。距離が遠いんです。だからぼくらは「デジタル教科書」の運動も起こし、デジタルの力を学校にも浸透させようとしています。目標は「全ての子どもがアニメを作れて作曲できるようにすること」。いよいよ民間の自主活動、課外活動から、学校教育に進める場面だと考えています。



菅政権に期待するDX5か条

■菅政権に期待するDX5か条

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2020/9/19(土) 8:30ー


                     (著者作)

明治、大正、昭和、平成。日本近代の起、承、転、結です。

ここで一区切り。

第4次産業革命は近代の内輪の物語だが、Society5.0は太古の狩猟時代からの文明論。

工業・情報の次、すなわち近代の次を指す言葉です。

令和に始まるSociety5.0は、10年単位の切り替えではなく、大きな歴史の分岐点です。

だとして、令和のぼくたちは、平成を総括しておきたい。

平成30年は、デジタル敗戦であった。

新型コロナの貢献は、それを突きつけたことにあります。

先人は、昭和の前半、敗けました。

軍で挑み。

そしてぼくたちは、昭和の後半、勝ちました。

産で挑み。

産業だけではなく、アナログ教育でも、官僚主導の行政でも、世界に冠たるものを築きました。

勝ちすぎたのかな。

それがゆえに平成、負けました。

アナログ昭和を固守して敗けました。

DXに遅れ、競争力は1位から34位に落ちました。

デジタル教育は先進国最下位。

行政はFAX中心で新型コロナに立ち向かえません。

それを見える化した非文明の使者がコロナです。

新内閣の仕事はハッキリしています。DX。これ一本。

DXを妨げてきたのは政治ではない。みんなです。産学官みんな。

それは領域の問題ではなく、世代の問題。

ぼくを含む昭和世代をパージして、令和の体制を求めます。

外交は米欧アが身悶えている中、日本だけが安定・強力政権を続けました。

安倍政権は史上例のないポジションを国際社会に築きました。

外交、通商の面でこれほど楽ちんな環境もありますまい。

新内閣は、内政=DX。これに突進していただきたい。

政策屋という職業柄ぼくは内閣が動くたび、IT政策を提案してきました。

民主党政権では「情報通信八策」を提案し、政策に組み込んでもらいました。

省庁、産業、行政、教育、医療、インフラ、コンテンツ、災害。

「民主党情報通信議員連盟マニフェスト」

http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/05/blog-post.html

自民党政権に戻り、第2次安倍内閣発足に当たっては、民主党の成果と反省を踏まえて、産業、教育、コンテンツ、政治、行政の「五箇条の御期待」を掲げました。

「新政権に求めるメディア政策」

http://ichiyanakamura.blogspot.com/2012/12/blog-post_9364.html

できたこともある。できなかったこともある。

今回は、ここまでの成果も認めつつ、平成の敗戦、内政DXの必要性を踏まえて、安倍政権に求めた五箇条を継承した要望を提出します。

産業、教育、コンテンツ、地方、行政の五箇条です。

1 産業DX 

  テレワークなどのDXコスト及び投資に対する大幅な減税措置を講ずる。

DXを進めない経営者の退場を促すアナウンスメント政策を導入する。全産業の経営をデジタル・データ利用世代にシフトするよう促し、DX対応で競争力を強化した経営を称揚する。

2 教育DX

  デジタル教科書とPC一人1台配備が10年がかりで実現することを評価しつつ、デジタル教科書無償化、家庭の通信費負担への対策、オンライン授業の規制全廃などデジタル教育1stに向けた次ステップを踏む。行政コスト増加は電波利用料引き上げを原資とする。

  さらにAIやブロックチェーンなど技術の導入により、教科や学校の枠を超える「超教育」を実装し、学校制度の見直しにつなげる。

3 コンテンツDX

  NHK同時配信が実現したことを評価しつつ、通信・放送融合、グローバル中心、データ主導の時代に適合する制度の構築を図る。特に、制定半世紀を迎えた著作権制度の抜本見直し、産業構造の変化に備えた放送制度の見直しを行う。

4 地方DX

  東京の力を移転するのではなく、自らのDXと規制緩和とで地方創生を進めるよう促す。

地域のDXを促進するため、新たな交付金を創設する。

各地のスマートシティを連結してスマート列島を形成することを支援する。

5 行政DX

 「デジタル庁」を実現させる。行政IT化を軸に編成しつつ、教育・医療など各般のDXを進めるエンジンとする。まずは官庁のFaxとハンコを全廃する。

  さらに、軍・産の近代を超える令和以後の国のかたちを示す組織として、知財・文化庁ほかソフト行政を連結した「文化省」を設立することを目指す。


コロナ雑感 後編:Your Generation

■コロナ雑感 後編:Your Generation

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2020/4/18(土) 8:30ー


コロナ巣ごもりで超ヒマなので、デビッド・バッティ監督「My Generation」をみた。

1960年代は、若い世代が旧体制をぶっとばした時代だった。ロンドンだけでなく、世界各地で。音楽だけでなく、映画も、ファッションも、政治も。そうだ、大学もだ。何がそうさせたのか。経済成長、人口爆発、都市集中、工業化、メディア進化、民主化。少なくとも、疫病のせいではない。

コロナ後は、コロナ前と何が変わるのか。まずは分散とバーチャルだろう。社会の不可逆な化学変化となり、コロナ前には戻るまい。それはコミュニティとコミュニケーションを再構築することでもある。

数千年かけて人類は都市化を進めてきた。文明は都市の歴史だ。集中・集積がテーマだった。住民は城壁で身を守った。ところが、だから壁の中でペストは蔓延し、14世紀には世界の2割が死んだ。戦争も核兵器も、対立を引き起こす宗教も、経済の恐慌も、みな文明が生む。それで死ぬのは自業自得。人類にとっての敵は自然災害であり、病原菌だ。いずれも都市に集中することで、自らの命を縮める可能性がある。都市は病原菌のクラスターとなることは学んでいた。

アナザー文明を描く「進撃の巨人」は、コロナの予兆だったのかもしれない。城壁内で保つ未開文明は不気味な巨人どもに食い荒らされる。外の荒野も知性のない巨人や知性の高い巨人や得体の知れない神話の領土だ。壁の内側の住民は、うろたえ、戦うしかない。

都市集中をパンクにひっくり返す手段がITと交通だった。20世紀後半から今世紀にかけて、高度情報社会と高度移動社会が構築された。いつでもどこでもコミュニケーションがとれ、いつどこにいてもどこへでも移動できる手段を手にした。都市を離れ田園で優雅に過ごす展望を得た。

それでどうなった? 都市集中はますます進む。東京は1980年から36年で200万人増を見せ、特に中心部に集まっている。ITと交通が発達したら、コミュニティはより濃いコミュニケーションを求め、みんな接近したがった。高度情報社会と高度移動社会は否定され、その展望とうらはらに、高密度な経済社会を形成した。地方分散だと?テクノロジーは逆方向に作用した。

コロナはそれに対する鉄槌だ。お前ら、離れろ。疫病は繰り返す。テクノロジーで身を守れ。わかっているのに、なぜやらん。分散しろ。距離を取れ。クラスターを小さくしろ。ITと交通で世界はつながっているのだから、今回はローカルではなく全地球的に警鐘を鳴らす。という天の声が聞こえる。

ハッと我に返り、見回してみる。周りがテレワークでバーチャルに働き始めた。家で働く。都市化で職住接近を実現したが、そうじゃない、職住一致でいいじゃないか。なぜ通勤地獄に身を置いていたんだろう。なぜつまんない上司の飲み会に付き合ってたんだろう、ネット飲み会でいいじゃないか。紙もハンコも要らなかったんだよね。会議室で冗長な時間を過ごしてたのバカみたいだね、端末いくつか置いときゃ会議も飲み会も同時にかけもちできるね。もうコロナ前に戻れない。

コロナで失うものもあるだろう。インバウンドを頼りに経済成長を期待していたけど、しばらく戻らないかもしれない。都市型のライブイベントを成長させようとしていたけれど、しばらく戻らないかもしれない。コロナ後の新設計が必要だ。

自分の話をしておこう。大学のことだ。コロナで大学は壊滅するのではないか。大学を作ったばかりでこーゆーことを言うのもなんだが、壊滅したっていいのではないか。

いま世界中でオンライン教育、オンライン教材が続々と提示されている。著名大学の著名教授もどしどし上げている。日本も地域の小中学校の先生方(世界に誇る優秀な先生方)が授業をアップしている。従来型の授業は、それでいいじゃないか。

個々の先生が一つの教科書を使って個々にそれを生徒の頭ん中にコピーする作業は、もうなくていい。それより、世界の優れた先生がネットで公開する映像を見ればいい。だけど現場の先生は大事だ。それをもとにみんなで考え、みんなで議論し、みんなでつくる。先生は教える係、情報を伝える係じゃなくて、ファシリテーターになる。教育IT化が目指した世界がやっと実現する。

すると、大学の卒業証書より、あちこちのネット講座を修了した証明リストのほうが値打ちをもつ。ネット上の学習履歴が教室での世間より重みを持つ。学校は「つくる」場になる。

そんな世界は5年後に来ているはずだ。早く来い。ぼくはiUをそのためのプラットフォームにしたい。バーチャルな学校連合「超学校」を作って、対応を加速したい。

コロナ後は、全ての領域で景色が変わっているはずだ。元に戻すのがよい分野もあるだろう。けれど、元に戻さず一気に進む分野も多いはずだ。後者が社会の枢要を占めるのではないか、という予感がする。ぼくはそれを是認したい。

となると、それを見据えてすべきことは、その化学変化についていけない世代を退場させることと、コロナ後の世界を若者へ移譲することだ。コロナ後、つまり令和をどう設計するのか。それは平成生まれの任務だと思う。ぼくは従うので、スゴい設計図の提案を期待する。

超ヒマで、My Generationを見た感想まで。


コロナ雑感 前編:平成30年間の敗北を覆す機会

 ■コロナ雑感 前編:平成30年間の敗北を覆す機会

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2020/4/16(木) 8:30ー


地球は閉じ込められた。人は死に、葬儀もできず、泣き叫ぶ。怒りをぶつける相手がいない。経済が潰れる。神にすがる。歌う。14世紀のペスト、19世紀のコレラを凌ぐ地域に広がる。2次の世界大戦を上回る地帯が被害を受ける。戦後、核の脅威があり、地域紛争があり、テロがあり、震災や台風があり、それら危機に何とか折り合いをつけてきた人類を待ち受けたのが、疫病だった。

見えない敵をどう抑えるか。いや、戦う相手ではないのかもしれない。風邪やインフルエンザのように、折り合いをつけ、同居していく相手なのかもしれない。ペスト流行では当時の世界人口の2割が死んだという。そんな事態にならぬことを祈る。

逆に、どうだろう。コロナが経済を2割殺すと想定したら。今の経済が2割なくなったら、ぼくらは2割死ぬだろうか。んなこたああるまい。今GDPは550兆円で、2割少ない450兆円というのは1990年、バブルの時期だ。平成の始まりだ。あの頃、ぼくらは案外幸せではなかったか。豊かじゃなかったか。バブルが弾けたって、さほど気は滅入りもしなかった。令和の始まりに、仮にそれくらい落っこちたって、という腹ぐくりも、あっていい。

いったん落ち着こうぜ。

しかしまだ世界はこうもバラバラだったのか。トランプさんが中国をののしり、中国が反論し、という諍いではなく、それぞれの国の仕組みがだ。中国の独裁政権は徹底的な封鎖と顔認識技術を導入した追跡をかける。大統領制のフランスも厳しい外出規制をとる。同じ大統領制でも合衆国のアメリカは地域差が激しい。日本と同じ議院内閣制のイギリスは集団免疫の獲得という独自路線を図るもジョンソン首相が感染入院した。インドは警官が外出する民衆に腕立て伏せをさせる。ロシアは何が起きているのかよくわからない。

どの仕組みがコロナに効くのか。まだわからない。だがこれは政治と危機管理に関する地球規模の実験だ。成功・失敗のテストベッドが多数同時に走っている。他国の結果を待って対応する暇がない。いずれまた来る世界同時の危機に、今回の多元的な実験は何をレガシーとするだろう。

日本にとっては、敗戦以来の、3.11を上回る全国規模の危機。まだ評価するには早いが、今のところ踏ん張っていると見る。死者数にしろ、社会的な混乱にしろ、経済の落ち込みにしろ、他国と比べればましだろう。敗戦国であり、政治にさほどの権力を与えていないこの国は、幸か不幸かロックアウトもできない。コンビニも開いていて、ジョギングの姿も見える。

どれだけコロナを抑えられるかは、自粛と忖度にかかっている。国や自治体の「要請」という空気のようなものの効き目は、それを受けた民がどれだけ自粛し、どれだけ忖度するか次第だ。自粛自粛自粛。忖度忖度忖度。平成の日本を縮こまらせてきた主犯である、この空気を読む2つのクセに頼るほかない。

非常事態宣言が遅い。緊急経済対策は真水が少ない。消費税ゼロにしろ。マスク配れ。マスク配るな高すぎる。政府と東京都は事前にちゃんと調整しとけよ。大阪と兵庫はケンカするな。

民の大声を耳にする。たくさん耳にする。みんなお上を頼るんだなぁ。みんな信頼してるんだなぁ。お上はうまくやってるってことだなぁ。

さて、問題はデジタルである。

世間の底が抜けず、なんとか体制を持ちこたえているのは、SNSやネットで情報を共有してきた訓練のたまものでもあろう。9.11も3.11もローカルな事件だった。今回はスマホ・ソーシャル普及後初の世界的危機だ。情報空間にはフェイクもデマも多いが、それを上回る対コロナの作戦に満ちていると思う。デジタルは反ウィルスの役に立ちたい。

そしてこれは日本にとって慶事かもしれない。日本はITで30年負けてきた。それを覆す機会かもしれない。むしろ、ラストチャンスとしてコロナを活かすほかあるまい。外食、観光、興行など直撃を受ける分野もあり、産業・文化が壊れることを実に懸念する。が、一方、eコマース、映像配信、ネットゲームなど巣ごもりネット特需に沸く業界もある。eコマースのB2C比率6%を中国並みの20%に持ち上げるチャンス。eスポーツ50億円市場を韓国並みの人気に高め700億円市場に育てるチャンス。

30年前から期待されながら進まなかったテレワークもようやくリアリティーを得た。産業界のIT利用に弾みがつくだろう。東京商工会議所の調べでは、企業の4分の3がテレワークを実施できないという。IT普及から四半世紀、サボっていただけだ。やればできるし、やれなきゃ死ぬ。

https://www.bcnretail.com/market/detail/20200413_167703.html

そしてそれらに比べ遅れに遅れていた3分野、行政、医療、教育もデジタル・ファーストに飛ぶべき時期だ。

霞が関も腰を上げ、会議を遠隔で行うようになった。官僚の操作がおぼつかないシーンを見かけるが、ご愛嬌、すぐ慣れるさ。医療もオンライン初診を認めるという、超硬質の岩盤がちょっぴり動いた。

そして何より今回、躍進するのが教育である。PC1人1台の達成、オンライン教材の著作権処理円滑化などの措置が緊急経済対策に盛り込まれ、状況は一変する。日本の教育情報化はOECD最低、途上国以下と嘆き続けてきた半年前までの自分に、「イヤなこともあるけれど、いいことも起きるよ」と呼びかけてやりたい。

「緊急経済対策に遠隔教育に関する措置が盛り込まれました」

https://ichiyanakamura-thatisallfortoday.blogspot.com/2021/01/blog-post_62.html

コロナ苦境を乗り越える。同時に、それをテコに、平成の30年間ができなかったデジタル・ファーストを達成し、レガシーとする。それが開けたころ、五輪を迎える。アフター・コロナのデジタルな五輪を設計しよう。


緊急経済対策に遠隔教育に関する措置が盛り込まれました。

 ■緊急経済対策に遠隔教育に関する措置が盛り込まれました。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2020/4/8(水) 8:30ー


昨日4月7日に取りまとめられた緊急経済対策は、事業規模108兆円、財政支出40兆円という過去最大の経済対策となりました。この短期間にして政府は不眠不休でよくまとめたと考えます。

さらにぼくが評価するのは、子ども・学生諸君が一斉に休校、在宅学習を余儀なくされる中、これまで遅々として進まず後進国に甘んじていた日本の教育情報化の水準を一気に引き上げるべく、財政措置だけでなく規制緩和を含む措置を決定したことです。

経済対策には遠隔教育について下記の5項目が盛り込まれました。

・ICT環境の早急な整備:PC1人1台の前倒し整備

・遠隔授業における要件の見直し:同時双方向要件の撤廃

・遠隔授業における単位取得数の制限緩和:大学上限60単位の見直し

・オンラインカリキュラムの整備:NHK番組の利用

・オンラインでの学びに対する著作権要件の整理:許諾不要・補償金化

「超教育協会」はじめぼくらグループが政府に対し長年にわたり求めてきたこと、3月下旬にも「全ての授業をオンラインで-オンライン教育推進ステイトメント-」を発出しお願いしたことにほぼ満額回答をいただいたと認識しています。

文科省・経産省はじめ関係者に感謝と敬意を表します。

PC1人1台はぼくらは8年前から主張してきました。OECD最低水準という不名誉を脱するため、努力が積み重ねられてきました。この2年でデジタル教科書が制度化され、プログラミングの必修化も決定、昨年には超党派の議連による「学校教育情報化推進法」が議員立法で成立し、環境が整ってきました。

昨年末の補正予算で1人1台に向けた措置がなされ、数年をかけて行き渡る展望を得ました。そして今回の経済対策で、一気に前倒しとなります。半年前から見れば夢のような出来事です。できれば、コロナ前に間に合わせてあげたかったけれども。

夢見ついでに振り返れば、1人1台+デジタル教科書の旗を振り始めたころ、研究者や学界重鎮から時期尚早という反論・バッシングを受けました。早期に措置していたら今回のような現場の混乱はなかった。当時、反対していた人たちは責任を取り、この機に全員退場すべきと考えます。

単位取得数の制限緩和はひとまず実施されそうです。開学したばかりのiUものっけから全て遠隔授業。上限60単位は自分ごととしても撤廃を願っていました。

今回の臨時措置となるのか、恒久化するのか、まだ見通しがききません。教育のデジタル1stを実現するため恒久化を求めていきます。

オンライン教育の著作権問題は、文化審議会の審議を経て、許諾不要・補償金化する改正法が成立したものの、施行されていなかったものです。超教育協会でもワーキングを設け、関係者の調整に努めてきました。ひとまず運用が始まります。結局は権利者に対する補償金をどう手当するかという経済問題であり、これも来年度以降の措置を落とし込む必要があります。引き続き取り組みます。

超危機バネが働いた結果とはいえ、日本の土台をなす教育環境を一変させる対策を高く評価します。

この措置を実装する学校・自治体も大変な努力を要しますが、この変化、ICT対応は臨時一時のものではなく、恒久的・不可逆的な転換であることを認識しなければなりません。

コロナのレガシーが教育の未来となることを願います。

「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策~国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ~」から抜粋

〇遠隔教育について実施すべき事項

 新型コロナウイルスの感染拡大により、休業が長期化し教育課程の実施に支障が生じる事態に備え、特例的な措置として、以下のような柔軟な運用も含め、家庭での学習支援等による児童生徒等の教育機会確保のための施策を講ずる。

(1)ICT環境の早急な整備

 小中学校の児童生徒1人に1台のPC等端末を整備する補正予算の執行に当たっては、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、登校できない児童生徒が自宅等において端末を利用してオンラインでの授業が受けられるよう、具体的な整備の方法・手順について、文部科学省を中心に関係省庁で協議し、可能な限り早期に端末が手元に届き通信環境も含め利用できるようにする。その際、自宅にアクセス可能なPC、タブレット等があるかなどを考慮して、必要な者に対して優先的に行き渡るよう配慮する必要がある。

(2)遠隔授業における要件の見直し

 現在、遠隔授業は「合同授業型」「教師支援型」「教科・科目充実型」の3つに分類されているが、いずれも受信側に教師がいることが必須要件である。児童生徒が自宅からICTで行う学びについては、受け手側に教師が不在となるが、この場合であっても正式な授業に参加しているものとして認められるようにする。

 また、上記遠隔授業においては、「同時双方向」であることが必須要件とされている。児童生徒が時間や場所の制限を受けずに学び続けられる環境を整えるため、授業の内容に応じ「同時双方向」以外のオンライン上の教育コンテンツを使用した場合についても正式な授業に参加しているものとして認められるようにする。

(3)遠隔授業における単位取得数の制限緩和

 高校の場合は、「高等学校が、対面により行う授業と同等の教育効果を有すると認めるとき」に遠隔授業が可能とされているが、その単位数には上限(36 単位)が設定されている。大学も同様に、単位数が124 単位中60単位までとの制限がある。これらの遠隔授業における単位取得数の算定について、柔軟な対応を行うようにする。

(4)オンラインカリキュラムの整備

 オンライン上の教育コンテンツは(NHKやYouTube、各種教育機関等のホームページ等において)拡充しつつあり、文部科学省もホームページ等で紹介している(※)。児童生徒や学生が自宅等で学習を進められるように、オンラインカリキュラムの充実を図る。

(※)臨時休業期間における学習支援コンテンツポータルサイト(子供の学び応援サイト)

 https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/index_00001.htm

(5)オンラインでの学びに対する著作権要件の整理

 デジタルの資料配布を原則許諾不要・補償金とする著作権法の一部を改正する法律は公布日(平成30 年5月25 日)から3年以内に施行されるとなっているところ、これを即時に施行するとともに、令和3年度からの本格実施に向けて補償金負担の軽減のための必要な支援について検討する。


教育情報化推進法が成立しました。

■教育情報化推進法が成立しました。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2019/6/22(土) 8:30ー

                    (著者撮影)

「学校教育の情報化の推進に関する法律」(教育情報化推進法)が国会にて可決・成立しました。

 昨年、政府が提出した学校教育法等の改正により、「デジタル教科書」の制度化が実現しました。そして今回の法律は、自治体が推進計画を策定・実施する等の総合的な施策により、学校教育情報化が大きく進展するもう一つのエンジンです。

 めでたし、めでたし。

 

 以下のような内容です。

○国の責務(4条):学校教育情報化施策を総合的かつ計画的に策定・実施

○地方公共団体の責務(5条)

○学校教育情報化推進計画(8条):文科大臣が総務・経産大臣と協議し公表

○都道府県学校教育情報化推進計画等(9条):都道府県、市町村は定め公表する努力

○デジタル教材等の開発及び普及の促進 (10条)

○教科書に係る制度の見直し(11条):検定等の制度を検討・措置、不断の見直し

○教職員の資質の向上(14条)

○情報通信技術の活用のための環境整備(15条)

○調査研究等の推進(19条)

 デジタル教科書やプログラミングと言っても、PCやネットがなく、そもそも使えない。早くEdTechに行きたいがまだ遠い。国は年1800億円の予算を措置しているものの、地方交付税措置で、自治体が他の用途に流用している。それを教育分野に振り向けるエンジンが弱かった。

 デジタル教科書も制度化されるものの、紙の教科書を前提とする仕組であり、授業時間の半分までしか使えないとする規制も導入されます。これら法律・ガイドラインを見直し、利用を促進すべき。推進法11条も、教科書制度を見直すとしています。現場の裁量で前に進めるよう仕組みを整えてもらいたい。

 この法律は、与野党の超党派国会議員による「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」が策定したものです。2015年2月に発足、会長 遠藤利明衆議院議員、事務局長 石橋通宏参議院議員のほか与野党の大臣経験者はじめ83名が参加しています。

 ぼくら民間アドバイザーも作業に加わって法案を作り国会提出、このたび成立に至ったものです。元はデジタル教科書教材協議会DiTT(現 超教育協会)が2015年6月、「教育情報化推進法の制定」を提言し、これを受けて2016年10月、議連として法案を制定する方針となったのが発端です。

 以来2年半、関係のみなさまの努力に頭が下がります。ぼくらグループが情報化推進の法律が必要と訴えたのが2005年(14年前)。そしてDiTTが2012年に「デジタル教科書法」を提言したものが2018年に政府提案の学校教育法改正で実現し、このたび「推進法」も議員提案で成立、目標が達成したわけです。

 今だから言いますけど、厄介なこともありました。当初、政治的に動くのが気に召さないのか、ぼくを筆頭に、議連に出席する者は某省のブラックリストに載せられ、業界のかたがたが協力を躊躇しました。官僚は1-2年で交代するがこっちは20年交代してないし、出禁は慣れてるんで無視して走りました。

 そんなことは、いっぱい、ありました。

 教育デジタル政策の優先度を高めたい。ここに資金や人材が投下されるように。だけど政府がそれじゃムリ。「官民データ活用基本法」も議員立法だが、有能な官僚と政治家が組み、ぐいぐいデータ政策を進めた結果、そのプライオリティは政権のトップ級に上りました。

 

 G20でのデータ論議を日本が主導しています。それを見るにつけ、なぜ教育デジタル政策はそうならないのか疑問でした。

 先に進みましょう。議連で意見を求められたぼくは、世界は2周先、AI時代の教育に進んでいることを指摘しました。このため民間として超教育協会を立ち上げ、産学連携体制を講ずる。BYODやクラウドなどインフラの整備、AIやブロックチェーンなど先端の開拓の双方が大事だと申し上げた次第です。

 光は射しています。文科省は部局も担当も変わって前向きとなり、クラウド利活用の促進を挙げるようになりました。自分の端末を持ち込んで勉強できるBYODにも道が開かれます。データ+AI利用の教育にも積極姿勢を見せています。これまでにない、政策転換だと言えます。

 そしてこの法案も最後は文科省が汗をかいて通ったという面もあります。感謝申し上げます。

 現政権のAI推し、経産省のEdTech推し、さらには最近、規制改革会議が教育情報化を論点に据えたことなど、政府全体の動きも力強くなってきました。子どもたちのため、政官産学で前進させたい。法律の成立をテコに、次、行ってみよう。


知財計画2018、議論大詰め。

■知財計画2018、議論大詰め。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2018/5/5(土) 8:30ー


 知財本部 検証評価企画委@霞が関。

5月2日、知財計画2018の素案を叩く会合がありました。

海賊版サイト対策、10年後を展望した「知財戦略ビジョン」に関する議論もありました。

 海賊版サイト対策への発言。

 瀬尾委員:サイトの所在が不明だという前提で政府は対策を講じたが、広告主をつき止める等の動きも民間で見られた。こうした問題に詳しい方々と連携した対応が大事。

 福井委員:反海賊版の機運は高まり、状況も変わった。多数の関係者に参加してもらい法制度等の議論を進めるべき。

 高倉委員:現在の知財政策は利害が対立し、全員が賛成するものは少ない。ブロッキングしかり。だからといって何もアクションを取らないことはありえない。 まずアクションを起こしつつ、事後の「検証・評価」が大事。知財法だけで閉じることはない。 知財法・情報法・憲法の関係者が議論すべき。

 委員の発言に同意します。

海賊版サイト対策は、状況に鑑み、政府が動かないという選択肢はありませんでした。

議論は重ね、民間は手詰まりで、被害は深刻化していた。何らかのメッセージを発し、アクションを起こすことが必定でした。

政府が発したブロッキング対策には批判も多いことながら、ではあの状況でどうすればよかったのか、政府決定を上回る正解をぼくは知りません。

(こうすればよかったというよりよい政策があればお教えいただきたいです。)

 そしてこれからどうすればいいのか、それが次の問いです。

 他にも発言多数。3つだけメモします。

 福井委員:アーカイブは社会の知識インフラ。 人材育成、多言語発信、権利者不明問題への対応が重要。 プラットフォーマーと知財との契約関係の整理も大事になってくる。

 重村委員:2030年を展望するなら1/3が高齢者になる社会であり、高齢者に対する知財戦略が欠けている。

 瀬尾委員:時代が大変化する切り替わりだが緊迫感が薄い。 著作権法改正が1年遅れている。 われわれは2年議論のアドバンテージがあったがこれでまた後れを取る。

 ぼくは座長として締めのコメントを話しました。

「柔軟な権利制限に関する著作権法の改正、デジタル教科書を認める学校教育法の改正など知財計画に掲げられた事項が国会に諮られています。

 今年の計画も重要事項が多く、政府にはその実行を求めたく存じます。

 知財新ビジョンはかなり混沌とした議論になりました。

 前回のビジョンはスマート化を見据えて、スマホ、クラウド、ソーシャルサービスによる環境変化に対応するもので、デジタル化の延長線で考えられるものでしたが、今回、AI、IoT、ブロックチェーンの新時代は、人類の歴史を分けるほどの大きな変化を捉えられなければならないもので、まだ全体像が見通せない中での作業でした。

 なので、ビジョン自体が今後も変化し得るという、変化がサステナブルになったという覚悟が求めらるのだと思います。

知財計画も、変化が続く中で策定していく、という認識が大事になっていると考えます。

 海賊版サイト対策は、政府がブロッキングを認める方針を示したことが議論を呼んで、批判も多いのですが、その結果、問題のサイトがひとまず見られなくなり、この問題に対する認識も高まったという効果を生みました。

 その法制度を整備するという、より重要な宿題が立ちはだかっています。

 私が知財政策について従来から主張していたのは2点で、まず日本の中で知財政策の優先度プライオリティを上げること。

 本件が話題となることで、良くも悪くも、図らずもその重要性が認識された面はあると考えます。

 もう1点は、知財政策とIT政策との融合を進めることです。

 現在のコンテンツ政策のほぼ全てがIT政策と関わります。今回の問題は著作権の保護と通信の秘密という、その本丸の調整問題です。今後もそのような案件は増えます。

政策の企画決定方法の知恵を絞る必要があると感じています。」

 さらなる調整を経て知財計画2018がとりまとめられます。改めて報告します。


シェアリングエコノミー中間報告

■シェアリングエコノミー中間報告

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2017/10/14(土) 8:30ー

 内閣官房IT戦略室が主催する「シェアリングエコノミー検討会議」に参加しました。総務、経産、厚労、国交、環境各省も参加しています。中間報告書がとりまとめられました。ポイントをピックアップしてみます。

(内閣官房IT戦略室「シェアリングエコノミー検討会議」資料より)

 まず、シェアリングエコノミーの特徴として、7点が整理されています。

1) B2CからC2Cへ

2) プロのサービスからアマチュアのサービスへ

3) シェア事業者はサービス提供主体ではない(サービスを提供する個人が責任を負う)

4) タテからヨコへ(業法での品質管理ではない)

5) 既存リソースの一時的な市場化メカニズム(活性化されていない資産の市場化)

6) 提供者と利用者との信頼(どちらも相手の信頼度を吟味せよ)

7) 事後評価の仕組み(信頼メカニズムとしての提供者・利用者相互レビュー)

 ポイントを押さえた整理です。

 情報通信白書によるシェアエコ市場規模の推計は、2013年で世界で150億ドル、2025年には3350億ドル。国内市場は2014年度233億円、2018年度に462億円だそうです。

 しかし、日本は諸外国と比較して、シェアリングエコノミーの認知度や利用意向、利用率が低いことが明らかになっています。

 これも情報通信白書によれば、Airbnbのような民泊の利用意向は中国(84.2%)、韓国(77.6%)、米国(55.0%)、英国(44.2%)、ドイツ(31.6%)、日本(31.6%)。

 Uberのような自家用車ドライバーサービスは、中国 (86.4%)、韓国(71.5%)、米国(53.5%)に対し、日本の利用意向は31.2%。

 また、シェアリングエコノミーのデメリット・利用したくない理由として、日本は「事故やトラブル時の対応に不安がある」が特に多くなっています。

 これを踏まえ、シェアリングエコノミーの発展を促すのが会議の使命。新体験の提供と経済成長への貢献、資源の効率利用、共助の仕組みの充実、イノベーション創出などの効果を実現するための施策として、以下3点の方向性を検討しました。

1) 自主的ルールによる安全性・信頼性の確保

 事業者団体による自主的なルール整備を促す。

2) グレーゾーン解消に向けた取組

 法令(業法)の適用が不明確な場合が多いため、その解消を図る。

3) 自治体等による先行的なベストプラクティスの構築・共有

 シェアリングエコノミーのメリットを社会全体に浸透させる。

 自主的ルールに関し、「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」の基本原則として、(1)安全であること、(2)信頼・信用を見える化すること、(3)責任分担の明確化による価値共創、(4)持続可能性の向上、の4点を挙げています。

 そのうえで、サービス提供に関するリスク等を自己評価することとし、弁護士等を活用して明らかな法令違反を調査することや法令違反とならない根拠を明確化すること等を求めています。

 シェア事業者が遵守すべき事項として、連絡手段の確保、利用規約の策定、法令遵守、評価の仕組み、相談窓口の設置、漏洩等に対応する体制の整備、従業員の教育といったことがらを求めています。

 ここでのポイントは、これを政府が規制として下ろすのではなく、民間が自主的ルールを講ずることが前提になっていること。政府はその環境を整え、支援するというスタンスです。官民連携のいわゆる「共同規制」の中でも、かなりマイルドなアプローチ。よい姿勢と考えます。

 会議では、これを補強し、個別のシェア事業者が自主的ルールに適合していることを証明する「認証」の仕組みを導入すべきとの提案がありました。認証のビジネスモデルや運用体制をうまく構築していくことが今後の宿題です。

 もう一点、この会議のポイントになったのはグレーゾーン解消策。従来型のサービスごとに定められた法令=業法との衝突問題です。現行法の規制が適用されるかどうか不明確なため、サービスの提供や行政との連携が進まないことをどう解決するか。

 これに対しては、「グレーゾーン解消制度」「企業実証特例制度」の活用を推奨することとなりました。これは産業競争力強化法に基づく措置で、事業を所管する大臣が、事業者の新たな挑戦を支援する立場に立って、規制を所管する大臣と協議を行う仕組みです。

 この仕組みはぼくも会議に参加して初めて詳しく知りました。民間のチャレンジを推奨する、こうした制度をきちんと使うことは大切です。

 さらに会議は、政府の規制改革推進会議等の場で、シェアリングエコノミーの推進に関し、 国家戦略特区等の活用も含め、幅広く議論することを求めました。この中間報告をテコに、政府での政策優先順位が上がることを期待します。


デジタル教科書推進のQ&A

■デジタル教科書推進のQ&A

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2017/2/11(土) 8:30ー


 デジタル教科書を正規の教科書として導入する政府方針が固まりつつあります。旗を振ってきたデジタル教科書教材協議会(DiTT)も社団法人化し、活動を強化します。これを受け、取材が増えてきました。Q&Aにしておきます。

・教育現場での普及状況は?

 端末は小学校6.2人に1台。1人1台は遠い。日本は後進国です。デジタル教科書はまだ正規扱いではなく、法改正が必要です。

・デジタル教育のメリットは?

 創造・共有・効率。楽しくて・つながって・べんり。AV機、ネット、計算機の機能を活かしてできること全てがメリットです。

・成果はどう現われる?

 各種実証研究により、学習意欲、理解度、思考表現力の3点の効果が認められています。

・なぜいま必要なのか?

 学力低下(OECD PISAの順位低下)に加え、日本の子どもたちは他国に比べ学習意欲に乏しいという状況。問題解決力やコミュニケーション力など新しい力を身に付ける必要性も世界的に求められています。

・学校に導入する必要性は?

 暮らしも仕事もスマホなどデジタルが不可欠になっていて、子どももデジタルで遊んでいるのに、学校だけが使えない状況です。特に教科書は紙しか認められない制度となっており、まずはその課題をクリアすべきです。

・理想のデジタル教育とは?

 ありません。数千年のアナログ教育でさえもなお改善中であり、理想に到達していません。デジタルも100年後も改善中のはず。まず始めることです。

・具体的な利用シーンとは?

 教室の中での教え合い学び合い、学校外との交流などが広がっています。デジタル+アナログ、バーチャル+リアルを混合させ自然に使っている例が多くみられます。

・先生が使えないのでは?

 2歳児だってタブレット使ってるのに失礼ではないですかねw。現にベテラン教師ほどデジタルでいい授業をするという報告があります。

・日本が後れた原因は?

 学力が上がるのか、使いこなせるのか、姿勢が悪くならないか、などさまざまな疑問が寄せられていますが、根本は過去のアナログ教育で日本が成功していたことでしょう。デジタルで一変することへのばくぜんとした不安、だと思います。

・普及の格差の原因は?

 自治体の首長のやる気。教育情報化予算は確保されているが自治体の裁量で道路などに化けているのです。教育情報化と他行政の優先度の問題です。

・文科省の中間まとめをどう受け止めるか?

 紙の教科書をベースにデジタル化し、その範囲で検定にかけるという結論は妥当な現実解と考えます。一方、デジタル教科書のコスト負担を家庭に求めるのは問題。紙と同様、国が予算をつけて無償配布すべきでしょう。

・課題は?

1) デジタル教科書を正規化する法制度の整備--国会。

(学校教育法などに加え、著作権法の改正が重要。)

2) デジタル端末の整備--自治体。

(PC整備は小学校6.2人に1台。これも主要国で最低レベル。自治体には国からこのための交付税が措置されているので、自治体がしっかり予算を組むべき。)

3) ネット環境の整備--政府。

(端末のハード、教材のソフトが揃っても、学校のネット化がネックとなる。セキュリティーやプライバシー保護などの問題を解決しながら学校のネット化を進めるべき。)

4) 端末・教材流通の低廉化--民間。

(中古端末流通システムとか教材著作権処理機関など民間が取り組む課題も多い。)

・おカネがかかるのでは?

 日本は公教育への支出が少なすぎるんです。社会としてカネをかけましょう。

・民間の取組は?

 中古端末の流通、教材配信システム、著作権処理機構など民間が取り組む課題も多い。教育を産業として拡大する努力をすべきです。

・教育を産業にするなという指摘があるが?

 教育20兆コストのかなりの割合がデジタル市場となります。日本が産業化しなければ、海外のハード・教材業界のものを使うだけのこと。産業化し、投資や海外展開を促すことでいい教育環境が整備されるのです。

 デジタル教科書の制度化が進むだけでなく、プログラミング教育を必修化する方針も固まりました。総務省は電波利用料を教育情報化に活かす方針を打ち出しています。超党派の国会議員連盟も教育情報化を総合的に推進する法案の策定に動いています。DiTTが推進してきた環境整備が力強く進み始めました。

 こうなると、民間もがんばらなければなりません。教材の著作権処理、プログラミング教育の開発、クラウド環境の整備、情報リテラシー教育の強化など、民間サイドですべきことに力を入れてまいります。


知財ビジョン、3つの方向性

 ■知財ビジョン、3つの方向性

―Yahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/11/30(土) 9:16―


 政府・知財本部が策定した「知財ビジョン」。過去10年の知財戦略を総括し、今後10年の戦略を立てるものです。WGの共同座長として、とりまとめを担当しました。

 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/vision2013.pdf

 まず冒頭「はじめに」、今後十年の知財政策を語るメッセージとして、日本にとっての知財の位置づけと、その政策の位置づけを明記することを心がけました。「知的財産をその強みとして世界のリーダーシップを取っていくべき」というメッセージを出しました。

 資源も安価な労働力もない日本が、グローバルで連結した世界で自ら望む位置を占めるには、知財の生産と活用以外に道はないということ。知財の政策が全政策の中で最重要であるということをにじませたいと考えたのです。

 個人的には、知財戦略は国防、教育と並ぶ国政の柱だと思いますし、産業政策の面でも、農政、あるいは工業・商業の政策よりも重要になっています。TPP交渉でも、未来を担う分野として重視する必要があります。そうした視点を示したいと思いました。

 今回、3点について、大きな方向付けを行いました。

1 政策転換

 ユーザが作成するコンテンツ、公共・教育、ビッグデータに力を入れることをトップ項目に据えました。

 過去10年、コンテンツ政策は、エンタテイメントのビジネスを中心に考えられてきましたが、これからの10年は、国民全体の問題として捉えるというスタンスが明確になっているということ。プロが作る作品だけでなく、みんなが生むコンテンツが主役になっていく。

 日本の強みは、みんなの力。子どもも大人も映像や音楽を産み出す創造力。これを政策で後押ししたい。

 今回、教育情報化にも踏み込んで対策を記述しています。私はデジタル教科書教材協議会の事務局も担当していますが、関係者からはこの記述が非常に注目されています。政府の本気度が問われています。

  これは同時に、コンテンツ産業の拡大から、コンテンツ自体の創造・利用へという広がりを見せているということでもあります。コンテンツ産業の拡大から、全産業への波及が重要という視線です。コンテンツ産業12兆円、IT産業85兆円から、GDP470兆円に視野を広げる必要があります。

2 プライオリティの向上

 コンテンツへの資源配分の重点化と政策資源の充実を明記しました。

 コンテンツ政策、知財戦略が日本の政策に占める位置づけを高めることが重要です。農業社会、工業社会から情報社会に移行する、というのは小学生でも話すようなことですが、では政策の優先順位はというと、その逆だったりします。日本は知恵で喰うしかなく、その政策の重要性はしかと位置付けたいと考えました。

3 推進体制の整備

 政府の一体的な取組、総合的な推進体制。

 知財本部の議論も8つの省庁が一つの机で前向きに施策を出し合い、連携が進むようになりました。これが最大の成果と考えます。また、「クールジャパン推進会議」も設置され、私はその下に置かれた「ポップカルチャー分科会」の議長も担当したのですが、それらとの政策調整も重要です。

 そして、一層の連携が必要となっています。ビッグデータなどはIT戦略本部でも議論されていますが、ハードとソフトを一体にして考えるのは当然。90sウィンテルの時代には、ハードとソフトが分離されていましたが、AppleはiPhoneとiTunesを一体にしており、GoogleもAndroidでハード戦略を進め、アマゾンもkindleで攻めています。日本の戦略もITと知財を一体で考える必要があります。


ぼくは政策屋です!

 ■ぼくは政策屋です!

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/9/25(火) 14:35ー

 まずは自己紹介からいきます。

 ぼくは政策屋です。パンクロッカーだったんですが、断念し、潜ってガリ勉し、官僚になりました。14年、政府にいました。大学(MIT、スタンフォード、慶應)に転出して14年。社会人になって官民でちょうど半々です。51歳。自分で表現・創造するクリエイターから、そのための舞台や社会を作るプロデューサとなることに転じ約30年。ずっと政策屋として生きてきました。

 政策屋なのに霞ヶ関から大学に転出したのはなぜか?日本の役所にいたんじゃ政策遂行に限界があると感じたから。官庁のタテ割り、政治からの従属、国内に閉じた論理構造では、グローバルでダイナミックでボーダレスな経済社会の政策が実施しにくいと思ったから。

 政府を脱出して参加したMITメディアラボという研究所は、当時150社もの企業スポンサーと強烈な同盟を結び、ビジネスやサービス、商品の工場であるだけでなく、政策メッセージを発信する増殖炉でもありました。ぼくが関わった$100パソコン構想は途上国を中心に世界35か国が受け入れています。

 その4年後、日本センターの所長を務めたスタンフォード大学は、MIT以上に政治や経済に近い。コンドリーザ・ライス教授はブッシュ父子政権に参画しましたし、ジョン・ヘネシー学長はGoogleの取締役として企業発展に邁進しました。

 スタンフォード日本センターはYahoo!と密接でした。ジェリー・ヤンさんが博士課程の頃そのセンターにいて、その事務をしていた日本女性と結婚し、帰国後Yahoo!を創業したんです。ぼくが所長だった4年間は富豪となったヤン夫妻の支援によって日米研究プロジェクトを進めていたんです。その後メディア系の大学院を設計しようとしていた慶應義塾大学に参加して6年になります。

 やってることがバラバラ?そうかも。でも、やりたいことは一貫してメディア政策の企画・実施です。しかも、政府に提言するだけでなく、自ら組織やプロジェクトを設計し、実行に移すことが本務。ミッションは産学プラットフォームを作ることです。

 んなコトばかりやってるので、コイツ学者じゃねぇという批判を受けます。そうなんです。学術論文に注ぐ余力があれば、産官学プロジェクトに注いでしまいます。教育に割く時間があれば、政策立案に割いてしまいます。すみません。でも、日本はそこを強化しないと死ぬと思ってるんですよ。

 慶應に移って実行していることは、まずは政策作り。メディア融合法制、コンテンツ政策、IT特区、教育情報化などを企画し、現実の政策として発動するまで運動しています。

 デジタルサイネージなど、産官学の連携によるメディア開発も進めています。デジタル教科書の普及促進、子ども創作ワークショップの開発・提供なども政策プロジェクトとして手がけています。そのエンジンとして、企業コンソーシアムや社団法人、NPO、株式会社など活動に適した組織も立ち上げ、運営にも身を投じています。

 そんな政策屋のやってること、これからぼちぼち案内していきます。



リアリズムの田中角栄

 ■リアリズムの田中角栄 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/9/7(土) 11:30ー  早野透著「田中角栄」を読んで、改めて田中政治って何だったのかなと考えています。  毀誉褒貶のチャンピオン。金権政治、官僚操縦、数々の議員立法を通した政策マン。評価はさ...