2021/04/23

第二、第三の初音ミクを

 ■第二、第三の初音ミクを

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/11/24(土) 8:03


 初音ミク様。呼び捨てにするのがはばかられる偉人です。もう5年も前に誕生した音声合成DTMソフトが3万6000曲の作品を生み出し、10万を超える作品の動画がアップされ、再生回数が数百万回にのぼるという、世界最大の持ち歌を誇る歌手に育ちました。


 今年1月、ロンドン五輪のオープニングを歌って欲しいアーティスト投票で、並みいるアーティストを抑えて1位を獲得、それも海外のサイトからの投票が多かったといいます。アメリカで初音ミクのライブを開くと、ほとんどの客が日本語でミクの曲を合唱するといいます。


 初音ミクのパワー源は「技術、ポップ、みんな」の3点だと思います。


 まず、ボーカロイドという「技術」。誰もが専属歌手を持つことができるようにした技術。作詞・作曲から演奏への壁を取り除き、一流のプロも使う歌唱クオリティを開放したわけです。


 そして、カワイイ「ポップ」なキャラクターという身体性を与えた映像表現。16歳、158cm、42kg、これぞ萌え、という要素を盛り込んだコンテンツです。ものづくり力=技術と、表現力=コンテンツという日本の2大強みをドッキングしたところに実像を結んだのです。


 さらに、「みんな」が作る産業文化の形成。ニコ動やYouTubeといったソーシャルメディアで二次創作、n次創作と曲や映像の連鎖が広がりました。作詞・作曲する人もいれば、映像を作る、歌う、演奏する、コスプレ、踊る、さまざまな様式での参加が許され、奨励される。ユーザによる創作、共有、拡散の文化です。


 ソフトウェアのオープンソースは、技術の増殖でした。初音ミクはコンテンツのオープンソース。文化の増殖です。誰もがマンガを落書きし、誰もがタテ笛を吹くことができる「みんなの表現力」がクールジャパンの源。初音ミクの産業文化が日本から生まれたのは必然です。


 すんなり海を渡りました。J-Popとアニメの組み合わせが国境を越え、伝搬力、発信力を発揮しました。初音ミクの発声技術は日本語を前提にしているのですが、それがかえって日本語の魅力を発信するのに役立っています。


 いまやミクは国際アイドル。これから世界的にスマホやソーシャルサービスの利用が本格化していきます。世界市場でのコンテンツビジネスも期待できます。「リアル」の市場も期待できます。既にオモチャやお菓子などのグッズが販売されています。ライブやコスプレイベントを展開するなど、ユーザの「もりあがり」をビジネスにしていく路線も広がります。


 ユーザみんなが自分で作品を作る、という新しいビジネス。みんなで1人のキャラクターを使って作品や商品を生むというのは、これから発展が見込めるビジネスモデルでしょう。


 課題もあります。次々とユーザが作り、ビジネスが生まれていく、その権利や処理ルールをどうするのか。さまざまな企業が関連してくることにより、係争も発生するかもしれません。


 さらに大きな課題は、第二、第三の初音ミクをどう生んでいくのか、長期的な環境の整備です。たまたま生まれ、みんなで育てた初音ミク。大人から見たら眉をひそめるような文化かもしれませんが、それが日本を背負って海外で日本の評価を高めてくれている。こうした創造性あふれるよい子を、もっともっと生み続けたい。そのメカニズムを今のうちに築いておきたいものです。


2021/04/14

テレビは融合からスマートへ

■テレビは融合からスマートへ

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/11/17(土) 8:30ー


 地デジカくん、このごろ見ませんね。どこに行ったんだろう?

 地デジ、地上波放送のデジタル化は2011年に完成しました。20年前にはタブーでした。アナログのテレビを死守、が業界と政府の一致した意見。94年に政策が転換され、ようやく実現したんです。高速ネットの全国整備も行われ、日本は放送・通信ともにデジタル融合ネットワークが完成しました。

 「通信・放送の融合」。2007年にホリエモンがフジサンケイグループを買収したいと言い出しクローズアップされた言葉ですが、これも2011年に場面が転換しました。激しい論議を経て、いわゆる「通信・放送融合法制」が成立、同じ周波数を通信にも放送にも使うことができるなど世界でも画期的な規制緩和が断行されました。日本は優れた環境が整ったのです。

 「融合」も20年も前から議論されてきました。これもかつてはタブー。放送業界は放送にITが侵入することに否定的だったんです。しかし近頃はネット配信や、ケータイ向け放送や、見逃しIP視聴などに力を入れています。NHKは2008年末にNHKオンデマンドをスタート。民放各局も徐々に番組を配信し始めました。ネット事業が黒字転換をみせるようになり、吉本興業やエイベックスなど番組制作側も積極的に攻めています。

 ただ、海外と比べたら、未だヘッピリ腰。NHKオンデマンドに先行すること3年の2006年1月、米国でグーグル、ヤフー、マイクロソフトがアップルに続き映像配信ビジネスを発表。これが号砲となり、対するCBS、NBCなど放送界は電光石火、これらIT企業群と提携、番組を配信し始めました。放送局主導の配信サイトhuluは日本上陸も果たしています。同時に欧州もBBC、フランスTV、ドイツZDFなど国営・公共放送局が融合を主導しました。

 さらにニューズ・コーポレーションによるダウ・ジョーンズの買収、マイクロソフトとヤフー、グーグルを巡る攻防、グーグルによるモトローラ・モビリティの買収など、もはや通信・放送という狭い枠組は色あせて、新聞、出版、コンピュータなどメディア全体を巻き込む世界的な再編劇が繰り広げられています。ここに日本企業の出番はありません。

 しかも、です。後追いながら日本がようやく融合路線にアクセルをふかし始めたとたん、世界の舞台も改まりました。「スマートテレビ」です。PC、スマホ、タブレットのマルチスクリーンが広がる中で、この1-2年、改めてテレビのスマート化が話題となっています。

 グーグル、アップルらかつて号砲を鳴らした陣営がスマートを合い言葉にテレビ画面を奪いに来ているのに対し、タイムワーナー、コムキャストら放送陣営もチャンスとばかりに動く。AT&Tやヴェライゾンなど通信会社も本気。欧州でもBBCがBTと組むなど、以前の融合バトルと同じ様相です。

 スマートテレビは、テレビとネットが結合し、ソーシャルサービスとも連動した新しいサービス。ただ、まだどの陣営も明確なモデルを描けてはいません。進路が見通せません。融合で出遅れた日本。スマートではどうか? 実は放送、IT、メーカ、さまざまなトライアルが走っています。遅れを逆手に取って、スマートでは逆転したい!


日本の学校を世界一のデジタル環境に

■日本の学校を世界一のデジタル環境に

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/11/10(土) 8:24ー


 タブレットパソコンで「未来の学校」の絵を描いた。先生はみんなの絵を電子黒板で見せる。そして、実際に設計できそうか、意見を聞く。みんなが書き込む。話もする。どんな学校がいいの。正解は1つじゃない。考える。


 授業の模様は家からも見られる。帰ると、家族がアイデアを出す。明日、学校で発表してみようと思う。 地域の人も見る。給食に意見のあるスーパーの経営者が未来の学校を考える授業に来てくれることになった。


 そんな近未来はどうです?いずれ学校でも家庭でも、情報端末やデジタル教材を使って、これまでにない教育・学習ができるようになります。日本の子どもたちに豊かな環境を与えたいですよね?


日本の教育はヤバい。OECD生徒の学習到達度調査2009年度の結果は、数学的リテラシー9位、科学的リテラシー5位。2000年度に数学的リテラシーで1位、科学的リテラシーで2位を誇った日本の成績はガタガタと下がったんです。


 日本は教育に対する公的支出の対GDP比がOECD諸国で最低レベルで、子どもたちが学習に使えるコンピュータなどの機材も恵まれていない状況にあります。不登校児童も増え続けていて、勉強に対する意欲も国際的にみて低いんです。


 そこで情報化の出番。学力や学習意欲の向上に情報化が寄与するという評価はほぼ定着しています。ところが、日本は動きが遅かった。欧米は言うに及ばず、韓国やシンガポールは2013年にPC1人1台環境でデジタル教科書の本格利用を予定しています。日本の政府目標は2020年ですから、7年!も遅れてしまいます。


 「100ドルパソコン構想」。世界中の子どもたちに1人1台、PCを与え、インターネットでつなげることを目的とするMITメディアラボがスタートさせたプロジェクトです。35か国、130 万人の子どもたちが使っており、ウルグアイではすべての子どもに配布されたといいます。実はこれは、アスキー創業者の西和彦さんと私のグループが、2001年にMITに提案したアイデアがきっかけとなったものでしてね。言い出しっぺの日本が遅れているんです。くやしい。


 とはいえ、政府を頼ることもできません。フラフラしてますんでね。そこで2010年、民間でタッグを組み「デジタル教科書教材協議会」(DiTT)が設立されました。政府計画を5年前倒しし、2015年には「1人1台の情報端末でデジタル教科書が使えること」を目指しています。130社の会員企業が集い、ぼくが事務局長を務めています。


 政府は20の小中学校を選んで実証実験を進めています。ぼくらDiTTもこれと連携しつつ13の学校プロジェクトによる実証研究を始めました。現場の先生がたと問題点や方策を話し合うのはもちろんですが、ぐっと力を入れるよう国会に掛け合ったり、やる気のある知事や市町村長と協議したりしています。


 課題も山積しています。コストは誰がどう負担するのか? 学校現場は対応できるのか? 忙しい先生の負荷を増すことにならないか? 画一的な教育、無味乾燥な教育がはびこるのではないかという不安にどう答えるのか?---こういうのを全部つぶしていきます。


 学校をワクワクしたデジタル環境へと進化させたい。日本の学校を、世界一のデジタル環境にしてあげたいと思います。


ビビり列島の空気を換えません?

■ビビり列島の空気を換えません?

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/11/3(土) 8:36


 ある小学校がママ友同士がSNSで交わるのを禁止しているとか。学校へのクレームの元になるからとか。ううむ、あいかわらずビビってるなぁこの国は。


 昨年の震災後、被災地以外の土地で、集まりや遊びを自粛し、下を向いて歩くのが礼儀のような空気がたちこめました。テレビのCMもしばらく自粛されていました。復興に当たってはこれが最大の敵だと考え、ぼくは白い眼で視られながら「自粛を自粛」する旗を振っていました。


 震災後に始まった風潮ではありません。ビビってるなぁと明確に感じたのは、2005年の姉歯問題。建物の構造計算書を偽造していたことに始まる一連の事件です。すぐさま「建築基準法」が強化され、全国的に建設業が冷え込み、景気減速につながりました。


 多重債務問題の解消と借り手保護を理由として「貸金業法」の規制を強化し、中小企業の資金繰りが厳しくなるという事態も発生しました。医薬品をネットで売ることを禁止する「薬事法」の2009年改正も、ヤバいことはとりあえず締めとこう、という流れの結果でしょう。


 不必要な自縄や自粛、過剰な引きこもりが続きます。2009年のインフルエンザ流行も不思議な様相を呈しました。世界的な流行の中でなぜか日本だけ、老若男女がみなマスクを着用する光景を全国でみせ、海外からは日本はそんなに危険なのか?と受け止められました。


 食品偽装でも、2007年の赤福の消費期限や白い恋人の賞味期限などを巡り、ヒステリックなまでの報道や消費者の対応が見られました。そして今年のレバ刺し禁止へとつながります。いずれスシも生野菜も禁止か?


 ぼくの関わった案件では、2008年、青少年ケータイ禁止。出会い系やネットいじめがあるからといって「青少年インターネット環境整備法」の制定、そして地方自治体の条例による規制に至りました。日本が強みを持っていた産業に凍え上がるほどの冷や水を浴びせました。


 他にも、地震直後にデジタルサイネージの点灯を自粛したり、デジタル教科書の推進に不安が表明されたりするのも、個別の理由の皮をむいていくと、結局「なんとなく」やめておこうよという根拠のない消極に突き当たります。官も民も、ともにです。


 90年代には規制緩和を通じて産業を活性化する対策が多くの業界で採られましたが、この10年、安心・安全を求める声が上がるたび逆に過剰なルールが導入され、社会経済活動が萎縮して、かえって世の中が不安定になっている。縮こまりが進みすぎて、世間がコチコチに固まっている。そんな気がしません?


 マスクをすることが個々人にとって安心を増すことであったとしても、みんながマスクをしないと外出できないような空気が正常なのかどうか。景気が悪くなり、少子高齢化で国が衰え、政治も頼りにならず、みんなが内向きに縮み始めた。成長していたころは、もっと大ざっぱで、おおらかで、不潔で、適応力や危機対応力があったと思うんです。


 震災後の自粛モードは終了。世間はそう受け止めているかもしれません。でも、それ以前からの重く湿った空気は変わりません。空気を換えませんか?ビビりへの特効薬はないかもしれません。ここはとりあえず、みんなで何かを声に出してみるのがいいかも。呪文。そうですね、こうしましょう。


「レバ刺し解禁!」


2021/01/18

創作活動のメッカ、ワークショップコレクション

■ 創作活動のメッカ、ワークショップコレクション

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/10/27(土) 8:31ー

 幾重にも押し寄せる親子連れの波。慶應義塾大学の日吉キャンパスへと続く数百メートルの通学路。年に一度、この町は子どもたちの歓声に包まれます。コンテンツを創作する子ども向けワークショップの展示会「ワークショップ・コレクション」です。

 従来のアナログの表現手段と最先端のデジタル技術を駆使した創作活動を一堂に集め、紹介します。ワークショップに関わる人々、研究者、保護者、企業、学校関係者、アーティストたちの出会いを促進する場でもあります。

 8回目となる今年2月の来場は1日で5万人! 世界最大の子ども創作イベントです。実は日本はこうした活動の本場なのです。知らなかったでしょ?NPO法人CANVASと慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)が主催しています。

 参加したワークショップは90組。ねんど細工、手紙作りなどアナログもありますが、デジタル系も豊富。パソコンを使ってアニメを作る。パソコンでキャラクターを作ってゲームを作る。自分だけのデジタル新聞を作る。ロボット画像を作って戦う。iPad2でオリジナル楽器を作る。自分だけのオリジナル・ウェブブラウザを作る。PCでプログラミングをしてロボットを操作する。デジタルで触覚を伝える。キャラクターを作って世界のひとたちとバーチャルに対話する。スゴいんです。

 よしもと芸人と子どもたちがユニットを組み、一緒にネタを作り披露するワークショップもありました。ワッキー(ペナルティ)、ジョイマン、もう中学生、大西ライオン、佐久間一行、鉄拳、レイザーラモンHGといった面々が子どもたちとネタづくりとパフォーマンスに取り組んだんです。芸人より子どものほうが会場の笑いを取るペアもいて、芸人も手を抜けません。

 今年は企業出展が本格化してきました。ベネッセ、無印良品、朝日新聞、ECC、WAO、フジテレビ、マイクロソフト、Yahoo!、第一生命、しくみデザイン、オリンパス、NHK、NTTといった顔ぶれ。そして、デジタル色が強くなりました。特に、タブレット端末やスマホを用いたワークショップ活動が目立ちました。

 しかし、毎年変わらないのは、混雑。ごめんなさいね。需要が倍々に高まっているのに対し、供給が少なすぎるんです。年に一度のイベントではなく、常設のワークショップコレクションが各地に開かれていて、いつでもどこでも体験できるようになればいいと思いません?

 ハリウッドを凌駕するようなクリエイターやプロデューサーをどう生むかという高等教育は重要な緊急課題。コンテンツ産業政策の本丸です。しかし同時に、デジタル技術が全ての人に行き渡り、全ての人が表現する時代には、創造力と表現力の全国的な底上げ策がもっと大切になります。初等教育の問題。教育政策、地域政策です。ワークショップコレクションは、その方向性を示しています。

 政府は知財計画で「創作系ワークショップへ参加する子どもの数を2020年には年35万人にする」という国家目標を立てました。実はこれはワークショップコレクションへの参加者数を念頭に置いてはじいた数字だったのですが、1日で5万人まで来てるんだから、がんばればすぐにでも達成できそう。がんばるぞ!


20年ぶりのメディア転換点

 ■20年ぶりのメディア転換点

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/10/13(土) 8:44ー

 今回はちょいと授業風に。

 この2年、メディアは20年に一度の大波に洗われました。90年代初め、アナログからデジタルへの転換点「マルチメディア」ブームがありました。テレビ、電話からPC、ケータイへ。アナログ放送網と電話網からデジタル放送とインターネットへ。それ以来の転換点です。3つの状況が現れました。


1) マルチデバイス

 スマートフォン、電子書籍リーダー、タブレットPCなど、新型のデジタル・デバイスが一斉にラインアップされ、急速な普及を見せました。大小さまざまの、モバイル型あるいは壁いちめん据え置き型のディスプレイが登場。50年間君臨してきたテレビ、20年間広がってきたPCとケータイ に次ぐ、いわば「第4のメディア」の君臨です。しかも2012年の家電ショーは「スマートテレビ」一色。多彩なメディアがまたしてもTVに集約されていくのか? 改めて混沌とした場面を迎えています。


2) クラウドネットワーク

 2010年はブロードバンド網の全国化目標年でした。一方、94年 に政策が始まった放送ネットワークのデジタル化、つまり「地デジ」は2011年に完成。日本は世界に先駆け、通信・放送を横断するデジタル高速ネットワークを整備しました。メディア融合の環境が整いました。明治以来、郵便局整備と並び国家が推進してきた情報網の整備が完了しました。もうインフラ政策は要らないのでは? 国の政策も大きく変わります。


3) ソーシャルサービス

 マルチメディアが唱えられた20年前から、「コンテンツ」の重要性が唱えられてきました。2000年代に入ると、政府はコンテンツを国の戦略成長産業と位置づけました。しかし、コンテンツ産業は元気がありません。それに代わり、ソーシャルメディアが花盛りです。情報量も収益もソーシャルに集中しています。使われすぎで、炎上やらコンプガチャやら問題さえ起こしています。コンテンツが真ん中に座りながらも、それをネタにつながった人々がつぶやき、段幕を作る。そちらに関心が移り、主役を張る状況は当分続くでしょう。コンテンツからコミュニケーション、コミュニティへ。

 メディアを形作る1)デバイス、2)ネットワーク、3)サービスの3要素がそっくり入れ替わるわけです。90年代初頭のマルチメディアは、PCという万能の集約型マシンを作ろうとするものでした。だけど、ここに来て登場した新メディア環境は、その逆。ふたたび、バラバラで多様なデバイスが現れて、それらをネットワークでつないで同時に使いこなす。

 重要なのは、デバイスやネットワークが「ソーシャル」によって価値を持つということ。5年ほど前まで、検索エンジンのようなネットの向こうの「技術」が社会を制圧するかに思われていたのに、技術が進化して、マルチメディアが完成したら、結局のところ、人と人のつながりが価値を持った。ともだちや知り合いや信頼を置く専門家といった「人力」が力の源泉となった。機械や技術からヒトへ。それがこの20年の帰結だったわけです。アナログの勝利であります。

 悪くない。デジタルは、ここからやっと面白くなるんじゃないでしょうか。


おまえこそ回し者だろう。

■おまえこそ回し者だろう。

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/10/20(土) 8:02ー

 ぼくは政府やIT業界の仕事をよく引き受けるので、御用学者だとか業界チョウチン持ちとかいった批判を受けることがあります。御用だ!と。でもね、そういうこと言ってる人って、逆に霞ヶ関や業界や外国の回し者だと思うんです。

 御用学者ってのは、政府や政権の意を受けて、その都合のいいように太鼓持ちをする輩のことですよね?ところが、ぼくはけっこう政府の逆張りなのです。

 民主党政権が掲げた日本版FCC(通信・放送委員会)設立に真っ向から反対し、話が潰れるまで論陣を張りました。電波政策に対しても開放路線を主張、電波特区も推進しました。通信・放送融合法制も政府の意向を突き抜ける案で物議をかもしました。教育情報化は今も改革急先鋒で政府から目をつけられています。

 つまり霞ヶ関からタンコブ扱いされることが多いのですが、至近距離に出かけてわあわあツバ飛ばしてるから、遠くからは御用っぽく見られるのかも。もちろん政府の正しい政策には乗ります。コンテンツ海外展開策の推進や情報公開構想には積極的に協力しています。

 IT業界に近いという批判もあります。学者は研究や教育をしておれと。でも、逆じゃないですか? 日本は産学連携が弱すぎる。特にIT分野はそこが大きな課題です。基礎研究分野ならまだしも、ITのソフトや政策のようなジャンルで、学は産の役に立てずにどうする。

 MITもスタンフォードもハーバードも、大学が揺りかごになって、技術もビジネスモデルも開発しています。GoogleもFacebookも学生が、大学が生んだじゃないですか。日本の大学はこの分野で何か生みましたか?

 日本は産と官が遠いのも問題です。90年代半ばの大蔵省不祥事を受けて導入された公務員倫理法以降、特に官僚と産業界とのパイプが詰まっちゃって、霞ヶ関が情報不足に陥って的確な戦略が打てない。公務員倫理法はアメリカの陰謀ではないか!? そのパイプを開く役割を学が担うこともあっていいでしょう。アメリカの大学も結構そういう役割を果たしているんです。

 慶應義塾大学に顔ぶれが偏っているのがいかんという批判も。IT分野では今のところ政府や産業界と慶應の距離が近いことは事実。だからといって、それを分散させるのは反対! そうではなくて、東大でも京大でも早稲田でも東工大でも関関同立でもいいので、他に高い山ができればいい。山脈になればもっといい。日本の大学は分散を考えてる場合じゃない。国際競争の中で負け組にならないように、筋肉を増強しなきゃいけない。

 現役官僚の間も東京一極集中是正に反対していました。NYロンパリ、北京上海、ソウルにシンガポール。東京を弱めてる場合かよ。ぐずぐずするうち、案の定、日本は沈んでいきました。

 脱官僚だってそうです。官が強すぎるから倫理法なんかで縛って平衡を保つ。違う。違う。国内的に強いセクターを弱めたら国際的に沈むだけ。そうじゃなくて、官僚=行政に比べ弱い立法と司法を強めることです。政治と裁判機能を強化すべきなんです。

 何が強くて何が弱いか。何を伸ばすべきか。見極めが肝心です。


クールジャパンの次にくるもの

■クールジャパンの次にくるもの

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/10/6(土) 8:30ー

 初夏にパリ郊外で開かれる「ジャパンエキスポ」の会場。おっさんどもが「涼宮ハルヒ」の主題歌をバックに踊りまくっています。女の子たちが日本の女子高生の制服をまとっています。日本では絶滅種のガングロもヤマンバもいます。

 12年前に3000人の来場で始まったこの日本文化イベントには、2012年には4日間で20万人が足を運びました。マンガ、アニメ、ゲームの御三家は海外に定着しました。政府もコンテンツ産業に期待を寄せるようになりました。

 ところがコンテンツ産業はあっぷあっぷしています。市場規模は拡大はおろか逆に減少しています。出版も音楽も映画も放送もみな苦しんでいます。広告も縮小傾向。御三家も苦戦。マンガもアニメもテレビゲームも国内市場は減少しています。

 「クールジャパン」という言葉もよく聞くようになりましたよね?しかし海外で御三家が奮闘しているとはいえ、コンテンツ全体の国際競争力は高くありません。収入の海外・国内比は日本は4.3%で、アメリカの17%に遠く及びません。政府はアジア市場の収入を2020年までに1兆円拡大する意向ですが、道筋は見えていません。

 ゲームもビジネスの主戦場はテレビゲームからネットゲームに移行し、日本は完全に出遅れました。GREEやモバゲーが巻き返してくれるでしょうか? 10年前にアジアでJ-POPというジャンルを確立したポップ音楽も、今は韓国のK-POPに地位を奪われています。初音ミクが巻き返してくれるでしょうか?

 ただ、かつて取締りの対象でしかなかったマンガやゲームを政府が今や国の宝として扱っているのは、それが産業に元気を与えてくれるから。外部経済効果ってやつです。産業規模は小さくても、コンテンツがもたらすイメージやブランド力が他の産業を押し上げる効果を持つからです。

 そこで求めたいのが複合クールジャパン策。コンテンツと、他業種との連携です。エンタテイメントに家電、ファッション、食といった日本の強みを組み合わせ、総がかりで海外進出を図ることです。コンテンツという文化力と、ものづくりという技術力をかけ合わせる。いずれも日本の強みです。その両方を国内に持ち合わせている国は多くない。チャンスなのです。コンテンツがらみの多面展開はこれまで、商品ごとや企業ごとの連携はみられたものの、産業を横断する面的な取組は乏しかったんです。

 韓国メーカは政府の後押しもあり、K-POPや韓流ドラマの映像を組み込んで販売することでアジア市場での家電製品のシェアを伸ばしています。韓国旅行を題材にした映画をヒットさせてアジアからの観光客を引き寄せたりもしています。

 「政府?いらんコトするぐらいなら黙っといてくれ。」

 以前はコンテンツ業界はそう言い捨ててたんですが、韓国の官民攻勢を目の当たりにすると、そうも言ってられなくなりました。

 アメリカでは日本のスナック菓子が静かにヒットしているそうです。菓子のおいしさと、かわいいパッケージデザインやキャラクターが受けていて、日本食品店に行かなくてもネットで手に入るようになった。製造力と文化力の融合がデジタル技術で新しい市場を開く可能性が見えます。

 こうしたジャンル融合による輸出戦略がほしい。政府には異業種を連携させるコーディネイト役を期待します。タテ割り省庁の壁を超えて取り組んでください。身の回りに眠る日本の魅力を掘り起こし、ハードとソフトを組み合わせた総合力を発揮できれば、新しい成長エンジンの芽も見えてくるでしょう。


キッズにデジタルの力を

 ■キッズにデジタルの力を

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2012/9/29(土) 12:40ー

 色鮮やかな全く正体不明のキャラクターたちがスクリーンに登場した。「バートールー、ピヨピヨパーンチ!、カミナリおとしー!、ガーッ!、ハッハッハー、ボカーン、ドワー、ドワー、ドワドワドワー!完。」戦って、戦って、怒濤のように、どうにかなって、終わってしまった。

 子どもたちが作ったデジタルアニメです。アニメ作りワークショップの一こま。涙と汗の作品は、いつもこんな感じです。たいていギャグと戦いの応酬となり、しばしばウンコも登場します。そんなコト大学でやってていいのか?ええんちゃいますか、クリエイティブだから。

 ぼくのグループはこういう活動を世界各地で、先進国から途上国まで、実施していますが、キャラクター設定、絵コンテ、ストーリー、構図、セリフ、編集など、日本の子はどれもぴかイチ。ふだん親に叱られながらゲームやアニメに没頭している力が発揮されます。

 10年前、2002年に設立したNPO「CANVAS」は、慶應義塾大学とも連携し、デジタル時代の子どもに創造の場、表現の場を提供し続けています。これまで1750件のワークショップを20万人の子どもたちに与えてきました。

 アニメ作り、映画作り、ゲーム作り。作詞した作品、作曲した楽曲をネット上で共有し、互いにマッチングしたり、その曲を演奏したりするバーチャルなコミュニティも提供。自分たちの住む地域の情報をブログや新聞などのメディアを駆使して発信していく活動もあります。

 吉本興業とも連携し「おもしろかし子大作戦」も展開中です。毎回プロの芸人たちが特別講師として登場します。「お母さんに送るムービー作品をつくろう!」の巻にガレッジセール、ペナルティが講師を務めた際には、ぼくが大好きな「2700」八十島さんも親子連れで参加。レイザーラモン講師「かんじをかんじてつくる」の巻では、「フォー!」と登場したHGに子どもがドン引きで、後部席の親たちが一斉に写メという、なるほど世代は移るのね、などと、NPOと吉本が組む化学反応も感じた次第。慶應の教室に「フォー!」が響くのも、大学当局にバレないかなと少々スリリングでよろしい。

 ワークショップの場を広げたい。東京大学、早稲田大学などでも活動しています。ノウハウや素材をまとめたパッケージも開発中です。小中学校、幼稚園、保育園、学童保育所、アミューズメント施設など、いろんな場で活用できるようになってきています。

 日本のワークショップは国際的にみて高水準です。胸を張ります。この分野の産学連携が充実し、点だった活動が面的に広がってきました。10年間の成果です。でも、10年たって、なお道半ば。欧米には、至るところに体験学習型の子ども博物館があります。これらは小学校との連携が強く、プログラムが小学校のカリキュラムに組み込まれています。

 日本ではこういう取組が学校現場に入れない。距離が遠いんです。だからぼくらは「デジタル教科書」の運動も起こし、デジタルの力を学校にも浸透させようとしています。目標は「全ての子どもがアニメを作れて作曲できるようにすること」。いよいよ民間の自主活動、課外活動から、学校教育に進める場面だと考えています。



菅政権に期待するDX5か条

■菅政権に期待するDX5か条

ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」 2020/9/19(土) 8:30ー


                     (著者作)

明治、大正、昭和、平成。日本近代の起、承、転、結です。

ここで一区切り。

第4次産業革命は近代の内輪の物語だが、Society5.0は太古の狩猟時代からの文明論。

工業・情報の次、すなわち近代の次を指す言葉です。

令和に始まるSociety5.0は、10年単位の切り替えではなく、大きな歴史の分岐点です。

だとして、令和のぼくたちは、平成を総括しておきたい。

平成30年は、デジタル敗戦であった。

新型コロナの貢献は、それを突きつけたことにあります。

先人は、昭和の前半、敗けました。

軍で挑み。

そしてぼくたちは、昭和の後半、勝ちました。

産で挑み。

産業だけではなく、アナログ教育でも、官僚主導の行政でも、世界に冠たるものを築きました。

勝ちすぎたのかな。

それがゆえに平成、負けました。

アナログ昭和を固守して敗けました。

DXに遅れ、競争力は1位から34位に落ちました。

デジタル教育は先進国最下位。

行政はFAX中心で新型コロナに立ち向かえません。

それを見える化した非文明の使者がコロナです。

新内閣の仕事はハッキリしています。DX。これ一本。

DXを妨げてきたのは政治ではない。みんなです。産学官みんな。

それは領域の問題ではなく、世代の問題。

ぼくを含む昭和世代をパージして、令和の体制を求めます。

外交は米欧アが身悶えている中、日本だけが安定・強力政権を続けました。

安倍政権は史上例のないポジションを国際社会に築きました。

外交、通商の面でこれほど楽ちんな環境もありますまい。

新内閣は、内政=DX。これに突進していただきたい。

政策屋という職業柄ぼくは内閣が動くたび、IT政策を提案してきました。

民主党政権では「情報通信八策」を提案し、政策に組み込んでもらいました。

省庁、産業、行政、教育、医療、インフラ、コンテンツ、災害。

「民主党情報通信議員連盟マニフェスト」

http://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/05/blog-post.html

自民党政権に戻り、第2次安倍内閣発足に当たっては、民主党の成果と反省を踏まえて、産業、教育、コンテンツ、政治、行政の「五箇条の御期待」を掲げました。

「新政権に求めるメディア政策」

http://ichiyanakamura.blogspot.com/2012/12/blog-post_9364.html

できたこともある。できなかったこともある。

今回は、ここまでの成果も認めつつ、平成の敗戦、内政DXの必要性を踏まえて、安倍政権に求めた五箇条を継承した要望を提出します。

産業、教育、コンテンツ、地方、行政の五箇条です。

1 産業DX 

  テレワークなどのDXコスト及び投資に対する大幅な減税措置を講ずる。

DXを進めない経営者の退場を促すアナウンスメント政策を導入する。全産業の経営をデジタル・データ利用世代にシフトするよう促し、DX対応で競争力を強化した経営を称揚する。

2 教育DX

  デジタル教科書とPC一人1台配備が10年がかりで実現することを評価しつつ、デジタル教科書無償化、家庭の通信費負担への対策、オンライン授業の規制全廃などデジタル教育1stに向けた次ステップを踏む。行政コスト増加は電波利用料引き上げを原資とする。

  さらにAIやブロックチェーンなど技術の導入により、教科や学校の枠を超える「超教育」を実装し、学校制度の見直しにつなげる。

3 コンテンツDX

  NHK同時配信が実現したことを評価しつつ、通信・放送融合、グローバル中心、データ主導の時代に適合する制度の構築を図る。特に、制定半世紀を迎えた著作権制度の抜本見直し、産業構造の変化に備えた放送制度の見直しを行う。

4 地方DX

  東京の力を移転するのではなく、自らのDXと規制緩和とで地方創生を進めるよう促す。

地域のDXを促進するため、新たな交付金を創設する。

各地のスマートシティを連結してスマート列島を形成することを支援する。

5 行政DX

 「デジタル庁」を実現させる。行政IT化を軸に編成しつつ、教育・医療など各般のDXを進めるエンジンとする。まずは官庁のFaxとハンコを全廃する。

  さらに、軍・産の近代を超える令和以後の国のかたちを示す組織として、知財・文化庁ほかソフト行政を連結した「文化省」を設立することを目指す。


リアリズムの田中角栄

 ■リアリズムの田中角栄 ーYahoo!個人「今日はこのへんにしといたる」2013/9/7(土) 11:30ー  早野透著「田中角栄」を読んで、改めて田中政治って何だったのかなと考えています。  毀誉褒貶のチャンピオン。金権政治、官僚操縦、数々の議員立法を通した政策マン。評価はさ...